みなさんはドラマや漫画、もしくは現実で段ボールに入れられ捨てられた犬や猫をみたことはありませんか?心優しい人に拾われ、新しい家族として迎えられればいいのですが、現実はなかなか厳しいものです。新しい飼い主が現れなかったとき、彼らはいったいどうなるのでしょうか。
捨てられて捕獲された犬や猫は保健所などの施設に収容されます。数日間保護されますが、その間にもとの飼い主や新しい飼い主が見つからないと殺処分されてしまうのです。その数はなんと年間約20万頭にものぼります。
どうやったらこの膨大な数を減らしていけるのか…。そのような現状の中、『捨てられる犬猫の命をゼロにする!』をテーマとした、映画界初「ドラマ」&「ドキュメンタリー」の2本立ての映画「ノー・ヴォイス」の上映会が4/20に東京都品川区小山にて開催されました。主催は、ハイサワー(博水社)の田中秀子社長が中心となって活動している、チャリティCDの販売などを通じて犬猫の保護活動を行うボランティア団体「まだ間にあうからプロジェクト」。(映画ノー・ヴォイスのエンディングテーマには同団体の楽曲「まだ間にあうから」が採用されています。)
会場内には写真家、児玉小枝さんが撮りためた、死を待つ保健所の犬猫や里親が見つかった犬猫の写真パネル65枚も展示されました。上映会のあとは、ミニコンサートも実施。参加者一同で「まだ間に合うから」や「ありがとう」などの合唱が行われました。その後、古新舜監督と主催の田中秀子社長、GORONのサイトデザインを手がけた絵本作家の井上奈奈さんから殺処分される犬猫の現状や映画の内容、自身の活動についてお話を伺うことができました。
田中秀子社長のコメント
保健所にもかわいい子はたくさんいる
十数年前に私は保健所で雑種の犬を引き取りました。ペットショップではなくてもこんなにかわいい子がたくさんいるんだってびっくりしました。 飼い主の中には、ペットがいらなくなったら、保健所に持ち込めばどうにかなると思っている方がいます。けれども、全国のボランティアが精一杯頑張って新しい飼い主を探しても、1割も見つかっていないのが現状です。
たくさんの人に歌を歌ってもらいたい。
映画のエンディング曲にもなっている「まだ間に合うから」と「ありがとう」という歌を広めて、たくさんの人に歌っていただきたいと思っています。犬や猫は言葉を話せません。ですが彼らの気持ちや考えていることを、私が代わりに伝えることができたらよいなと思い作詩をしました。そうしたら、たまたまその詩を見つけてくださったプロの作曲家の方が、啓蒙活動に使いなさいと曲をつけてくださいました。最後まで飼えないのだったら、「最初から飼わない」という選択を広めていきたいと思います。
井上奈菜さんのコメント
画家・アーティストである井上奈奈さんは、挿画や映像等様々なジャンルで作品を発表。また動物をテーマにしたワークショップや多様なクリエイターとのコラボレーションを展開されています。今年2014年の1月、さいごのぞうという絵本を出版。絶滅の危機に瀕しているぞうをテーマにした美しく心に染み渡る絵本で話題になり、各地で朗読会が行われたり2014年9月にはFMラジオの中央FMにて絵本『さいごのぞう』が朗読されるなどもありました。 井上さんの愛猫カノンは、保護猫として井上さん宅に迎えられました。井上さんにとって捨てられていく犬・猫のことは身近すぎる問題。田中社長と以前から交流があったこともあり、このイベントに出席していただけました。
猫から私にではなく、私から猫にありがとうという気持ちが芽生えた
今年1月に「さいごのぞう」という絵本を発売しました。犬や猫と同じようにぞうも人間の手によって殺されています。ぞうは今、密猟によって15分に1頭というスピードで減っています。たくさんいるように見えますが、このままでいくと2030年には絶滅するといわれています。私は動物が大好きで、家にも3歳になる保護猫がいます。猫と一緒に暮らしていると、私からその子に対して、ありがとうという気持ちが芽生えるんです。そのような暮らしの中で、動物のために何かできることはないかと思い、この絵本を作りました。みなさんぜひお手に取って見てください。
古新舜監督のメッセージ
私の夢はこの仕事がなくなること
この映画は「動物との共生のあり方を考え、どうしたら殺処分を減らしていけるか」というメッセージを幅広く発信するためにつくりました。この作品は私が千葉のアニマルシェルターに訪問した経験から生まれました。シェルターの職員さんのお話によると、本当にお仕事が大変で、辛いことが8割なのだそうです。体が元気なうちはいいけれど、30、40代になると皆さん辞めてしまいます。その職員さんの「私の夢はこの仕事がなくなることなんです」という言葉が自分の中でずっしりときました。
蛇口を閉めないといけない
アニマルシェルターのような捨てられた動物の引き取り手を探すお仕事は、この現状を発信していかないとなくならないと思いました。受け皿には限界があります。蛇口を閉めないといつまでたっても、持ち込まれた犬猫の新しい飼い主を捜す活動が続いていきます。私は日本の学校の教育になじめず、いじめられていました。いじめられている人ってなかなか自分の意思を声にすることができないんです。動物も意思を言葉にできません。センターに収容された犬や猫は新しい飼い主さんが見つからなければ殺されます。彼らはただ黙って、人間の都合で殺されていくしかありません。
飼わないという選択肢
大事なのは「知る」ということだと思います。子供たちにこの映画を見てもらって、こういうことを勉強したんだよって話し合って、飼わないという選択肢もありなのだと考えられるようになって欲しいです。5年後10年後に、それが当たり前になる世の中になることを信じて、この活動を続けていきたいと思います。
共生の輪を広げたい
映画の予算はミニマムですが、3年間いろいろな取材をして自分の全力をつぎ込みました。大きな宣伝を打つような映画に負けないくらいのものを作ったと思っています。自分の子供のような作品なので、ぜひお子さんや地域の方々に伝えていただきたいです。この映画について語って、その輪が広がっていけば動物と人間が共生する動物愛護の活動にもつながっていくと思います。応援のほど、よろしくお願いいたします。
この映画は動物を幸せにして、動物に幸せにしてもらう、本来あるべき「共生」の姿が描かれています。また、何をやっても駄目な主人公が、動物の命と真剣に向き合い、怒りや悲しみ、喜びを経験し、人として成長していくヒューマンドラマでもあります。生き物の生死に真正面から向き合った、心にささるこの映画。上映後は感動して泣いている方も多くいらっしゃいました。
犬猫の殺処分を一気にゼロにすることはできません。ですが、年々殺処分の件数は減ってきています。それはこの問題が広く社会に伝わって、一人一人の意識が変わってきていることだといえるでしょう。この映画や、演劇など一般の方が観て、広めることのできる作品が増えていっています。ひとりひとりが犬や猫の心の「ヴォイス」に耳を傾けて「動物との共生」について考えていきましょう。
まだ間にあうからプロジェクト:http://www.madamaniaukara.net/index.html
映画ノー・ヴォイス:http://no-voice.com/index2.html
絵本『さいごのぞう』http://www.keystage21.co.jp/saigonozou/
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