環境省が公開した2016年度「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」によると、全国の犬猫殺処分数が前年(2015年度)の8万2902匹から5万5998匹(犬:1万424匹、猫:4万5574匹)に大きく減少し、この背景には「殺処分ゼロ」を目指す保護猫・保護犬活動をしている団体や保護動物の引き取りを希望する人たちの増加が影響しているようです。
保護猫は、
・野良猫
・飼い主の都合により飼育放棄された猫
・廃業ペットショップからの放棄
・飼い主が高齢化や病気や死別による飼育放棄
・ペット飼育不可物件での無断飼育からの飼育放棄
・飼い主の生活環境変化による飼育放棄
など、理由は様々な人間の都合により放棄された猫たちです。
今回お宅を訪問してお話を聞かせてもらった磯野家は、1匹の保護猫を家族にむかえたことをきっかけに、その後、保護団体で里親募集されている猫やご自身で保護した猫たちをむかえ、訪問時7匹の猫たちと暮らしていました。
多頭飼育はやっぱり大変なものなのでしょうか?
保護猫との暮らし、リアルな多頭飼育の現状を聞いてみました。
猫たちの紹介
磯野家に到着して、2歳から10歳まで総勢7匹の猫ちゃんがお出迎え!と思いきや、出てきてくれたのはたったの3匹。
取材中も見慣れない訪問者の様子を警戒している様子の猫たち。
一定の距離をとりながら順番にそーと挨拶にきてくれました。
飼い主さんが黒猫好きということもあり、5匹いる黒猫たちの見わけが難しく何度も「この仔のお名前は?…」と確認してしまうこともありました。
1匹1匹こだわって名前を付けています。
先住猫から、黒耀(10歳)天青(8歳)瑠花(7歳)璃茉(5歳)瑛黄(4歳)紫悠(2歳)玻菜(2歳)
-GORON 半田さん:
保護猫を飼育しようと思ったきっかけはなんですか?
磯野さん:
猫を飼育しようと思った時、日中仕事で留守しがちなことや猫の飼育経験がないため仔猫は難しいと思い、飼育するにはある程度育った成猫がよいのではと考えていました。
そして、猫好きな知人に相談したことで里親募集サイトのことを知り、そこで猫を探すようになりました。
また、調べていくにつれ“成猫は仔猫にくらべ引き取り手が少ない”ということを知り、更に成猫を引き取りたいという思いが強まりました。
-GORON 半田さん:
初めての猫との暮らしはどうでしたか?
磯野さん:
不安を感じつつも東京足立区で活動をしている「竹ノ塚里親の会」で出会った1匹の雄の黒猫(黒耀)を引き取りいよいよ猫との暮らしがはじまりましたが、思っていたよりも早く困ったことがおきてしまいました。
家にきてからの黒耀は、毎日鳴いてばかりで落ち着かず、竹ノ塚里親の会の方にきてもらったり、里親会の方が獣医師に相談して購入してくれた落ち着くといわれるフェロモン製剤を試したりしたのですが、少しも様子が変わらず、「自分が猫飼育の経験がないことで黒耀が安心できる環境を与えられていないのでは?」と悩む日々でした。
そして半年ほど経ったある日、ふと「保護する前は兄弟で暮らしていた」と竹ノ塚里親の会の方が話していたことを思い出し、もしかしたら寂しいのかもしれないと考え、竹ノ塚里親の会の方が見立ててくれた雄の黒猫(天青)を新たに迎い入れることにしました。
そして、黒耀と天青の2匹となったことでこの悩みはあっという間に解決しました。
それからは、すっかり猫の魅力にとりつかれ、親身に相談にのってくれた方が活動している竹ノ塚里親の会の力になりたいという思いもあり、気が付けば家の近所で保護した雄の白黒猫(瑛黄)を含め合計7匹の猫と暮らすことになりました。
猫を飼育前に購入した本とは別に、最近購入して改めて学んだ猫についての教本とDVD。
生体や病気のことなど細かく記載されています。
-GORON 半田さん:
お世話でいちばん大変なことは?多頭飼育のメリットとデメリットを教えてください。
磯野さん:
メリットは、
猫同士で遊んでくれるため、私たちがおもちゃで遊んであげなくても家中を走り回り運動不足の心配が少ないということです。
また、個々の性格の違いや一緒にいる姿、猫同士の掛け合いなどを見られることが楽しく、癒しになっています。
デメリットは、
4匹目の雌の黒猫(璃茉)を引き取ってからしばらくして、3匹目の雌の三毛猫(瑠花)がストレスからトイレ以外でもおしっこをするようになりました。
いちばんの理由は、人の都合で3匹目にストレス要因を作ってしまったということにあります。
それ以来、3匹目のために各部屋にペットシーツを設置しているのですが、ペットシートがめくれていたりすると周りが汚れ場所によっては後始末がとても大変です。
また、何をするにも先住猫を優先するようにしているため、必然的に後からきた猫たちと接する時間が少なくなり、後からきた猫たちの懐き具合や信頼関係が薄くなっていると感じています。
その他には、長期間の旅行に行けない、フードを常時置いているので、日中不在時の個々の食事量の把握が難しく体調管理がしづらくなってしまうということがあります。
シニア期を迎えた7匹の猫たちの介護等を考えると、今後仕事をしながらでは、やはり十分に対応できるか心配ではありますね。
3匹目のために設置した猫用トイレのペットシーツ
-GORON 半田さん:
多頭飼育で猫たちは喧嘩をしませんか?
磯野さん:
竹ノ塚里親の会では、先住猫との相性等をみる為の“お試し期間”を設けた上で譲渡となるので、喧嘩は一度も見たことがありません。
でも、最近になって、先住猫の2匹が最後にきた雄の黒猫(紫悠)を追いかけ、毛の塊が抜けていることがあるので、下の猫の成長と共に「テリトリーを脅かされるのでは」という意識が多かれ少なかれでてきたのかもしれません。
-GORON 半田さん:
多頭飼育で気をつけている事や大切なポイントはありますか?
磯野さん:
それぞれの居場所の確保ができるように、キャットタワー等でくつろげる場所を多く用意し環境を整えてあげること。
また、個々の居場所の確認と体調の変化を見逃さず少しでもおかしいと感じたらすぐに病院に連れて行ってあげられるように気をつけています。
それと当たり前のことですが、自分自身がケガや病気に気をつけ健康を保ち、猫のお世話を十分にしてあげられるようにすることを大切にしています。
後編では、人と猫たちが快適に気持ちよく過ごせる工夫を考えたリフォームと飼育の費用、これから保護猫の里親になる人や多頭飼育をしたいと考えている方へアドバイスやポイントを聞いてみます。