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ようこそ猫カフェへ里親募集型猫カフェ「Hakobuneco」の取り組み 第4回.猫カフェスタッフになりたい

ようこそ猫カフェへ
里親募集型猫カフェ「Hakobuneco」の

取り組み
 第4回 猫カフェスタッフになりたい

    


猫カフェで働くには?

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 これまでに「里親型猫カフェ」について様々な紹介をしてきたが、今回は「スタッフ」に焦点を当ててみよう。

 「実は、2号店をオープンするにあたってスタッフを募集したところ、倍率がなんと10倍だったんです! 私も驚きました」
と水野さん。動物とふれあえる仕事の中でも、猫カフェスタッフは人気上昇中の職業でもある。まずは、現在自宅でも5匹の猫を飼っている水野さんご自身が、このお仕事に就くきっかけを伺った。

 「子どもの頃から動物に囲まれて暮らしていました。前職は洋菓子販売店で店長をやっていて、その頃は猫と暮らすことができませんでした。けれども、ずっと猫と一緒に暮らしたいと思っていましたね。引っ越しなどを経て、再び猫と暮らせるようになりました。ちょうどその頃、動物病院の看護師になりたくて求人募集を探していたんです。ノア動物病院の求人があったので、さっそく応募したら面接でいきなり、『今度猫カフェをオープンするから、オープニングスタッフとして働いてほしい』と言われてビックリしました。けれども、これはチャンスと思って、猫カフェのスタッフになったというわけです」

image 少し専門的な話になるが、動物看護師とは、動物病院で働く獣医療補助者のこと。犬や猫などの小動物と「家族の一員」として一緒に暮らす傾向が高まるにつれ、動物の医療も人間さながらに進歩し、高度化している。動物病院で働く看護師の仕事も様々だ。受付などをはじめ、獣医師の指示のもとに手術の準備、入院している動物の世話や健康管理など、とても重要な仕事を任されることもある。
 ところが、資格という面では人間の医療の看護師とは違って、国家資格や公的資格はなく、複数の団体がそれぞれ独自の基準で認定した資格が存在する、というのが現状だ。関連資格としてはほかにも、愛玩動物飼養管理士などもあるが、こちらも任意の団体による資格である。

image 「私も特に資格などは持っていませんでした。この店は動物病院や動物愛護団体との連携で成り立っていますが、猫カフェの形態は様々です。他の店はまた違う事情もおありでしょう。だから、私の立場からは一概に『資格があった方が就職に有利』とは申し上げられません。就職に有利だからと考えるよりも、まずは動物のことをよりよく知るために知識を深める、という考えで取り組まれることは有意義なのではないかと思います」

「猫が好き」は基本条件。猫カフェスタッフの心得とは

 そんな水野さんが考える、理想の猫カフェスタッフとはどんな人だろう。現在でも、Hakobuneco昭和店には「猫カフェで働きたいけれども、募集はありますか」という問い合わせもあるとか。

 「厳しいかもしれないけれども、猫が好きっていうだけではダメですよね」
 昭和店のオープニングから任されて、さまざまな経験を重ねたからこそ、実感のこもった言葉だ。つまり「猫が好き」というのは基本条件であって、決して「かわいい」「癒される」だけでは済まされない「命を預かる」という覚悟もいる。スタッフは動物を相手に日々起こる様々な出来事にすぐに対応していかなければならないのだ。

 そこで、2号店を出すときに動物病院の院長先生が水野さんに尋ねたという「猫カフェに必要な項目」を挙げていただいた。


image1.とにかく猫の体調管理をこまめにすること。
2.コミュニケーションは、お客様も、スタッフも。
3.動物がいるからこそ、クリーンネス。
4.お金を預かるレジの管理がしっかりできること。

の4つだそう。最初の猫の体調管理については、

 「この猫たちは、閉店後もここで過ごします。彼らにとって我が家なんです。だから、猫に気を配るのは当然。『え?そこまで?』というような細かい部分も見逃せません。例えば、ちょっと足を滑らせて猫が落ちちゃった場合もすぐにチェック。足を引きずってないか、腫れてこないかとか。食欲のチェックも毎回必ず全員見ること。一匹でもくしゃみをしたらすぐに病院に連れて行って即検査。一匹が感染症にかかると、あっという間に広まってしまいます。病院との連携はとても大切なんです」

 だからといって、スタッフが年中ピリピリしていたのでは、猫も人もくつろげない。適度な距離を保ちつつ、見るべきポイントは外さない、という姿勢が必要なのかもしれない。

 続くコミュニケーション力とは、主にお客様に対してと、スタッフ同士との両方が求められるという。

 「お客様に対しては、単なる接客だけでなく、猫の性格などを伝えることも必要です。例えば、噛む癖のある猫とかは、あらかじめ『この子は、ちょっと噛む癖があるので』と告げておくことで事故を防ぎます。猫と里親さん候補との仲介役としては、お客様が興味を持った猫のことをお伝えするのも大切な役割です。

image また、お客様の対応とはちょっと違いますが、『猫を拾ったので引き取ってもらえませんか』というお問い合わせをいただくこともあります。里親型を、動物を引き取ってくれる場所と勘違いされている方も、残念ながらまだいらっしゃいます。そういう場合にも、冷静に説明して、相手の方に納得していただかなくてはなりません。

 スタッフ同士のコミュニケーションでは、猫の体調などの申し送りはもちろん、例えば東日本大震災の時のように、大きい地震が来たら猫たちをどうやって守るかなど、事前に話し合って決めておくこともたくさんあります。

 条件の3番目、クリーンネスは私が面接していただいたときに強く思っていて、今でも思っていること。喫茶店ですから飲み物もお出しします。動物と一緒だからこそ、店内は常に清潔を保つことが必要ですね。4番目のレジ管理も、お金まわりのことですから、とても重要です」

 
というように、猫たちをきちんと管理しつつ、お店を切り盛りする能力が求められる。見た目ではわからないハードな部分もあるということを心得ておきたい。

image 最後に、水野さんにとって猫カフェで働くことのやりがいとは何か、お聞かせいただいた。
 「やりがいは、やっぱり、猫たちの新しい家を見つけてあげること。それがうちのコンセプトでありゴールです。猫たちが新しい家で幸せに暮らす様子を、お客様が嬉しそうに話してくださると『ああ、よかった』と心からほっとします。
 ここにいる猫たちは、何とか殺処分を免がれた、ほんのわずかな数に過ぎません。殺処分という重たい問題に関しては、とっても悲しいことですが、実際にはすぐにゼロにはできる数字ではありません。でも、あきらめるのではなく、少しでも多くの猫たちが幸せに生きていける社会を築いていきたいですね」

 今後、このような「里親型猫カフェ」などが全国に広まって、一匹でも多くの猫たちが救われることを心から願っている。


ようこそ猫カフェへ里親募集型猫カフェ「Hakobuneco」の取り組み 第3回.里親さん直撃インタビュー!

水野綾子

水野綾子

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(みずの あやこ)

Hakobuneco代表

北海道生まれ。
2010年よりノア動物病院、Hakobuneco昭和店勤務。
幼少の頃より猫や犬に囲まれて過ごしたことが、この仕事をこころざすきっかけに。1日1回は猫をさわることをモットーとしているが、実は家に帰ると5頭の猫たちが待っているため、1日中猫に囲まれる日々を送っている。趣味はガーデニング。

里親募集型の猫カフェHako bu neco:
http://www.noah-vet.co.jp/nekocafe.html

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