乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回は、皮膚炎によるかゆみのお話です。
(海外では「sweet itch」と呼ばれています)
馬の虫刺されに対するアレルギー反応を表すために使用される一般的な言葉として「スイートイッチ」というものがあります。
「季節性馬皮膚炎」または「馬虫刺され過敏症」とも呼ばれます。
すべての 馬アレルギーの中で、 世界中の馬が最もよく苦しんでいるのがこのかゆみです。
また、馬主にとって管理が最もイライラするものの一つでもあります。
スイートイッチを引き起こす昆虫への曝露を軽減し、影響を受けた馬の症状を軽減するためにできる事がいくつかあります。
スイートイッチは、季節性アレルギーや食物アレルギーとは異なります。
これは、刺咬するユスリカ、ブヨ、または蚊の唾液中のタンパク質に対する特異的なアレルギー反応であるためです。
すべての馬が虫刺されに対してアレルギーを発症するわけではないことを覚えておくことが重要です。
しかし、一般的に多くの馬がこのアレルギーを発症します。
さらに、すべての馬の品種が影響を受けますが、温血種の方がリスクが高いという説もあります。
この皮膚炎の場合、馬は通常、一度虫に刺されただけではアレルギー反応を起こしません。
ただし、ほんの数口噛むだけで反応が引き起こされる可能性もあります。
馬が最も被害を受ける一般的な時期は、昆虫の数が最も多くなる晩春から夏にかけてです。
昆虫の生息数が多い地域の馬は、他の地域に比べて長期間アレルギーを発症しやすい時期が続く傾向があります。
馬が虫刺されによるアレルギーを経験している兆候には次のようなものがあります。
- 昆虫に対する通常以上の過敏症
虫刺されによるアレルギーがある馬は運動中に虫が近づくと追い払おうと必死になり運動に集中しづらい事があります。
- 過度の引っ掻きや転がりを伴う一般的なかゆみ
馬房で壁に体を擦り付けたり、洗い場で柱にお尻を寄せて掻いたりなどします。
- 馬が皮膚の炎症を起こした部分を噛んだりする
口が届く部分は口でガシガシと掻いています。
- かゆみによる脱毛
掻いたり噛んだり、炎症が強くなって脱毛してしまう事があります。
- 露出した皮膚がしこり状になったり、皮膚が炎症を起こしてかさぶた状の傷ができたりする
しこりや傷が出来る前に対処してあげる事が大切です。
- ストレスによる体重減少
虫の活発な季節は暑さも伴い馬にとってはストレスの多い時期となり痩せてしまう場合があります。
馬はスイートイッチのために全身がかゆくなることがありますが、影響を受ける部位は
- 首に沿ったたてがみ
- 尾頭(尾翼)
- 脚
- 顔
- 耳
- 腹部正中線(腹部)
などです。
ではこの皮膚炎の影響を受けた馬をどのように管理すれば良いでしょうか?
罹患した馬は通常、人生の早い段階でこのかゆみを発症します。
そして、年齢を重ねるにつれてアレルギーは悪化していきます。
ですので毎年その季節には対策をしてあげなければいけません。
様々な策を講じてできる限りかゆみを軽減させてあげましょう。
まず、馬がアレルギーを患っている場合は、検査を行うと良いと思います。
獣医師は、反応を監視するためにユスリカ抽出物を皮膚の下に注射するなどの診断検査を行うことができます。
ただし、アレルギー検査は必ずしも正確であるとは限りませんが、対策や治療の方向性を決めるには参考になると思います。
アレルギーが重度の場合は、局所軟膏や全身薬を処方する場合があります。