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イヌに教え、教えられ 第3回 生きるために、必要な物は多くない。

イヌに教え、教えられ

第3回 生きるために、必要な物は多くない。

    


犬が尻尾を振って身体を擦り寄せてくる姿を見ると可愛いと思うし、犬が犬らしく走り翔けているのを見ると笑みが出る。部屋で気を抜いてゴロンとお腹を出して寝ている姿に癒される。犬のことで家族の話題が増えたりする・・犬を飼うと素敵なことが沢山あると思う。
 
けれども、大変なこともある。
中でも私が一番大変だと思うのは、犬を飼うと自分の時間が減る。
散歩は毎日しなければならず、長時間の外出や旅行も簡単には行けなくなる。家族が体調を崩した日でも犬に散歩や運動は必要であり、同じ室内で飼う動物として猫と比べて、飼い主がかける手間と体力は大きく違う。
 
当たり前だが可愛いだけで動物は飼えない。
実家で犬を飼っているときは気付かなかったが、自分が責任を持つ立場で生き物を飼い始めて、犬を飼うことは大変だと気が付いた。
仕事や学校、子育て、家事にプライベート・・・家族にはそれぞれやらなければいけないこと、やりたいことがある。主に世話をする家族は自分の時間の何かを犬の世話に充てることになる。1日が26時間に増えるわけではないので、
寝る時間を削ってみたり、遊びに行くのを控えたり。犬のための時間を作ること・世話が毎日あるということが辛い・・自分だけが我慢しているのでは・・そう感じてしまう時もある。
 
だが、犬を見ていると1日にやっていることは多くはない。
散歩・運動・排泄・食事・噛みたい欲求・犬同士でコミュニケーション・寝る、そして家族からの愛情。個体差はあるが、多くの犬が必要としているのは、このくらいであり、それが毎日続く。
 

 
愛犬の柴犬は、食べること、ボール投げ遊び、散歩を楽しみにしている。いつもと変わらないボール遊びと散歩をし、同じドッグフードを食べる。
同じことが繰り返すだけなのに、リードを見せれば毎回尻尾を振って散歩に行けることを喜び、公園に着いてボールを出せば、目がキラキラと光り、今にも飛び出さんばかりと投げられたボールを一直線に追いかけて食らいつく。
「ごはん、ごはん!」と声を掛けると食事台まで飛んできて、いつもと同じドッグフードを勢い良く黙々と食べる。日常は同じことの繰り返し。
だけれども、犬は喜んで楽しそうにいつもの生活をおくり、気持ち良さそうに寝る。
それだけで満足、他に何か欲しいと思っているようにも見えない。必要な物は要求するが、必要以上の物は要求もしない。
犬の生活は、自然体でシンプル、そしてそれを楽しんでいる。

 
犬を飼うようになってから、自分の生活習慣が変わっていった。
犬の時間を取るためにテレビゲームをやらなくなり、インターネットをやる時間を限るようになった。時折食べたくなることもあるが、ハンバーガーやカップラーメンなどのジャンクフードを食べることも減った。
最初は必要に迫られてということもあったが、慣れてしまえばそれがなくても生活に不満が溜まることはなく、むしろ気が楽。断捨離ではないが、今必要で無い物は捨てて持たないようにし、本当に必要でない物以外は買わなくなっていった。

シンプルな生活も結構気持ちがいいと、犬が教えてくれた。

留守番から帰宅すると毎回尻尾を振って喜び、出迎えてくれる犬を見ると、彼らに生きて行くのに必要な物はそれほど多くはないのかもしれない、そう思える。知り合いからは質素過ぎて、生活感も無いとからかわれるけれど。

イヌに教え、教えられ
第2回 伝えるために気持ちを出す

イヌに教え、教えられ
第4回 「叱る」ことが必要であり、「叱る」には愛情が必要である。

里見 潤

里見 潤

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(さとみ じゅん)

ドッグコーチ

1975年、横浜市生まれ。2004年、警察犬訓練校に入学、出張トレーニング会社を経て、保護活動団体「Dog shelter」の専属スタッフとして、保護犬のトレーニング、一時預かり家庭と里親家庭の間に入り、アフターフォローを担当する。
2012年7月より独立。出張、及び預託トレーニングを柱に活動する傍ら、保護犬の一時預かりを継続中。
 
日本警察犬協会公認訓練士
ジャパンケネルクラブ公認訓練士
東京都動物愛護推進員

 保護犬預かりを主に、トレーニングのことを書いている里見潤さんのブログ
 「イヌと歩けば。」http://setahachidog.blog.fc2.com

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