乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。馬とファッションの第3弾です。
19世紀まで女性の横乗りの為の乗馬服は、それまで脚が十分に隠れる程の長い丈のスカートでした。
20世紀に入ると、乗馬用パンツ(キュロットと呼ばれる)の上に、膝下程度の長さの巻きスカートを着用する形の乗馬服が登場しました。
上着も、コルセットでくびれを象徴して女性のラインを強調する様なものではなく、シンプルなテイラーメードで男性と同型のものとなりました。
〈引用〉THE ART OF SIDE-SADDLE 116ページ
これは女性にとって乗馬が、単なる社交の目的などではなくなり、スポーツとして確立したことで、女性の乗馬服にも機能的であることが求められた結果だと言えます。
また、19世紀までは、脚が少しでも見えることは女性にとってははしたないとされていた事を考えると、ブーツをあらわにして馬に乗れる様になったことは、とても大きな進歩だと言うことができます。女性が活動する事が社会で認められ、またそれが“新しい女性のシンボル“として受け止められ始めたのではないでしょうか。
20世紀半ばを過ぎると、女性の横乗り乗馬は徐々に衰退していきました。
現在ではごく一部の愛好家が優雅でエレガントな乗馬スタイルを求めて横乗りを楽しむ程度となりました。
こちらは、現在の横乗り乗馬服です。
〈引用〉THE SIDE SADDLE ASSOCIATION 21ページ
これはシンプルでオーソドックスなスタイルですが、より懐古的なドレススタイルの乗馬服もあります。
サイドサドル(横鞍)について
馬の上に横座りするって、スカートで脚は見えないしどうなっているの?と思いますよね。
こちらの画像は、現在使用されているサイドサドルです。
〈引用〉THE ART OF SIDE-SADDLE 20ページ
右脚を上の突起(鞍頭)にかけて、左脚は鎧という部分に足を乗せて膝が90度位になるように膝を上を突起に沿わせています。
RIDING SADDLE OF COMMONWEALTH ARMIES 163ページ
サイドサドルの脚を安定させる為のこの突起(鞍頭)を考案したのはフランスで最も有名なアマゾン(横乗り乗馬をする女性の事を指す)と言われているカトリーヌ・メディシスという人物でした。
カトリーヌはイタリアの名家メディチ家の子女でフランスのアンリ2世の元に嫁ぎました。
浮気性のアンリ2世の関心を寄せようとして足のラインがシャープに美しく見えるように鞍頭のある鞍を考案したと言われています。
次回はいよいよ!女性にとって乗馬、乗馬服、ファッションの大転換があった時代のお話です!