乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話、「馬とファッション」シリーズ。
今回は、女性にとっての乗馬の歴史とそのファッションについてです。
ファッションの都、フランスのお話です。
今日では誰もが気軽にチャレンジし、楽しめるようになった乗馬ですが、かつてはどうだったのでしょうか?
元来、スポーツは戦争のない時期の戦闘の訓練として行われてきました。
そのため、スポーツいうのは競馬や、乗馬、狩猟くらいでした。
そういったスポーツは騎士や貴族、上流階級の特権であり、四六時中労働に追われている庶民には無縁のものでした。
上流階級であっても本来戦闘に参加することのない女性にとって、スポーツは無縁だったが、乗り物として実用的な役割を持った乗馬は狩りのお供などの目的で行われていました。
やがて社交を目的として女性が乗馬などのスポーツをするようになり、その環境にふさわしいスポーツ服が登場しました。
ヨーロッパ諸国の王族や貴族の女性達が乗馬をスポーツとして行われる様になったのは14世紀頃と言われています。
その頃の女性達は、今のように馬に跨るのではなく、サイドサドル(横鞍)を用いて、馬の背に横座りで騎乗していました。
その際に着用していたのが横乗り婦人乗馬服です。
男性の嗜みであるスポーツだった乗馬の服装は、男性乗馬服や男性日常服の流行に追随しながら変遷していきました。
上半身は男性の衣服と同一の形態のものを着用し、下半身はスカートで、スカートが揺れたり動いたりしても脚が見えない程の長さでした。
こちらの写真(画像1)は、17世紀の婦人乗馬服です。
この当時、貴族の生活においては、羽根、リボン、レースは男女を等しく飾りました。
乗馬時に限って、男性が着るような上着と帽子を着用し、巻毛のかつらをかぶり、首元をクラバットというネッククロスで覆い、軽い剣も下げていました。
対してこちらの写真(画像2)は、当時の日常服です。
違いを見ると、女性が馬に乗ることが特別視され、あえて男性的な印象を与えるように考えられていたことがわかると思います。
乗馬服において、男性的スタイルを模倣する傾向は19世紀まで続きましたが、18世紀末頃になると、男性衣服の影響は色濃く残りながらも、日常服のドレスの流行を用いた乗馬服が登場したり、乗馬服風のドレス(ローブアマゾネス)が登場しました。
男性服の仕立て技法を取り入れたテイラーメードが登場したのもこの頃で、スポーツの流行に伴って乗馬をはじめ多くのスポーツ服に取り入れられるようになりました。
20世紀以降、テイラーメードはファッションとして広く流行していきました。
同じ頃、サイクリングなど新しいスポーツでは、すでにパンツスタイルが導入されていました。
それにも関わらず、乗馬においては横乗りとロングスカートでの騎乗が根強く残ったのは、古くからの文化である乗馬の慣わしが重んじられていたこと、乗馬が社交目的で行われていて、乗馬服が女性の美的表現の一手段と考えられていたことなどが考えられます。
ロングスカートにウエストにはコルセット、そして横乗り。
根性と技術が求められますね。。。
次回はいよいよ20世紀。
女性が馬に跨り始める頃のお話をしたいと思います。
お楽しみに。
※画像1「性とスーツ」 ※画像2「ファッションの意味を読む」より