トイプードルのミント(仮名)は、家族に強く噛みつく。
首輪やリードを付けようとすると咬むので、散歩には1年以上行っていない。
撫でて欲しい時は噛まない。でも、触って欲しくない時、いやな時は噛む。
家族は、こんな状況でこのままミントを飼育することに不安を感じ、里親を探すことも考え動物保護団体に相談をしにいった。
その保護団体からミントのトレーニングをすすめられたことをきっかけに、私はミントとその家族に出会いました。
カウンセリングのために自宅へ行くと、そこには、伸びきった毛玉に埋もれたミントがいました。
トリミングもできていない。
家族もミントも緊張しながらの生活で互いに強いストレスを感じており、そのストレスの為、ミントは落ち着きがなかった。
家庭の事情で、トレーニングのために継続的にレッスンを受ける金銭的な余裕がなく、首輪・リード・口輪を噛まれずに付け外しできるようにするやり方を提案し、レクチャー。
この日、家族だけで散歩に行き、トリミングもできるようになりました。
しかし、3ヶ月後に連絡があり、
「子供の友達を咬んだからやはり里親に出すべきか悩んでいる」と。
考えが甘い。
保護団体は、強く咬む犬を引き取り里親募集することはない。
万が一にもミントを迎え入れてくれる里親が決まったとしても、その里親先でも同じ問題が起きる可能性があるからだ。
里親探しは、ミントと自分たち家族の問題を他の人に投げるだけだと伝えた。
愛護センターに放棄すれば、咬む犬は譲渡対象にできないため殺処分される。
詳しく様子を聞くと、トレーニングでなくても、行動を管理すれば噛みつきを回避することも可能な状況だった。
親は毎日生活で精一杯なのだろう。
それでも、生きるか死ぬかミントの命がかかっている。
子供たちも「死」そして「殺処分」が理解できる年齢だった。
私は、放棄がどういうことなのか、もう一度家族で話し合うべきだと伝えた。
「ありがとうございます。家族で話して連絡します」と返事があり、話しを終えた。
しかし、、、
その後、連絡はなく、連絡をしても繋がらなくなってしまった。
私の伝え方が間違っていたのか・・・。
私が引き取って訓練して里親を探す、という選択肢が頭によぎる。
でも、それはやらないと決めている。
一度引き受ければ、次はこの犬もとなる。
だから、飼い主から犬を引き取ることはしない。
ミントは、その後どうなったのか・・
こうしたことは、この家族だけの特別な問題ではない。
日本のペット市場やその構造に、問題の一因がある。
犬は、10年・15年と生きる。
人の都合や事情に関わらず、犬には時間・お金・手間がかかる。
その上、躾ができなければ、咬む・吠えるなどの問題が起こることもある。
「お金を出せば、すぐに犬を買える」
この現状では、今回と同じような問題は続くだろう。
ペットを買うのは簡単。
でも、飼いきることは簡単でないのだから。