呼ばれたら飼い主の元に戻って来る「呼び戻し」は「マテ」と並び、服従訓練というだけでなく、いざという時には愛犬の命を守ることもできる大事なトレーニングです。またドッグランで飼い主が帰ろうと思い、呼んでも戻ってこないので犬を捕まえようとする、追いかける、捕まらないになってしまっている飼い主も見かけます。「呼び戻し」はドッグランを楽しむ前にこそ必要なトレーニングでもあります。
まずは家の中で基礎を教えたら外へ。他犬、猫、匂い嗅ぎ、鳩など誘惑が多くなる散歩中や公園、ドッグラン、河川敷などでどんどん練習していき、いつ、どこでも呼び戻せるように練習していきましょう。
- 飼い主の側まで来ると「いいこと」があると教える
愛犬が好きなオヤツを用意します。1回にあげるオヤツが大きいと小型犬などはすぐにお腹がいっぱいになり、オヤツを使ったトレーニングへの意欲が下がってしまいます。オヤツは小さいサイズに切って使うようにしましょう。
愛犬をリードの範囲内で自由にさせます。愛犬が飼い主を見ていてもいなくてもどちらでも構いません。オヤツを握っている手を愛犬の鼻先に持っていき、匂いを嗅がせて手の中に好きなオヤツがあることを分からせます。
- 飼い主の側まで来るよう後ろに下がりながら誘導する
愛犬が手に握っているオヤツに気がついたら、飼い主は手を引きながら後ろに下がっていき、オヤツを持っている手を愛犬が追うように誘導しましょう。
ポイントは2つ
① 誘導している間、愛犬の鼻がオヤツを握っている手に磁石でぴったりとくっついているかのようにゆっくりと手を動かすこと。
② 手の動きと一緒に飼い主も愛犬を呼び寄せるように一緒に後ろに下がりながらやること。
- 自分の懐まで呼び込み首輪を掴む
後ろに下がりながらしゃがんで愛犬を自分の懐まで呼び込みましょう。反対側の手を伸ばさなくても簡単に愛犬の首輪に手を入れられるまで懐に呼び入れたら、首輪に手を入れて掴む。そこまでできたら初めて握っているオヤツをご褒美としてあげてください。
呼び戻しは犬を自分の元に呼び戻して首を掴んで愛犬を一度捕まえるまでが目的です。外でリードが外れてしまった場合、安全確保のためには確実に呼び込み、愛犬を捕まえることが必要です。手前まで呼び戻せても首輪を掴もうとしたらまた逃げてしまう・・・これではドッグランから帰る時はもちろん、いざというときに愛犬の安全は守ることができません。
オヤツを握った手を手前に押し出したままでは愛犬は飼い主さんから1歩分離れたまま。首輪を掴もうとすれば愛犬はパッと後ろに下がりまた逃げてしまう可能性があるので間違いです。必ず懐まで呼び込むようにしましょう。 - 「名前」を呼ぶと「オイデ」のコマンドを入れていく
1〜3までの練習が安定したら次は、飼い主さんのことを見ていないときに名前を呼びましょう。愛犬がこちらに振り返ってからオヤツを握った手を口元に差し出し2〜3を続けてやります。先に名前で振り向かせ、そこから「呼び戻し」です。
名前を呼んで確実に振り返るようになったら次は、声の指示(コマンド)も入れるようにしましょう。
「名前を呼ぶ」→「オイデ」→「呼び戻し」→ 褒める
褒め方については2時間目「マテ」の項目、「褒め上手が教え上手」を参考にしてください。 - 誘惑の多い外で練習していこう
室内でできるようになったら、次は外で練習をしていきます。室内より広い場所での練習が可能なので、ロングリードを使うと練習しやすいでしょう。
まずは室内練習1〜4を復習も兼ねてやりましょう。スムーズに出来るようになったら誘惑に興味が引かれている時に呼び戻す練習をしていきます。
(ここでは草の匂いを嗅いでいる時を練習)
草の匂いを嗅いでいる時に、「名前」を呼びます。愛犬が振り向いたら「おいで」の指示を言いながら、後ろに下がってしゃがみながら自分の懐まで呼び込みましょう。首輪をしっかりと掴んだら褒めてご褒美をあげて下さい。
繰り返し練習する中で80%の確率で成功するようになったら1レベル上の誘惑を対象として練習していき、誘惑や環境が変わっても成功出来るように練習していくといいでしょう。
WAN!ポイント
- 呼び戻したあとに愛犬にとって嫌なことはしない
- 呼ばれて戻ってきたのにその後怒られたり、嫌なことを言われたりすれば人は誰でも嬉しいものではありません。犬も同じです。「呼び戻し」の指示で飼い主の元に戻ったら怒られる、嫌なことをされる・・そこまではないかもしれませんが、よくやりがちなのがドッグランで飼い主の都合で帰る時に「呼び戻し」、犬が戻ってきたらリードを付けてドッグランから出て、帰る。ドッグランが好きな犬、楽しい犬の場合、飼い主の元に戻ったら好きなドッグランから連れ出された、楽しい時間が終わった・・・それは犬にとって「嫌なこと」そう考えても無理ありません。
続けていれば、呼ばれても戻るのを止めようと考え出すようになり、「呼び戻し」の指示に躊躇するようになってきます。帰るときだけ「呼び戻し」ではなく、ランにいる間の途中途中で呼んではリードを付け、褒めてからオヤツをあげ、リードを外してもう一度離し、自由にしてあげることをやっておきましょう。愛犬の呼び戻しへの意識をより、ポジティブなものにする努力を怠ってはいけません。 - 誘惑や環境のレベルは1段づつ優しいレベルから練習しよう
- 誘惑の少ない室内から、誘惑の多い外で練習をしていくようになると「呼び戻し」の難しさはグンと上がります。誘惑の中で練習していくポイントは誘惑のランク付けをして、優しい誘惑から「呼び戻し」を練習していきましょう。猫、匂い嗅ぎ、他犬、他人、落ちている食べ物など誘惑の対象はいろいろあります。犬によって強く興味を引かれる誘惑はレベルが高く、呼び戻しは難しくなります。まずは、愛犬にとって何が誘惑が高く、低いのかを観察し、低いレベルの誘惑状況から練習していきましょう。