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ペットが感じるストレス 後編 – 犬猫のストレスが起こりやすい状況

ペットが感じるストレス

後編

    犬猫のストレスが起こりやすい状況


 ペットの犬猫たちのストレスには個体差も大きく影響し、決して一括りにはできませんが、犬猫両者の性質を捉えつつ、人とのコミュニケーションまたは飼育環境とその変化から来るストレスの原因を挙げてみたいと思います。

触られるなどコミュニケーションでのストレス

 一般的に、飼い主さんとのコミュニケーション度は、猫よりも犬のほうが高いでしょう。よく言われる犬の性質としては、「人との距離が近い、飼い主さんとの絆が強い、喜怒哀楽が激しい」などがあります。一方の猫は、「気まま、気まぐれ、あまり構われたり触られたくない、人と距離を置いている」ということです。

 こうした違いはありますが、どちらも触る人や触り方、タイミング、触る場所によって、喜ぶ場合と嫌がる場合があります。いくら犬が人との距離感が近いと言っても、突然知らない人や加減を知らない子どもなどが触ってきたらやはり怖いと感じてしまいます。

 オリーブ動物病院(東京都国分寺市)の有薗浩見院長はこう語っています。
「大抵の場合、犬は触られるとうれしがることのほうが多いので、通常はそれほどのストレスにはなりません。犬種による性格の違いや、触られると気持ちが良い部分の違いなどはありますが、猫ほどには人に触られることへの警戒心やストレスはありません。猫は元々神経質な性質で、知らない人には体を触らせないことが多く、また触られること自体が嫌いな子もいます。ただし、性格や年齢による個体差もあります。子猫の時代はスキンシップが好きだったりして一概には言えない面があります。」

 頭をなでられるのが好きな子と嫌いな子が犬猫共にいるように、飼っているペットについて、その子の体の中で触ると嫌がるところ喜ぶところをよく把握して、嫌がることをせずに接してあげることが大切です。

お留守番などで起こる心因性のストレス

 現在、日本の世帯人数で一番多いのが1人世帯、次に2人世帯、全世帯の平均人数が2.3人(2015年度 国勢調査)という時代ですので、誰か1人は家に居てペットを見ていてくれるという状況はもはやなくなりつつあるのではないでしょうか。つまり、ほとんどの飼い主さんが日常的に、ペットに留守番をさせざるを得なくなっているということです。ペットの犬猫たちは人間社会の動きに応じた影響を受け、ストレス源もそれに応じて変化していきます。

 お留守番に関わる犬のストレス、そこからさらに「分離不安症候群」と言われる、飼い主と離れることに強い不安を感じて体調不良を起こしたり、問題行動をする子も増えつつあるようです。

 「ほとんどの場合、分離不安は犬に起こりやすいため、動物病院には犬対象の薬があります。人間の精神安定剤とほぼ同じ性質のものなのですが、動物用に臨床試験がなされたものです。」(有薗先生)
 必ずしも薬で根治できるとは限らないようですが、投薬治療を行ったほうがよいのかどうか動物病院で状況を説明して、まず相談してみるのがよいでしょう。吠えたり、下痢や嘔吐等の体調不良、家の中での破壊行動など、軽度から重度までさまざまな症状が出ます。ですから犬の飼い主さんは、楽しく留守番をさせる工夫や単独で過ごさせるためのトレーニングを、場合によっては行っていかなければいけません。
 また、心因性ストレスと紛らわしい行動もあります。「ずっと吠えていても、病気やケガで体調不調を訴えて吠えていることがあり、心因性のストレス症状のように見えて、そうではないこともありますのでよく観察してください。」(有薗先生)

引越し、室内環境変化のストレス

 猫の場合は性質上、分離不安にはなりにくいようです。ただ、猫は心因性ストレスによって、体毛を異常になめ続けて毛が抜けてしまう「心因性脱毛症」を起こすことがあります。猫はストレス発散のために毛づくろいをしますが、長くストレスに晒されるとより過剰になってきて、脱毛部分から皮膚炎を起こし病院での治療が必要となってきます。猫のストレスのきっかけは、引越しや環境の変化、ペットホテルなど家以外での宿泊などが挙げられます。

 「引越しや部屋のリフォーム、模様替えなどに関しては犬より猫のほうが弱いので、引越し先でも配置を変えない部分を作ってあげたり、元々使っていた物、自分のにおいがついている物を置いてあげるなどして、猫が安心できる環境作りを工夫してみてください。特に食事中は無防備な状態になるので、猫にとっては重要な場所。よく環境配慮をしてあげてください。」(有薗先生)

 今はまだ数は多くないものの、ペットの犬猫のストレスや心の病気を扱うことができる病院もでき、獣医師や訓練士の方々など専門家もおられます。手に負えなくなる前に相談を受けるなどして、飼い主さん自身のストレスを軽減させる必要もあります。それはまた、ペットにとっても大事なことです。

取材協力:オリーブ動物病院(東京都国分寺市)http://www.olive-ah.com/index.htm


 

ペットが感じるストレス 前編
犬猫の性質からわかること

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