健康・病気

馬の跛行(はこう)

乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回は、馬の跛行(はこう)についてです。

跛行とは?

馬の歩様に異常をきたしている状態のことです。
色々な原因やタイプがあり、治療法もそれによって変わってきます。
たとえ最善の予防策を講じていたとしても、いつでも発生する可能性がありますが早期の診断と治療により、馬の痛みやさらなる怪我の可能性を軽減できます。

馬の跛行の兆候

・異常な歩様

歩様の変化は跛行の最も一般的な兆候です。
歩様のリズムが均等でなくなっているなど、多くの歩様変化は、速歩や駈歩などのより速い歩様でより顕著になります。
歩き方の変化によって、後肢または前肢の跛行、あるいは別の種類の怪我を抱えているのかを知ることができます。

・動かない

普段活発な馬が動かなかったり、脚に体重をかけようとしなかったら、跛行の可能性があります。場合によっては、痛みによりこれがさまざまな表面に現れることがあります。たとえば、馬は柔らかい牧草地では元気そうに見えても、歩道や砂利の上では歩きたがらないかもしれません。

・首振り

より重度の跛行では、常歩や速歩で頭が揺れることがよくあります。馬の頭は、負傷した脚から体重を移動させようとすると、著しく下がったり上がったりします。一般に、下降は後肢の跛行の指標であり、上降は前肢の跛行の指標です。

・ぎこちなく立っている

バランスの悪い立ち方をしている時。負傷した脚に体重がかからないように、片側に体を傾けたり、体重を前後に移動させたりしている場合があります。

馬の跛行の原因

・背中の怪我

馬はかなり硬い背骨を持っています。ひっくり返ったり転んだりすると、馬の背中を簡単に傷つける可能性があります。脊椎損傷により、馬の脚に跛行が発生しやすくなります。急性仙腸関節痛などの脊椎疾患も、重度の痛みや跛行を引き起こす可能性があります。放牧場がぬかるんでいる時に走って転んだり、寝て起き上がる時に滑って痛めてしまう事があります。

・肉離れ

馬も人間と同じように捻挫や肉離れをすることがあります。突然ひねったり回転したりすると、筋肉や靭帯が断裂したり伸びたりして捻挫を引き起こす可能性があります。これらの筋肉の問題は通常、腰や肩で発生し、治癒には長い時間がかかります。

・腱損傷

馬では腱の損傷は比較的一般的で、裂傷から重度の炎症まで多岐にわたります。裂傷は、物に当たったり、他の馬に蹴られたりすることによる外傷によって生じます。炎症は、運動や肢巻きの不適切な装着によって引き起こされる可能性があります。巻く方向を間違えたり、きつく巻きすぎると脚の炎症につながります。

・関節炎

高齢の馬も人間と同じように関節炎を起こしやすいです。馬が老化すると、関節内の軟骨が破壊され、動きに不快感や痛みが生じます。寒さや湿気の多い天候では、高齢の馬が痛みを感じるのが一般的です。関節炎は治癒が難しいので対処療法となります。

・蹄葉炎

蹄葉炎または蹄葉炎は、蹄壁を足の骨に結合している蹄葉が炎症を起こして弱くなることです。治療せずに放置すると、重度の蹄葉炎により足の骨が沈んだり回転したりすることがあります。これは馬に極度の痛みを引き起こすため、治療が必要です。食生活の突然の変更、過剰な体重の増加、高熱などで蹄葉炎を引き起こす可能性があります。

・膿瘍

膿瘍は、土、破片、石などが蹄に詰まると発生します。細菌は刺し傷や白線から蹄に侵入します。足裏の打撲も蹄膿瘍を引き起こす可能性があります。馬の白線が健康であることを確認することは、蹄膿瘍の予防に大いに役立ちます。

馬の跛行の治療方法

跛行の馬の治療は、跛行の検査、根本原因、馬の年齢、ライフスタイルによって異なります。一部の跛行は、特定して治すのが難しい場合があります。跛行の治療における主な目的は、多くの場合、痛みと炎症を軽減することです。これにより、組織へのさらなる損傷が最小限に抑えられ、治癒と回復が早まります。休息や患部を冷やす、抗炎症薬を塗布などの処置以外の治療方法には以下の様なものがあります。

・投薬

非ステロイド性抗炎症薬 (NSAID) のバナミンやフェニルブタゾン (ビュート) は、炎症を軽減するために一般的に投与されます。どちらの薬も適切に使用しないと悪影響を及ぼす可能性があるため、投与量については獣医師の指示に従います。

・矯正装蹄

矯正装蹄は蹄葉炎の馬では比較的一般的です。特別な蹄鉄は馬の足裏のサポートと保護を強化します。蹄葉炎以外の破行でも、装蹄によって馬のバランスが改善して破行が消える事があるので装蹄のチェックは重要です。

・整体 -カイロプラクティック、マッサージ療法、鍼治療

専門家の手技で劇的な回復をする事があります。

・遠赤外線療法

他の療法と組み合わせて遠赤外線療法は、炎症を軽減し損傷した領域の血流と循環を増加させます。副作用がないので、取り組みやすい治療です。

・関節注射

関節炎を患っている馬には、コルチコステロイド、ヒアルロン酸、抗炎症剤、血漿などを含む関節注射を患部の関節に直接投与することで効果が得られます。


馬はとても痛みに弱いです。
破行に気づいたらまずは原因を突き止める。それからすぐに痛みを取り除いてあげることが大切です。
原因がわかる前に痛みと取り除いてしまうと、正しい治療が出来ず、破行が長引いてしまうことがあります。普段から馬の様子に気を配って、少しの異変にも早めに気づいてあげられるようにしたいですね。

進 由紀

進 由紀

投稿者の記事一覧

(すすむ ゆき)
乗馬インストラクター
全国乗馬倶楽部振興協会認定指導者

2002年より乗馬クラブでインストラクターとして働く

「馬は自分を映す鏡」の様な存在です。
自分の行動に対しての答えを、いつも分かりやすく返してくれます。
だからこそ、いつでも正直に、真剣に、謙虚に、馬と向き合う事が出来ます。
それは時に苦しいけれど、そんな時にもポッと何か閃きをくれたりする。
馬はとても賢くて、優しくて、そしてどんな馬もみな、真面目で頑張り屋です。

出会った馬には、幸せを感じながら人間と仕事をしてもらえるように。
また馬の素晴らしさを一人でも多くの方に知って頂けるように。

馬と共に成長し、人々に貢献する事を目標に、日々奮闘しています。

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