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人と動物が共生する社会のために 第5回 動物福祉について学ぼう

人と動物が共生する社会のために

第5回 動物福祉について学ぼう

    


ここ数年、動物愛護に対する人々の意識が高まり社会的に広がっていると感じる一方で、街で短い鎖でつながれっぱなしの犬、炎天下に置かれた犬小屋などを見かける度に、このような飼育状態が虐待であるという認識が薄い日本の現状に「動物福祉」の普及が必要であると感じています。
まずは、一人でも多くの方がこの記事で「動物福祉」に関心をもち、そしてその方の周りの人々が「動物福祉」を知る切欠となることを願っています。

 

動物福祉

「動物福祉」とは?

「動物福祉」とは一言でいえば、「動物が精神的・肉体的に充分健康で、幸福であり、環境とも調和していること」です。
自分の気持ちの思うままに、気の向いたときだけかわいがることは、動物福祉が満たされているとは言えず、「かわいがっている=福祉に配慮している」とは言い切れないのです。

動物も人間も命あるものであり、感覚があります。人間以外の動物の基本的ニーズ(生理的、環境的、行動的、心理的、社会的)は人間と共有しています。飼育下あるいは人間によって制限された環境にいる動物たちは、これらのニーズを自身で充たすことは出来ません。ですから、人間にはそのような動物ができる限り快適に、できる限り苦痛をうけずに生活できるようにする義務と責任があります。

【抜粋】公益社団法人 日本動物福祉協会より
 

5つの自由(解放) ~ 5Freedom ~

「5つの自由(解放)」とは、国際的に認められている動物の福祉基準です。
1960年代の英国で、家畜飼育状況の無残さを記した「Animal Machine」という本が出版されたことをきっかけに(著者Ruth Harrison)、家畜の劣悪な飼育環境の改善や家畜に対する残虐行為などの防止を目的とし、家畜の福祉を確保させるための基本としてこの「5つの自由(解放)」が定められました。
現在では、家畜だけではなく、ペット動物、展示動物(動物園等)、実験動物など、人間の飼育下にある全ての動物に対する福祉の基本として世界中に認められ、EUではこれに基づいた指令も出され、各国の法令に反映されています。
英国では動物福祉法2006の第9条「福祉を保障するための動物の責任者の義務」としてこの「5つの自由」を「動物のニーズ」という形で条文に書 き込まれています。また、世界獣医学協会(WVA)においてもその基本方針の中に謳いこまれています。

 

5つの自由(5フリーダム)福祉の基本

5つの自由

1.飢えと渇きからの自由(解放)
*動物が、きれいな水をいつでも飲めるようになっていますか?
*動物が、健康を維持するために栄養的に充分な食餌を与えられていますか?
 
2.肉体的苦痛と不快からの自由(解放)
*動物は、適切な環境下で飼育されていますか?
*その環境は、常に清潔な状態が維持されていますか?
*その環境には、風雪雨や炎天を避けられる屋根や囲いの場所はありますか?
*その環境に怪我をするような鋭利な突起物や危険物はないですか?
*その動物に休息場所がありますか?
 
3.痛み・外傷・疾病からの自由(解放)
*病気にならないように普段から健康管理・世道をしていますか?
*動物は、痛み、外傷、あるいは疾病の兆候を示していませんか?
 もしそうであれば、その状態が、診療され、適切な治療が行われていますか?
 
4.恐怖や不安・抑圧からの自由(解放)
*動物は恐怖や精神的苦痛(不安)や多大なストレスがかかっている兆候を示していませんか?
 もし、そのような徴候を示しているなら、その原因を確認できますか?
 その徴候をなくすか軽減するために的確な対応がとれますか?
 
5.正常な行動を表現する自由(解放)
*動物は、正常な行動を表現するための充分な空間・適正な環境が与えられていますか?
 作業中や輸送中の場合、動物が危険を避けるための機会や休息が与えられていますか?
*動物は、その習性に応じて、群れあるいは単独で飼育されていますか?
 また、離すことが必要である場合には、そのように飼育されていますか?
 
【参考サイト】
公益社団法人 日本動物福祉協会 http://jaws.or.jp/

 

2015年7月17日掲載

 

 

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 GORON 吉川奈美紀 

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