猫が犬の数を上回りつつあるペット事情
前編
犬猫の世話の面から考える
これまでの長い間、ペット飼育数のトップを守ってきたのは犬でした。ところがここに来て、間もなく猫が犬の飼育数を追い抜きそうな勢いになってきています。1994年よりペット飼育数の統計調査を行っている一般社団法人ペットフード協会の2014年10月時点の統計結果では、2012年頃から犬の飼育数は約13%減、一方の猫が約4%増となっています。どのような背景で、犬猫のペット数が逆転寸前になってきているのでしょうか。
この数年間で猫の飼育数が大幅に増えたというよりは、犬の飼育数の減少幅がこれまでより大きくなり、両者の数が段々近付いてきたというかたちのようです。2014年10月時点の統計(ペットフード協会)によると、犬のペット飼育頭数は約10,346,000頭、猫は約9,959,000頭とされています。
東京都国分寺市にあるオリーブ動物病院の有薗浩見院長曰く、「獣医師になって30年以上になりますが、飼育数も来院数も現在まで犬のほうが常に多く、うちの病院でも、おおよそ犬6割、猫4割くらいの比率でずっと変化がありませんでした」とのこと。「猫の飼育数が犬に迫ってきたというのは、これまでになかったことでしたので、ちょっと驚きました」とも。
実際の来院数としては、やはりワクチン接種を行う機会が多い犬が最も多く、犬が減ったり猫が増えているというほどの変化は感じられず、犬猫以外のエキゾチックアニマルが常に来院数全体の1割ほどを占めているという点も以前より変わらないようです。
「犬のペット頭数が減っているということで考えられるのは、犬はやはり猫よりも世話やしつけなどの手間がかかることですね。中でも、手間がかかる一番の要因は散歩でしょう。特に働く社会人の方にとっては、毎日同じ時間に散歩させるのは大変なことです。また、散歩は天候にも左右されますから楽ではありません」と、ペットの世話という面で最も犬猫の差が出るのは散歩だと有薗先生は指摘しています。
「ですから、多忙な社会人、あるいは高齢で体力的に毎日散歩をさせるのが厳しい方にとっては、犬を飼うのはハードルが高く、散歩要らずの猫を選ばれる人が増えてきたということもよく理解できます。」
散歩の次に挙げられた、猫のほうが世話が楽な点は、トイレのしつけです。「犬の場合は、まずトイレのしつけが必要です。繰り返し教え込まないといけないので、日中ずっと留守の飼い主さんだとなかなかしつけをする時間が取れず、難しいでしょう。一方、猫の場合でしたら、大抵は猫の習性で自分でトイレの場所へ行ってすることができますから、しつけとしてはさほど苦労しません。犬の場合は飼い主さんがきちんとトイレのしつけをしておかないと、猫のような習性がありませんから、どこででもうんち、おしっこをするようになって困りますので必須事項です」と強調しています。
世話の面ともつながっていますが、飼い主さんと犬猫たちとのコミュニケーション面における違いも大きいようです。「猫のほうが飼いやすい理由のもう一つの側面としては、人間への依存度が犬よりも少ないことです。猫がかまわれたい時だけかまってあげて、あとは放っておいてもいいので、手がかからず忙しい人には助かります。犬は飼い主への依存度が高いので、しつけも含め、飼い主さんがかまってあげないといけない場面が何かと多くなります。」と有薗先生。
もちろん猫も遊んであげる必要はありますが、猫自体の性質が気ままでマイペース、1匹でいる時間も必要ということで、犬ほどには細かく気に掛けなくても大丈夫でしょう。多忙な飼い主さんにとっては大きな利点です。
猫はまた、複数飼いをする際にも犬よりは楽なようです。実際に、一世帯当たりの飼育数では、犬が1.25匹なのに対し、猫は1.79匹で猫のほうが多くなっています。猫の複数飼いは増えており、犬のほうは減っている傾向にもあり、そういったことも猫の飼育数が徐々に犬に近づいてきている理由の一つになっていると思われます。
また、通常の場合、猫の鳴き声は犬ほどうるさくないため、複数飼いする場合や、飼い主さんが日中不在の場合でもご近所迷惑となるリスクがより低くなる利点もあります。
犬でも猫でも手がかかる子とかからない子がおり、一概に犬猫とひとくくりにはできませんが、全体的な性質として世話という面ではこれらの違いが見られます。次回は、飼育にかかるさまざまな費用という面から、犬よりも猫が飼いやすい点について考えてみたいと思います。
取材協力:オリーブ動物病院(東京都国分寺市)http://www.olive-ah.com/index.htm
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