犬は先生
トレーニングが上手くいかない理由は
愛犬が教えてくれた
愛犬が教えてくれた
桜沢ルミ さん
ドッグトレーニングについてコラムを書いていますが、何を隠そう私自身、トレーニングでは躓いてばかりです。
失敗の連続から気付いたこと、そして愛犬が教えてくれたことを、ここで綴ってみたいと思います。
トレーニングをしていると、愛犬にすんなり伝わる事もあれば、何度やっても上手くいかずにこじれてしまうこともあります。
もちろん、犬も人と同じように、その犬によって得意・不得意があるでしょう。
しかし、そのミスコンタクトを
『トレーニングで上手くいかない部分は、人が犬に解りにくい指示を出していたり、犬のテンションを下げるような行動をしているという、犬からのメッセージ』
そう考えると、実にしっくりするのです。
言葉・キュー(合図)のタイミング・足や肩のちょっとした動き・目の位置、全てが犬にとってのサインになっています。
それだけ犬は人からのサインに集中し、その意図に応えようとしてくれています。
〇私の具体的な失敗例
似たような発音のキュー(合図)「サイドとハイド」や「ダウンとバウ」で犬を混乱させてしまった事があります。
また、これらのキューは、動きも似ていました。
そして、愛犬の理解度をきちんと確認しないままにステップアップさせてしまったことで、愛犬の頭の中は混沌としてしまい、キューがかかると尻尾を下げて考え込んでしまうようになりました。
しかし、発音が全く似ていないキューに変えると、愛犬は別の動きと認識し、きちんと理解できたのです。
上手くいかないところは、どうしても熱心に練習しがちですが、やり方を変えずに練習しても、ヒントを与えず難問を解き続けさせていることと同じ。
何度やっても上手くいかない、そんなときは立ち止まって、上手くいかない理由がどこにあるのかをあらゆる角度から考えてみることが必要だと思います。
また、犬は、人の感情にとても敏感です。
経験を積むほど犬との一体感が増していきますが、犬が人の感情を読み取る力も上がってきます。
言葉そのものよりも、言葉の上にのった人の意図や感情を察知して動くところが大きくなっていることをとても強く感じます。
人の言葉には、「意識する」「意識しない」に関らず、意図と違っていることがあります。
例えば、
『 おりこう~ 』
【心の声】あんまりできてないけど、とりあえずほめておこう
『 ついて 』
【心の声】どうせ集中して歩けないんだろうな
とても不思議なっことですが、この時、犬に伝わるのは、圧倒的に心の声のほうなのです。
とても難しいことですが、犬と何かをする時は、言葉と感情をぴったり一致させて向き合わなくてはいけないのです。
もっと言えば、感情をしっかりと伝えれば、そこに言葉がなくとも、ゆるぎない一体感が生まれてくるものなのです。
それが、犬と何かする上でのスタートであり、また目指すゴールもそこではないでしょうか。
ところがきちんと理解していても、身体的な原因で上手くいかない事もあります。
数年前、我が家の愛犬は、基本のアイコンタクトがおろそかになってきました。
そのため、どこでもアイコンタクトが取れるようにと色々な練習をしたのですが、一向に上手くいきませんでした。
理解もしている、練習も十分している、なのにできない・・・
そんな時、たまたま相談したドッグケアの先生から『こんなに首の筋肉がガチガチにこっていたら、上を向いて歩くのはかなり痛いはずだ』と、考えてもみなかった指摘を受け、頭を殴られたような衝撃を受けました。
その言葉を受けた私は、即座に愛犬に土下座し謝りました。
痛みをこらえてトレーニングに付き合い、何ヶ月も必死で私の要求に応えようとしていたことを思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになったのです。
アイコンタクトができなくなってきたこと、それ自体が身体の不調を知らせる愛犬からのサインだったにも関わらず、それを理解しようとしなかった自分が情けなく、腹が立ちました。
ただただトレーニングの数をこなしただけでは解決しない問題もあることを、いつも頭の片隅においておくことも、トレーニングを長く続けていく上で非常に大切なことだと教えられました。
数々の失敗体験をさせられてきた我が家の愛犬は、シニアになった今もトレーニングの気配を感じると、昼寝から起き出してしっぽを振ってくれます。
そんな愛犬の姿に感謝しつつ、いつか愛犬に成功体験をお返しできるよう、また愛犬から学んでいく毎日です。
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