アニマルライツ

イヌに教え、教えられ 第37回 先代犬と比べない。目の前の犬と向き合う

「すももが、ママを怖がって困っている」と聞き、お宅に様子を見に行くことになりました。

保護団体から迎えたミックス犬『すもも』は、シャイで怖がり。
見慣れない人や車を強く怖がり、散歩するだけでも大変です。
その一方、家の中では、すごい勢いで走り回ったり、いたずらやジャレ噛みも多い。
外で自分を出せない分、家の中で活発さを全部出していたようです。

ママを怖がる・・・どういうことだろう?

まずは、ママから話を聞きました。
家の中では、やんちゃなすももだから叱ることも多くなっていたようです。
次第に、そんなママを怖がるようになり、ママが電話で話す声には吠え出し、家事で部屋を忙しく行き来するだけで震え緊張するようになっていました。

ご家族が一緒に暮らしていた先代犬、柴とシェーパードMIXの耳丸は、家族にフレンドリーで、聞き分けがいい子だったのに・・・
ダメな時は、叱れば止めてくれたし、怖がることもなかった。
同じようにしても、すももはうまくいかないと話す。

先代犬が扱いやすい子だった場合、次に迎えた子とのギャップに悩み、比べてしまうことがあります。
その気持ちは、とてもよくわかります。
でも、耳丸は耳丸、すももはすももです。

先代犬と新しく迎えた犬を比べていては、うまくいかない。
そこに問題がある。
私は、そのことをママに伝えました。

ママは、ショックだったかもしれません。
声が詰まり、目が少し赤くなっているように見えました。
でも、ママはすぐに行動に移しました。

レッスンでは、
・触れ合い方
・困った行動の止め方
・怖がっている時の関わり方
・楽しませ方
を一つづつレクチャーし、なぜすももにはそのやり方が必要なのかを説明します。

レッスンを数回続けたとき、ママが報告をしてくれました。

「今までは、決めた時間までに家事を終わらせることが
自分のスタイルだったけれど、少し時間に余裕やゆとりを
持って行動するようになりました。」と。

その様子から、すももを知ろう、向いている接し方や関わりを自ら考えようとするママの変化を感じました。

そうした頃、少しづつ、すももにも変化が表れてきました。
ママが触ろうとすると逃げていたすももが、自分から甘えるようになってきたのです。
そして、すももの顔から硬さがなくなっていくのと、ママが楽しそうに嬉しそうにすもものことを話しくれてくれることが、増えていきました。

もう大丈夫。
ママの笑顔とすももの様子を見て、確信しました。

卒業が決まったレッスン最後の日、嬉しい報告が。
ママの所に来て、前脚でちょんちょん掻いてくるすもも。
「なあに?」とママが立ち上がると、すももがスーッと自分のゲージの方に離れていく・・・
ママが動かずにいると、また戻って来て前脚ちょんちょん。
でも、ママが動くとまたスーッと離れていく・・・
「なんだろう?何か言いたいのかしら?」
もしからしたら・・・ママはすももが離れて行った先にあるソファに近づき、ゆっくりと腰掛けました。
ソファーでリラックスしていると、すももは自分から近づいてソファーに登り、ママの横にぴったりとくっついて離れない。
いつの間にか、その場でウトウト寝はじめるすもも。

ママへの安心や信頼を感じているからこその行動です。
今では、ママとすもものソファーお昼寝タイムが、日課になりました。

イヌに教え、教えられ 第36回
トレーニング意識を持ち続ける

イヌに教え、教えられ 第38回
先輩から教わり、後輩に繋げる

里見 潤

里見 潤

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(さとみ じゅん)

ドッグコーチ

1975年、横浜市生まれ。2004年、警察犬訓練校に入学、出張トレーニング会社を経て、保護活動団体「Dog shelter」の専属スタッフとして、保護犬のトレーニング、一時預かり家庭と里親家庭の間に入り、アフターフォローを担当する。
2012年7月より独立。出張、及び預託トレーニングを柱に活動する傍ら、保護犬の一時預かりを継続中。
 
日本警察犬協会公認訓練士
ジャパンケネルクラブ公認訓練士
東京都動物愛護推進員

 保護犬預かりを主に、トレーニングのことを書いている里見潤さんのブログ
 「イヌと歩けば。」http://setahachidog.blog.fc2.com

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