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イヌに教え、教えられ 第31回 犬(動物)目線からの譲渡

イヌに教え、教えられ

第31回 犬(動物)目線からの譲渡


自宅で保護しているミックス犬の「しらす」
しらすは、穏やかで活発な犬ですが、慣れない人や人混みが苦手で端っこで震えてしまいます。
譲渡会のように見知らぬ人が多くいる中では、怖がりな犬にしか見えません。

ある日、そんなしらすを見て、里親希望してくれたご家族がいました。
亡くなった先代犬もしらすと同じような性格の仔だったそうです。
 
お見合い(*1)を里親希望いただいたご家族の自宅でおこなうことになりました。
慣れない環境の中、しらすは壁際で震えて見てるだけ・・・
 
ご家族から生活の様子や環境、仕事、しらすとどう暮らしたいのかを聞き、双方の相性を考えます。
ご主人は、いつも先代犬を仕事先のスタジオ現場に連れて行き、先住犬は、スタジオ隅に置いてあるベッドでご主人の仕事が終わるのを待つ。そして、仕事の途中に散歩やトイレに連れて行ってゆく。
こうした犬との生活スタイルを、しらすともしていきたいと希望していました。
 
しらすは、怖がりだけど3~4回会っているうちに、慣れた人には自分から挨拶したがるのが特徴です。
しかし、そうなるまで(慣れるまで)の気持ちのギャップが大きい。
慣れた人に見せる愛嬌と、慣れない人への逃げ腰さ。
 
「ゆっくり慣れていってくれればいいよ、しーちゃん」という、ご家族の目は優しく、急いていません。
 
毎回初めて会う人がいる環境で待つことは、しらすとってとてもハードルが高く感じる。でも、ご主人との信頼関係ができれば、それを軸に慣れていける。
「なんとかなるんじゃないか」私はそう考えました。
 
まずは、しらすがご家族に慣れること。
そこで、しらすと暮らし始める前に、できる限り触れ合ってもらうため、散歩をしてもらうことにしました。
 
しらすとご家族のふれあい時間をつくりながら、譲渡へ向けた話をすすめていきました。
その一方、私は「しらすにとって本当にいいことなのか?いい環境なのか?」を考え続けていました。
 
誰と暮らすのか、しらすは自分で選べません。
その選択は、保護している私に責任があります。
 
厳しい飼育条件をつけることが、いいわけでなく、
どんな飼育環境でも受け入れることが、いいわけでもない。
しらすの目線、しらすの立場で考えているか?
 
私は、里親希望家族ともう一度話し合わないといけないと考えました。
 
2回目の散歩体験。
しらすに、少しづつ慣れて来た様子が見れる。
途中、公園のベンチでお互いの考えをもう一度すり合わせながら話しました。
話してみると、ご家族も全く同じ気持ちで、同じ意見だった。
仕事場に連れて行くことに慣れていくことはできても、その過程のストレスがしらすには強すぎるのではないか?
時間が掛かってもいいと思っていたが、それは自分たちの都合であって、しらすに本当にいいことなのか?
ご家族は、ずっと考えてくれていました。
 
飼いたい気持ちでしらすに無理を強いれば、それを見るご家族と私も苦しい。
・・話し合っているうちに自ずと、私たちは同じ気持ちになり、今回の話は無くなりました。
 
どんな犬も環境が変われば、多かれ少なかれストレスがかかります。
適度なストレスは問題ではないと、私は考えています。
 
私が、里親希望をされたご家族の飼育経験やしらすへの接し方、人柄などから、いつの間にか自分目線で進めていたのかもしれない・・
多くの保護犬に関わってきたと思っていても、やっぱり毎回悩み、いろいろなことに気付かされます。
 
ご家族は、自分達の生活に合いやすい保護犬を急がず探したいと言ってくれました。
きっと、しらすにも別の赤い糸が繋がっているはず。

 
*1 お見合いとは
http://goron.co/archives/2892
犬を迎えるとき大切なこと
~マッチング(お見合い)で共に幸せを~

 

2017年3月24日掲載

 

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しつけは、家族みんなで

里見 潤

里見 潤

投稿者の記事一覧

(さとみ じゅん)

ドッグコーチ

1975年、横浜市生まれ。2004年、警察犬訓練校に入学、出張トレーニング会社を経て、保護活動団体「Dog shelter」の専属スタッフとして、保護犬のトレーニング、一時預かり家庭と里親家庭の間に入り、アフターフォローを担当する。
2012年7月より独立。出張、及び預託トレーニングを柱に活動する傍ら、保護犬の一時預かりを継続中。
 
日本警察犬協会公認訓練士
ジャパンケネルクラブ公認訓練士
東京都動物愛護推進員

 保護犬預かりを主に、トレーニングのことを書いている里見潤さんのブログ
 「イヌと歩けば。」http://setahachidog.blog.fc2.com

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