しつけ・ケア

ポジティブを強化する

乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回は「馬のポジティブ強化トレーニング」についてです。

馬にとっては、未知の刺激は基本的に好きではないものです。
その刺激に対してどう反応するか?「怖がっている」「気にしている」「全く気にしていない」などさまざまな馬がいますね。

気にしない勇敢な馬ならばいいのですが、ほんの少しの変化や刺激に対して大きな反応をする馬もいます。
こうした馬は、いわゆる怖がりの馬です。

馬によってトリガーは異なり、音で反応したり、遠くにある物で反応したり、特定の色で反応したり、地面にある足元にある物で反応する馬もいます。
馬は、新しいものを怖がる傾向があり、新しい光景・音・匂いは恐怖反応の信号となりやすく、通常は逃げようとします。
ですが、馬が悲観的になり、新しいものを全て危険とみなすのは、馬の感情にとってもあまり良いことではないということは人間にとってもそうですよね。

ではどうやって怖がりを克服していくか?

いわゆる馴致(じゅんち)ですが、怖いものに馬をさらして慣れさせようとするのは、NGです。
*馴致(じゅんち)とは:なれさせること・なじませること
人も同じですが、これは馬の感覚を鈍らせ無力になり、逆に怖い物に対しても感受性を増してしまう結果になります。

馴致とは、未知の新しいことは良いことが起こる可能性を秘めていることを馬に教えて、前向きな連想を育んでいくことです。

馬が何か怖がる物、不快感を示す物に対して馬がそこから逃げるモードに入る前に、ギリギリ近づける距離感が大切です。
馬にこのスペースを確保させながら、馬が後退りする前にお気に入りのご褒美(リリース)を与えます。
そのスペースがあることで馬は自己コントロールをし、その経験がポジティブな物である事を認識します。
このタイミングや距離感はすごく大切で、馬が怖がっている物体から離れようとするアクションを起こしてしまってからご褒美をあげてしまうと、逃げる事を学んでしまい逆効果になるので注意が必要です。

これを繰り返していくと、新しい光景・兆候・匂いが良い物だという連想を作り上げることができます。
馬は新しいことを経験する時、自信を持ち脅威を感じなくなります。

ポジティブを強化する、当たり前にやれていそうですが、少しタイミングを誤ると逃げて正解を教えてしまいます。
ついつい逃げ出そうとする馬を宥めたくなってご褒美をあげたくなりますが、ポイントは距離感とタイミングです!
馬も人も一緒にポジティブを強化していけると良いですね!

 

進 由紀

進 由紀

投稿者の記事一覧

(すすむ ゆき)
乗馬インストラクター
全国乗馬倶楽部振興協会認定指導者

2002年より乗馬クラブでインストラクターとして働く

「馬は自分を映す鏡」の様な存在です。
自分の行動に対しての答えを、いつも分かりやすく返してくれます。
だからこそ、いつでも正直に、真剣に、謙虚に、馬と向き合う事が出来ます。
それは時に苦しいけれど、そんな時にもポッと何か閃きをくれたりする。
馬はとても賢くて、優しくて、そしてどんな馬もみな、真面目で頑張り屋です。

出会った馬には、幸せを感じながら人間と仕事をしてもらえるように。
また馬の素晴らしさを一人でも多くの方に知って頂けるように。

馬と共に成長し、人々に貢献する事を目標に、日々奮闘しています。

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