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ペットの医療・健康 第2回 犬・猫から人にうつる病気-感染症の種類-

 ペットの医療・健康

 第2回「犬・猫から人にうつる病気-感染症の種類-」


 前回は、「犬・猫から人にうつる病気」について、その概要と感染ルートのお話をお伝えしてきました。今回は、感染症の種類や病例について取り上げ、具体的な情報をお送りしていきます。

こんな病例があります-犬から人にうつる感染症-

 犬から人にうつる病気としては、このようなものがあります。

・エキノコックス症
・犬回虫症
・サルモネラ症
・犬ブルセラ症
・皮膚糸状菌症
・狂犬病
・Q熱
・ノミ刺咬症

 まず、経口感染するエキノコックス症ですが、犬のふんに数ミリ程度の寄生虫が宿り、そのふんに汚染された水や食べ物が何らかの方法で人の口に入ることで感染します。犬はお腹にエキノコックスの成虫がいても無症状ですが、人に感染するとエキノコックスが肝臓内に増え、肝不全などで死に至る可能性があります。

 犬回虫症は、成虫が4~18cmの寄生虫です。犬のふん内にいる回虫の卵が人の口などから入ってしまうことで感染します。あるいは、幼虫に感染した家畜の生肉やレバーを食べることで感染する場合もあります。人が感染した場合、幼虫が体内の肝臓や中枢神経、目などを移動して、発熱や視力低下などを引き起こします。

 食中毒で有名なサルモネラ菌が病原体のサルモネラ症を防ぐためには、犬が下痢をしたときなどふんの取り扱いに注意が必要です。人に感染し発症した場合は、発熱や下痢、嘔吐などが続きます。

 犬ブルセラ症は、犬はほとんどの場合無症状ですが、人に感染すると慢性的な発熱、発汗、頭痛などが起こり、まれに脳炎や心内膜炎などを引き起こします。

 次に接触感染の症例では皮膚糸状菌症があります。犬は湿度や気温が上がることで皮膚糸状菌に感染しやすくなり、円形脱毛症やかゆみが出ます。人がこれに感染すると、充血したり炎症による水ぶくれができたりします。

 また、咬傷感染では第1回目にて記述した狂犬病があり、狂犬病にかかった犬に噛まれることで感染します。風邪のような症状が出た後、噛まれた部分が痛み、幻覚が起こります。そして水などを怖がる症状などが出、昏睡状態に陥った後、呼吸が停止します。

 経口感染と空気感染の症例ではQ熱があります。コクシエラ菌に感染した動物により、人と犬ともに感染しますが犬は無症状です。感染した人は発熱や倦怠感があり、慢性化すると心内膜炎などで死ぬ場合もあります。

 昆虫媒介の症例では、ノミ刺咬症があり、犬のノミに刺されて感染します。人に感染すると、激しいかゆみがあり激しいアレルギー反応を起こすこともあります。

こんな病例があります-猫から人にうつる感染症-

 一方、猫から人へうつる症例としては、このようなものがあります。

・回虫症(経口感染)
・パスツレラ症
・猫ひっかき病
・ノミ刺咬症
・ライム病

 回虫症は、回虫の卵が入った猫のふんや、猫の毛に付いている卵が人の口などから体内へ入ることで感染します。あるいは、回虫の卵に汚染されている土壌からも感染します。感染すると内臓、目、皮ふの下、脊髄、脳にまで進入し、臓器幼虫移行症になると重い症状を引き起こす場合があるので注意が必要です。

 また、咬傷感染では猫ひっかき病(バルトネラ菌)がありますが、病原体が猫の体内に入り込んでも猫はほとんどが無症状です。バルトネラ菌に感染した猫に人が引っかかれたり噛まれたりすることで、腫れや水疱、リンパ節の腫れや痛み、発熱などが出ることがありますが、健康な人であればほぼ症状もなく治ります。

 同じく咬傷感染のパスツレラ症も猫は無症状です。しかし人の場合にはズキズキした痛みがあり、腫れ上がることがあります。

 昆虫媒介ではノミ刺咬症があります。人が刺されると、ノミの唾液がアレルゲンとなり刺された箇所が水疱状になって腫れたり熱を持ったりします。

 その他にも、マダニから媒介される細菌で起こるライム病があり、人が感染するとインフルエンザに似た症状の後、皮膚炎や心疾患などを引き起こしたりします。

 猫の寄生虫は数種類あり、それらは猫だけでなく犬や人、さらには他の動物にまで感染します。検便や薬による駆虫は一度行っただけでは完全な効果が得られないため、予防として定期的に駆虫薬を与え続けるのがよいでしょう。

ペットには動物としての健康管理を

 犬や猫などのペットは、今や大切な家族の一員と見なされています。しかし、これら感染症予防の側面からも、大切な家族がまず「人と同じではない動物である」という意識をちゃんと持ち、それに合わせて健康管理に飼い主がしっかり責任をもって扱うことがまず重要なのです。

 では次回は、ペットの健康診断についてお話ししていきたいと思います。

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