前回は、「犬の選び方」についてお話しました。犬種には、長い品種改良の歴史があり、運動量の多い犬種や、服従性の高い犬種、独自の判断で獲物を捕らえるように育てられた犬種、などなど犬種によって育てやすさ・暮らしやすさも異なることなどを説明してきました。
今回は、「犬をどこから手にいれるか」についてお話します。項目番号は、第1回からの通し番号になっており、前回から引きついでいます。
5.どこから犬を迎えるかを決める
犬の入手先には、ブリーダー・ペットショップ・動物保護施設など、いくつかの種類に分かれます。それぞれ性質のちがうものですので、利点も欠点もあります。下記の表は、入手先ごとに利点・欠点をまとめたものです。
入手先 |
利点 |
欠点 |
---|---|---|
ブリーダー |
・両親の性格を確認できる。 |
・目的の犬種のブリーダーを探さなくてはいけない。 |
ペットショップ |
・一度に数十種類の犬を見比べることができる。 |
・社会性が築けていない可能性が高い。 |
動物保護施設 |
・要請すれば一定期間借りることができる。 |
・血統書が付いていない。 |
ブリーダー
ブリーダーは、特定の犬種に特化し専門的に愛情をこめて育てているところもあれば、繁殖工場のごとく大量に繁殖させているところもあります。そのため、慎重な見極めが必要です。
おすすめは特定犬種をじっくりと育ててきた専門的なブリーダーです。犬に対する知識、その犬種に対する知識や愛情をもちあわせており、アドバイスも適切です。「動物の愛護及び管理に関する法律」では、ブリーダーは動物取扱業者の登録を自治体に行うことが義務づけられており、守るべき基準等が定められています。ブリーダーを選ぶ際には、動物取扱業者の登録がなされているかも確認しましょう。 流行犬種だけを繁殖させているところは避けたほうが無難です。
ブリーダーから入手する際の利点としては、両親の性格を確認でき、血統書を安価で入手できること。犬の社会化にまじめに取り組んでいるブリーダーであれば、社会性を築き、周囲への適応能力を備えた上で引き渡してもらうことができます。
欠点としては、目的の犬種のブリーダーを探す必要があり、遠方の場合には引き渡しに手間がかかることや、細かい連絡が必要となることがあげられます。
ペットショップ
ペットショップは、犬との出会いでも最も身近な存在です。しかし、犬の環境はショップによってさまざま。店内で子犬の居場所が清潔であるか、子犬どうしで遊ばせる時間を設けているか。店員が犬についての知識を十分に備えているか、なども確認しましょう。
ペットショップの利点としては、なんといっても一度に何種類もの犬を見比べることができること。購入後に判明した病気や補償を容易してくれている店も多くあります。
欠点としては、犬の社会性が築かれにくいことがあげられます。この点についてまじめに取り組んでいるショップもあります。子犬どうしで遊ばせる時間を設けているショップは、社会化について取り組んでいると考えてよいでしょう。
また、1匹ずつのケージに入っているため、性格を注意深く観察する必要があります。
動物保護施設
飼育放棄や迷子などのさまざまな理由により、飼い主がいなくなってしまった犬がたくさんいます。このような犬たちは、保健所や動物愛護相談センター、一般の動物保護団体などに引き取られ、新しい飼い主を待ち続けています。とくに行政の施設に来た犬たちは、数日のうちに殺処分という悲しい現実と向き合っています。
これから犬を入手しようという方は、このような犬たちの存在を忘れないでください。そして、このような犬を生み出さないことを心がける一方で、ぜひ、犬の入手先の一つとして検討してみてください。一匹の命を救うことができることや、成犬からの引き受けができ、しつけがしやすいことも利点です。もちろん、ワクチン料程度の金額で譲渡されることもあり、金銭面でもメリットがあります。
欠点としては、血統書がないこと、年齢が推定でしかわからないこと、希望に合う犬を探すのに時間がかかること、補償がないこと、などがあります。
また、一般の保護団体から入手する際には、飼い主が犬にとってよい環境を提供できるか、きちんと飼い続けられるかなど、一定の審査があります。意識の高い飼い主が求められています。
気に入った犬がいたら
気に入った犬がいたら、まず声をかけ、触り、抱き、玩具などを使って一緒に遊んでみて下さい。その犬が、あなたがイメージするような反応・行動をすれば、きっと一緒に暮らしてもうまくいくでしょう。
もしもこの時点で、犬があなたに興味が無かったり、唸ったり、必要以上に吠え立てたりして、あなたが楽しくならなければ、いくら容姿が気に入ってもその犬と一緒に楽しく暮らすためには多くの努力が必要になるかもしれません。
専門以外の人が、犬の健康をその場でチェックして良し悪しを決める事は難しいです。その犬の管理をしている人に聞きましょう。
健康に問題は無いか、食欲はあるか。両親の性質が分かる場合には、その情報が、犬の性質を知るための大きな手がかりになります。両親が遺伝性の疾患をもっていないか、両親に強い吠え癖、攻撃性、ひどい臆病など、極端な性質がないかを確認しましょう。できるだけご自身で、犬の両親を見て確認をして下さい。
子犬が、両親の極端な性質を遺伝的に受け継いでいる場合、それを直すには遅くても1年以内にしっかりとトレーニングをする必要があります。(ただし、一年以内にトレーニングを行っても、完全に直すのはむずかしいものもあります。)
ペットショップ、ブリーダーから購入する場合は、保険もしくは補償の有無と内容の確認をしましょう。近年、様々な保険が発売されており、生体を購入後1カ月以内に病院にかかったりした場合、100%補償してもらえるものもあります。
里親になる場合は、数日間預かり家族との相性を確認しましょう。
その間マズル(口元)を軽くつかむ、足の裏を触る、お腹を見せるようにひっくり返す、口を開けさせる、またがる等、遊びながら様々なことをしてみましょう。
以上のことを難なくやらせる犬は、引き取った後、行動に問題が生じる恐れはあまりないといえます。