犬や猫、馬やねずみ、そして人間。
すべての動物それぞれに寿命があり、その長さは異なっています。
そして私たちは、少しでも長くできたらずっと一緒にいたいと思う愛犬や愛猫たちが、自分たちよりずっと早く死をむかえることを頭の片隅におきながら、暮らしています。
そんな大切な家族である動物たちと共に過ごす時間をより満たされたものにするために、役立つかもしれないお話しです。
小さい動物ほど心臓は速く鼓動する
私たち「人間」の心臓は、1分間に60~70回のペースで規則的に打っています。
心臓が1回ドキンと打つ時間を心周期とよび、人間はおよそ1秒です。
小さい動物の心臓は、人間よりずっと速く鼓動します。
たとえば、ハツカネズミは、1分間に600~700回。心周期は0.1秒にもなりません。
動物ごとのおよその心周期は、
* ネズミ:0.1秒
* 猫 :0.3秒
* 人間 :1秒
* 馬 :2秒
* ゾウ :3秒
このように、からだが大きいほど時間が長くなります。
心臓の時間(心周期)は、体重の1/4乗に比例するといわれています。
心臓だけではない、全身の機能(生理的現象)や一生にも関係する時間
からだの大きさと時間の違いは、心臓に限ったことではありません。
肺・腸・筋肉などの時間(動き)も多少のばらつきはありますが、心臓と同じくほぼ体重の1/4乗に比例することがわっかているそうです。
そして、この原理は
* 成獣のサイズに達する時間
* 性的に成熟するまでの時間
* 懐胎期間
など、一生に関わる時間にもあてはまります。
人間の場合、十月十日(とつきとうか)の懐胎期間が、ネズミはおよそ3週間、ゾウは600日(2年ちかく)。
やはり、からだの大きい動物ほど長くなっています。
からだの構成要素の寿命
動物個体の寿命とおなじく、個体を構成する要素にも寿命があります。
たとえば、
生体を構成しているタンパク質は、体内で新陳代謝をしており、たえずつくられては壊されを繰り返しています。
脳の神経細胞や心臓の筋肉のように、個体とほぼ同じ長さの寿命をもつ細胞もありますが、血液や皮膚・腸の上皮細胞など常に作り替えられる細胞もあります。
これらからだの構成要素の寿命も、からだの大きい動物ほど長くなります。
ゾウの時間とネズミの時間を比べると、見えてくること
「体重300gのハツカネズミ」と体重差10000倍ある「体重3tのゾウ」。
時間の速さは、体重の1/4乗に比例する計算式にあてはめると、ハツカネズミの時間はゾウの数十倍の速さで流れていることになります。
テレビの映像を数十倍速くして観たり、スローモーションで再生した画像を想像してみてください。
その違いをイメージできたならば、同じ場所で生き、そこに万物共通の時間が流れていたとしても、その時間が持つ意味やその時間の使い方が、動物ごとに違いがあるかもしれないと納得できるのではないでしょうか。
【参考書籍】
本川達雄(東京工業大学名誉教授 動物生物学専攻 生物学者)著
「長生き」が地球を滅ぼす