みんなの夢、猫の未来
第5回 「命の大切さを伝えたい」
竹ノ塚里親の会
前回までに日本の猫たちをめぐる状況と、猫たちの保護を行う里親の会の取り組みについてお話をうかがってきました。
今回は本連載のしめくくりとして、お二人に社会がペットの問題に対して取り組むべき課題と、今後のご活動についてお話しいただきます。
人間の都合が優先されている |
動物愛護法改正に向けて霞が関では、話し合いがなされています。もっと具体的に改正されることが重要です。マルコ・ブルーノさんの指摘(第3回)の通り、人間に都合のよい内容になっています。規制があっても「やむを得ない場合以外はみだりに傷つけてはならない」という但し書きで逃れることができてしまう。(どうしても飼えなくなったら処分できるなど)この点を変えていくことが必要です。
動物虐待に対する処罰も日本では甘く、懲役1年以内、罰金100万円以下程度にとどまっています。現行犯で、刑罰も軽い。懲役後も、すぐに戻って来て犯行を繰り返すことが多い。ネットやYoutubeで殺害の様子を公開したりする映像も多く、猫を捨てること、虐待することが犯罪だという認識が希薄です。こういうことをもっと社会に啓発していきたい。
米国にはアニマルポリスがいて取り締まりも厳しいですが、日本はまだそうした状況になっていないのです。人間の都合が優先されてしまっています。証拠があることや現行犯であることが必要になっています。
もっと刑を重くしてほしい。猫を捨てることが犯罪であることを知ってほしい。
虐待に関しては、口のきけない動物の命を軽視している人たちが行っていることだと思うのです。殺人・児童虐待などをしている人の90%近くが、過去にも犬や猫を殺しているという外国のデータもあるくらいです。
解決にむけて |
生体を扱うペットショップがなくならないと、やはり飼育放棄や殺処分の問題はなくならないのではないか。そう二人は語ります。
本当は、高齢の方が飼い主になるのも、好ましくないことです。猫は20年以上生きるのですから、自分の寿命も考えながら、飼い始めて欲しいものです。なかには「友達がいっぱいいるから、私がいなくなっても平気よ」なんていうご老人もいて、里親審査で滞っているうちに、「もうペットショップで買っちゃったわよ」なんて言われてしまうことも…。
その猫の今後を考えると、かわいそうに思えてきます。
「お買い求め○日以内にペットが死んでしまった場合には、同等のものとお取替えいたします」なんて命に保証までつけてしまう。たった一つの命なのに、商品と同じように扱われてしまっています。
ペットショップで働いていた方が、内部告発した事例を耳にしたことがあります。箱詰めしてペットを売るショップに勤めていたが、いやになって辞めたとのこと。それを買う若い子たちは、何もわかっていない。「かわいい、かわいい」と喜んでしまうのです。ほんとうに動物好きな人であれば、働き続けることはできないでしょう…。
ショップもブリーダーも、規制をかけるべきです。このままでは、いたずらにペットの頭数が増えていき、いらなければ棄てる、殺す・・・ということに結びついていきます。ますます事態はひどくなっていきます。
最近話題になったペット税は、「ペットを殺すための税」といわれています。ペットの登録料は、単に殺処分の費用になるにすぎません。このようなお金の使われ方は、多くの方に知られていません。ペットの収容が現存施設ではまかないきれないので、たった15分の流れ作業の殺処分によって安易な解決がなされているのです。
-安楽死?-
ドリームボックスという走りながら犬猫を回収するトラックがあります。このトラックのコンテナは、へこみでボロボロです。苦しくて中で犬が暴れているのです。安楽死なんて言葉はふさわしくない・・・。
やはり、マイクロチップ制の導入が必要です。そうすれば、誰が飼育放棄したのかすぐにわかります。そのための税金なら納得がいきます。
また、放棄するぐらいなら、せめて飼い主が自分でお金を払って、自分のペットを安楽死させるべきです。他人の税金のお世話になって、自分のペットの保護をさせたり、殺処分させたり、というのは無責任極まりない。最後まで、きちんと面倒をみて欲しいものです。
命の大切さを伝えたい |
「夢は、飼い主のいない猫をなくすこと」神戸代表はそう語ります。寒い冬は、猫たちはどこですごしているのかわかりません。事故にあったり、飢えや寒さで死んでしまう子たちもいます。これは、私だけの夢ではなく、「みんなの夢、メンバーの夢」そのための活動なのですから。不幸な犬や猫が減り、飼育放棄がなくなることを望んでいます。
衣装ケースにガムテープでふたを閉じて捨てられていた出産中の親子の猫がいました。出産前に衣装ケースに入れられ、出産中に棄てられたものです。寒いときに棄てられれば、親子みんなが死んでしまいます。発見されるかどうかは、すべて運次第。
現在は、現場で保護した猫はメンバーの各家庭で世話をしています。シェルターなどの施設があって猫を保護できればいいなとは思いますが、資金的にも管理的にも厳しい。募金で運営することは到底できません。仮に施設をよくしていっても、もとを断たない限り棄てる人は減らないでしょう。
-「命を助けるための税金」を-
ドイツを筆頭とするヨーロッパではペットの殺処分がないと聞いています。しかも生体の販売が禁じられています。ペットの入手先は、ブリーダーか保護施設です。
飼いきれなくなったペットは、シェルターで余生をすごします。動物税はシェルターの維持運営に使われているのです。これは、「命を助けるための税金」です。日本のペット税のあり方とはちがいます。
熊本県が、殺処分ゼロを目指して活動していますが、日本全体でもそのように取り組まなければいけないと思います。
東京では、動物の収容は1週間までです。1週間で、殺処分になります。窒息死させるのではなく、せめて安楽死をさせてやってほしい。苦しまないで死なせてあげたい。窒息死は、狭い部屋に動物を押し込んで、スイッチひとつで二酸化炭素を注入し、呼吸をできなくして死に追いやるものです。殺処分ゼロはヨーロッパでもできることなのですから、我が国だってできないことはないはずです。
今の人間たちの動物への接し方は、人間に対しても似たところがあります。ゲームでリセットボタンを押すように、命を、ストーリーを終わらせてしまうのですから。
わが国のペットや動物をめぐる殺処分や飼育放棄の問題を、国外の方に話すと、「日本はそんなにひどいところなのですか」とびっくりされます。日本国民は、このことをもっと恥ずかしく思うべきです。
教育でも、小さいころから命とふれあう機会を設けるべきです。私たちもできれば、学校で命の大切さを伝えるような活動も行ってみたいと考えています。
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