飼い方

ペットの肥満、原因と対策 後編 – ダイエットで体重を落として健康維持を

ペットの肥満、原因と対策

後編

ダイエットで体重を落として健康維持を


 近年ますます肥満傾向にあるペットたち。国内外でペットの肥満率は上がっています。標準体重を超えて太ってしまうと、さまざまな健康トラブルや病気のリスクも上がり、要注意です。今回は、肥満が引き起こす病気と、肥満にならないための対策について考えてみます。

肥満がもたらす病気

 ペットの体を触ってみて、肋骨がよく確認できなかったり腰のくびれがなくなっていれば、体重超過のサインと見てよいでしょう。さらに、ペットの肋骨に全く触れることができず、上から見た体型がまるで樽(たる)のように丸くなっているなら、適切なダイエットを行って、標準体重まで戻さなければなりません。人間も同じですが、太り過ぎはさまざまな病気を引き起こすからです。

 「太るとまず足腰に負担がかかります。特に後ろ足と背中部分のダメージが大きいです。それにより、骨や関節の病気が起こりやすくなります」と、オリーブ動物病院(東京都国分寺市)の有薗浩見院長は注意を促しています。「体重増加によって、骨や関節の負担がかかると、骨関節炎、膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)、スポーツ選手などにも多い前十字靱帯断裂(ぜんじゅうじじんたいだんれつ)、ミニチュアダックスによく見られる椎間板ヘルニアなどの病気が引き起こされます。」

 また、肥満のペットは心臓や肝臓の負担が増え、機能が低下するうえ、心臓や肝臓周辺に脂肪がついて危険です。血液中のコレステロールも多くなり、免疫力も低下します。太ると呼吸回数も多くなり、呼吸器系統にも負担がかかります。その他、糖尿病にもかかりやすくなり、脂肪が厚くなることで熱中症にもなりやすく、皮膚病も増えるようです。まさに、全身に健康リスクを抱え込むことになってしまいます。

ペットの減量はダイエットに限る

 さまざまな病気を起こす前に、ペットのためにできることは減量しかありません。そして、減量方法について有薗先生は、「ペットの減量は基本的にはダイエット、つまりカロリー制限をして体重を落としていくしかありません」と語っています。犬猫のダイエットは、ダイエットフードや低カロリーフードを利用することが鍵のようです。この10年位で需要も増加傾向にあるとのこと。ダイエットフードはカロリーを抑えつつも繊維質でかさを増やし、満腹感は得られるように工夫されています。

 オリーブ動物病院に来院したオスのビーグル犬のダイエット成功例を挙げてみます。その子は、体重14キロの1歳の時に去勢し、2年後には20キロに増加。去勢後5年ほどで23キロに増えてしまいました。遅まきながらその時点からダイエットフードによる減量を開始。1年半ほどで8キロ痩せて15キロ台になり、去勢時とほぼ同じ体重にまで戻すことができました。以降は、低カロリーフードに切り替えて体重を維持し続け、16歳まで生きました。

 このように、目標体重にまで戻れば、ダイエットフードから低カロリーフードに切り替えます。体重を落とすためのダイエットフードをその後も長期間継続することは望ましくないため、低カロリー食、すなわち体重維持のためのフードに切り替える必要があります。

効果的なダイエットフードは?

 ダイエットフード選びについて、有薗先生はこのように助言しています。「スーパーやペットショップの市販のフードより、動物病院で販売しているフードのほうがいわゆる低カロリーの病院食としての機能、効果は優れています。病院で販売しているフードは、獣医が診察して医療行為を行ってから販売できる、動物病院でしか取り扱えないフードなのです。市販のものは通常のフードよりやや低カロリーというレベルなので減量としての効き目は弱いです。」

 動物病院のフードは、通常フードと比較すると1.5倍くらい高いようですが、味や食べやすさの工夫がされ、何より減量効果が高く、獣医師の指導を得られる点でより安全なダイエットが行えそうです。通販で買える動物病院のフードもあります。

運動のさせすぎは危険

 普段から、ペットに適切な運動をさせることは大事なことです。適度なカロリー量の食事と日常の運動によって標準体重を維持することは可能ですし、それが最も理想的な健康管理と言えるでしょう。一方で、ペットが肥満になってから、過度な運動で痩せさせることは危険です。「リハビリでプールに入れて運動させることなどはありますが、痩せさせるための運動はお勧めしません。太りすぎの子が無理しすぎると膝や心臓に負担がかかり、やはり病気のリスクとなります。急に無理な運動をさせるのではなく、ダイエットで体重を元に戻してから、毎日適度な運動をさせて体重維持を心掛けるほうがいいですよ」と有薗先生。

 体重維持のための知識を得る方法としては、動物病院に置いてある手引きや、ペットフードメーカーによるペットの食事のガイドなど、身近に手に入ります。コロコロ太ったペットはかわいいものですが、健康を害してはペットがかわいそう。家族として長く健康に暮らせるように、飼い主さんによる体重管理はとても重要です。

取材協力:オリーブ動物病院(東京都国分寺市)http://www.olive-ah.com/index.htm


[goron_pagenavi]
[Addlink_Matome twitter_text=”「ペットの肥満、原因と対策 後編 – ダイエットで体重を落として健康維持を」”]
[Addlink_Pagetop]


 
アバター

goron

投稿者の記事一覧

GORON スタッフ

関連記事

  1. ペットのフード選び 第1回.ライフステージとフードの種類
  2. ペットを葬るために
  3. 何もしていないときにほめる ~家や散歩での、飛びつきや引張りの失…
  4. ペットのフード選び 第4回.トッピングのすすめ
  5. 仔犬の学び力は、乾いたスポンジ
  6. 犬のボディケア 第2回 スキンシップを兼ねた シャンプー
  7. 子犬を飼い始めてからの日常《 part 1 》
  8. 大変な犬ほど楽しい ~ビーグル2頭のいたずらや散歩の引っ張り、生…

今月の人気ランキング

PAGE TOP