JPM「夢の賃貸住宅」学生コンテスト
私の考える
“ずっと、住み続けたい賃貸住宅”
第2回「一匹の繋ぐ あたらしい世界」
畑島謙成さんインタビュー
畑島謙成さんインタビュー
GORON賞受賞「一匹の繋ぐ あたらしい世界」のプランナー畑島謙成さんに、作品についておうかがいしました。
── GORON:まずは、GORON賞受賞おめでとうございます。そして素敵な作品を有難うございます。
早速ですが、今回のプランにおいて、なぜペット共生を課題に選んだのですか?
畑島さん:ライフスタイルの多様化している現代においては、求められる住宅像が激しく変化しています。そういった需要を建築が追っていても、すぐに新しい需要に取って変わられてしまいます。そこで、物理的な建築物でない”何か”を考えました。
住宅が、将来どのようなライフスタイルにおいても求められるためには、いつの時代も安定して支持されてきた(される)要素が必要になります。
そこで注目したのが、人間は古い時代から動物と共に暮らしてきたという事実です。
現代でいうペットは、いつの時代も安定して支持されてきた重要な要素です。
そこで、ペットを中心に据えた住宅の在り方を模索してみました。
── GORON:ハードではなく、ソフト面で恒常的に支持される「コンパニオンアニマル」が介在した住まいということですね。
では、河内山本団地というロケーションを選んだのには何か理由があったのですか?
畑島さん:3つの理由があります。
まずは、僕の大学から近いからです。設計中、何度も調査に向かいました。
2つ目は、とても古いタイプの公営住宅だからです。
ひとつのシステムを中心に据えた設計を行いましたので、新しいタイプの物件はもとより、古い物件でも成立する必要がありました。
3つ目に、河内山本団地周辺は大変豊かな生活環境が整っています。公園や広い緑地があるだけでなく、団地内を流れる川に沿って美しい並木道が整備されています。ペットと暮らす場所として、とても理想的な環境だと思いました。
── GORON:そのシステムについては、後ほどお伺いするとして、畑島さんご自身は今まで賃貸住宅で暮らしたことはありますか?もしあれば、その時の体験談をお聞かせください。
畑島さん:僕の友人が公営団地に住んでいて、小学校の時は毎日のように遊びに行きました。公営団地は非常に広く、公園や集会所などを併設しています。
公園でもよく遊びましたが、施設と施設の間にある”間”を利用して遊ぶことの方が多かったです。遊ぶために用意されたわけではない場所が遊び場として認識され、公園よりも子供たちに人気だったのは思い返すと驚きです。
このように、使い手が自由に使い方を発見するような”間”は、予め使い方が決められた施設より高い人気を得ることがあるようです。
── GORON:きっとその”間”が今回のプランのポイントですね。
では、プランをする中で1番ポイント(大切に)とした部分はなんでしょうか?
畑島さん:建物のプランは”ずっと住み続けたくなるシステム”の受け皿として捉えました。
そのため、柔軟性の高い抽象的な平面構成を目指しました。
図面を見た瞬間に「自分だったらこういう風に使う」といった生活像が想像できるのではないかと思います。
先ほどの*使い手が自由に使い方を発見するような”間”*の体験にも通じるものがあると思います。
── GORON:暮らす人が自ら発想できる”間”のある賃貸住宅とは!素敵ですね。
では、現状のペットと賃貸住宅について、思うところ・感じる事はありますか?
畑島さん:単にペット飼育可能な物件だと、一軒家の方が向いているということになります。「一軒家に住めないので仕方なく..」という方もいるとは思いますが、そうではない、賃貸住宅でしか成立しないようなペットと賃貸住宅の在り方があると思います。
今回、僕がテーマにした”共有”では、ペットをシェアすることで、
外出がしやすくなる
情報交換ができる
コミュニティを拡げる
などのメリットが生まれます。
このように、賃貸住宅の特徴を捉えたシステムが今後どのように展開していくのか大変興味があります。
── GORON:ペットをシェアすることには、クリアしなくてはならない課題が多くあります。複数世帯が飼育するペットを共有スペースで交流させたり、散歩やお世話を互いに行うなど、実際の運営を考えると様々な可能性と倫理を考える必要があります。
メリットに必ず潜在するデメリット、その相互をケアできるシステムの構築。そして命(生きるものすべて)を大切に想える「心」が、人と人との間にも波及し、新たなコミュニティの形成につながるといいですね。
── GORON:では、最後に受賞した感想をお聞かせください。
畑島さん:今回の”ずっと住み続けたい賃貸住宅”というテーマはとても難しいものです。
ずっと住み続けたくなるための条件は絶えず変化しているため、時間軸を含めた四次元で建築を考える必要がありました。
僕はシステムに重点を置くことで時間軸の問題を解決しました。
このような案は他にないと思っていましたが、他の受賞者の多くがシステムを中心に提案しており、大変驚きました。
“長期優良住宅”、”リノベーション”などの言葉をよく耳にしますが、建築は時間軸を含めた四次元的な豊かさを獲得しようとしています。
このコンテストを通して、建築をシステムとセットで考える必要があると再認識しました。今後、この課題に真摯に取り組んでいきたいと思います。
── GORON:現代の日本は、建築物をはじめモノであるハード面においては成熟しきっていると考えてもよい状況です。それに対し、システムなどのソフト面は、時代や世相・経済状況などにより求められるのもが刻々と変化する流動的な部分と、今回ポイントとした古くから変わらぬ恒常的な部分の2面性があると思います。
新しい発想と弛まぬ追求、そして変わらぬ愛情を持って取り組んでいただけることに期待いたしております。
選考スタッフのコメント
(ペット共生型賃貸管理会社 株式会社アドバンスネット 遠藤さん)
今回のJPM「夢の賃貸住宅」学生コンテストのテーマ「わたしの考える“ずっと、住み続けたい賃貸住宅”」は、流動的で住み替えが当然という賃貸住宅の固定観念に対し、「ずっと住み続ける」という難しいテーマでしたが、ユニークで興味深い作品が沢山集まりました。
その中で、畑島さんの「一匹が繋ぐあたらしい世界」で着目すべき点は、ペットを1世帯ではなく、2世帯と管理者で共有するというアイディアです。
このアイデアにより、家の不在時にはお互いのペットの面倒をみたり、共有の中庭を設け交流を促すなど、よりコミュニティを豊かにするなど、ペットを共有することで発生するメリットが多く提案されていました。
私たち賃貸物件の管理者側の立場からみると、共有ペット飼育の責任について、2世帯の居住者と互いのペットとの相性、また2世帯のペット同士の相性、共用部の管理をどうするかなど、実務的な問題も考えられますが、畑島さんの提案はそれを上回る夢と可能性が感じられ大変魅力的でした。
また、実在する中古の団地のリノベーション計画であり、団地再生という現在の社会的テーマに取り組まれている点も評価しました。
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GORON 吉川奈美紀
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