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猫が犬の数を上回りつつあるペット事情 後編 – 犬猫の飼育費用から考える

猫が犬の数を上回りつつあるペット事情

後編

    犬猫の飼育費用から考える


 国内の全ペット飼育数でトップを独走してきた犬が、間もなく猫に追い抜かれてしまいそうな状況となっています。前編では、その背景について飼育面を中心に探りましたが、後編では猫が追い上げてきた原因を、飼育費用という経済的な側面から考えてみたいと思います。

犬と猫の飼育頭数がさらに僅差に

 前編記事のあとで、一般社団法人ペットフード協会による2015年10月現在の最新の統計が発表されました。それによると、前編(2014年10月時の統計)で述べた犬猫の飼育頭数にまた若干の動きが見られました。犬は9,917,000頭、猫は9,874,000頭と推計されており、犬はこの1年で429,000頭減少、猫は85,000頭の減少となりました。

 犬猫共に減少していますが、犬のほうが減っているため、犬と猫との飼育頭数の差は1年前よりもさらに縮まり、前回(2014年10月)の387,000頭から、今回(2015年10月) 43,000頭と僅差となってきました。犬の頭数はこの5年間でも少しずつ減少しており、最新の統計では1千万頭を切りました。猫はほぼ横ばいです。今回は犬が首位をキープしたものの、次回は猫が逆転するかもしれません。

初期費用の違い

 東京都国分寺市にあるオリーブ動物病院の有薗浩見院長は、まずペットを入手する時点から犬と猫とでは費用的に違いがあると言います。「現在では昔と違って犬は純血種をペットショップなりブリーダーさんなりから買ってくる場合がほとんどです。昔は雑種犬も多く、よそから貰った犬を飼い始めることが多かったですが、今は雑種を貰ったり拾ってきたりする環境自体があまりありません。それに対して猫は、現在でもまだ、日本猫の雑種を人から貰ったり拾ったりして飼っていることが多いですね。」

 つまり、犬を飼うに当たってはほとんどの場合、高い料金を払って買ってくることになりますが、猫は買わずに飼い始めている人が多いということです。実際に、犬の飼育頭数は減っているものの、純血種の割合は増えています。犬の純血種が現在全体の83.7%なのに対し、猫は15.2%で、純血種と雑種との比率が犬とほぼ逆です。オリーブ動物病院でも、来院する猫の半数以上は日本猫の雑種で、純血種の来院は猫全体の2割程度だそうです。

ワクチン代など医療費が犬より低い

 猫のほうが犬よりも、ワクチンやフィラリアなど予防関係にかかる医療費が少なくすむ利点があります。猫は混合ワクチンを含めすべて任意の接種となっており、法律で義務付けられているものはありません。一方の犬は、法令で毎年接種が義務付けられている狂犬病ワクチンのほか、法律上の義務ではありませんが必須となっている各種混合ワクチンやフィラリア予防薬などがあり、予防医療費が高くなります。

 前述のとおり、ペットの猫の約85%は日本猫の雑種です。貰ったり拾って来たりした猫に、すぐワクチンをうちに動物病院を訪れる人はそれほど多くないようです。有薗先生も、「猫は全般にワクチン接種率が低く、予防医療で来院することが少ないです。病気になった時しか来ないことが多いです。」と語っています。しかし、「猫は犬より食べ物のバリエーションが少ないので、食事からの病気を防ぎやすい面があります。食事に気を付けていれば、滅多にお腹も壊しませんし、日常的には病気が少なくすみます。」とも言っています。

 ペットの医療費は大きな病気にかかってしまうと、時に人間以上に高額になります。ワクチンなど予防医療の費用も決して安くはありません。猫の場合はその点で犬より安くすみそうです。

飼育費用の負担での差

 日常的な費用ではないですが、ペットを預ける場合も犬よりは猫のほうが安くすみます。オリーブ動物病院では猫が2500円、犬は3000円からとなっており、中型、大型になるほど上がります。トリミングも、猫の場合は大半が雑種なのでやらないことが多いでしょう。

 日常的なことでは、猫は真夏の暑さに犬ほど弱くないため、エアコン代が抑えられます。「猫は寒さが苦手でクーラーが嫌いですから、クーラーの効いた部屋から逃げるくらいです。留守番時にクーラーを入れっぱなしにしなくても大丈夫です。ただし、室温が30度以上になるような場合は高めの温度設定で入れておくのがよいでしょう。」と有薗先生はアドバイスしています。犬の場合、夏場は留守中もクーラーを入れっぱなしにしなければいけないこともあり、電気代がばかになりません。

 以上、一例ではありましたが、こういった費用的な違いも犬と猫とでは出てきます。しかしだからと言って、このまま猫のペット頭数が犬よりもぐんぐん増加していくとも考えにくいのではないかと思われます。ペットを選ぶ際に費用を最優先にして判断するわけではないですし、ペットを飼うことが経済的に困難だという人が増えれば、犬猫含めペットの頭数そのものが下がっていくことでしょう。有薗先生も、「犬を好きな人はやはり犬を飼いたいものです。犬猫の比率がこれまでは6:4のところ、5:5から4:6くらいまでに変化する可能性はあるでしょうが、7割以上が猫になるというほどの大逆転は起こらないのではないかと思います」と予測しています。

取材協力:オリーブ動物病院(東京都国分寺市)http://www.olive-ah.com/index.htm


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