アメリカの動物事情
第10回 アメリカでの動物ボランティア
アメリカの動物問題/終わりに
第10回 アメリカでの動物ボランティア
アメリカの動物問題/終わりに
アメリカでも動物に関わるボランティアがたくさんあります。シェルター(保健所)では動物の世話をする人、掃除係、事務の手伝い、インターネット管理、動物病院の補佐、カメラマン、譲渡会やイベントでのヘルプなどたくさんありますが、それらはさらに細分化されています。例えば「動物の世話をするボランティア」も“犬専門” “猫専門”に分かれ、そこから“ゲージの中で犬と触れ合う専門” “トリミング専門” “子犬専門” “運動量の高い犬専門” “力の強い犬やトレーニングが必要な犬専門”と細かく分かれていきます。
細分化されたそれぞれのボランティアを掛け持ちする事は可能ですが、いずれの分野にもボランティアを始める前に定められた時間のトレーニングクラスを受講する事、そしてより高い技術や経験が求められるボランティア活動を希望する場合は、定められた時間のトレーニングクラスを受講したり、それまでのボランティアとしてのキャリア(日数)が必要になります。
シェルターのような施設を持たないアニマルレスキュー団体(動物愛護団体)では、動物の搬送ボラ、フォスターボラ(一時預かりのボラ)、譲渡会やイベントのボラやインターネット管理や経理、TNR活動などのボランティアを募集しています。レスキュー団体にも定期的なボランティアミーティングがあったり、犬のドッグトレーニングのクラスを受講することを必須条件にしているところもたくさんあります。またフォスターのような家庭で動物を預かるボランティアには、書類審査や面接、家庭訪問などの審査をしてからボランティアとして参加出来るかどうか決まってきます。
また災害時など、特別に動物救護活動に参加するボランティアも日頃から募集&育成しており、災害時に動物シェルターを迅速に発足させることが出来るよう、大きな動物愛護団体では定期的に災害時の動物救護セミナーを開いています。
このようなボランティアの講座やクラスは通常無料で開催されますが、実際にお金に変えると何百ドル何千ドルと言う価値のある知識であるとも言われており、クラスを受けた後、独立してドッグトレーナーやペットシッター、ドッグウォーカーになる人もいると聞きます。
ロー&ノーキルシェルターや生態展示販売をしないペットストア、不妊手術やマイクロチップ、地域猫活動の普及など、アメリカのアニマルレスキューをいろいろと伝えてきましたが、アメリカもまだまだたくさんの動物問題を抱えています。(アニマルポリスに関する質問をたくさん頂いていますが、アニマルポリスが所属する部署や位置づけ、呼び方は州によって違ったりするため当方から適切なお答えは出来ません。私の住む州にはアニマルポリスはいません)
日本と同じ様に動物虐待やインターネットでの生態販売、自治体や地域によりアニマルレスキューへの取り組みや動物愛護意識にも大きな開きがあります。そしてアメリカならではの大規模なパピーミルやバックヤードブリーダー(素人繁殖家)、年間2万頭以上の犬が命を落としていると言われる闘犬問題や、譲渡が浸透するのと比例して罪悪感なくローキルシェルターに動物を持ち込む飼い主さんの増加。高額過ぎる医療費や訴訟問題などの関係で簡単に安楽死を決意する飼い主さんや獣医さんなど、解決しなければならない課題がたくさん残されています。動物愛護先進国の仲間入りをしたと言われるアメリカですが、その歴史はわずかに数十年で、日本の現状との違いはさほどないように感じることもあります。
そのように現在進行形で進歩を続けるアメリカのアニマルレスキューだからこそ、日本でも取り入れやすく、参考になるのではと思います。
国という垣根を越えて、人と動物が共に住みやすい星になることを切に願います。
【Dear Paws】
「アメリカの動物事情」より 2013/5/24引用
【注意】このテキストは2010年9月の情報です。告知なく変更や訂正をする事があります。また、文中アメリカと表現していますが対象はメリーランド州に限定しています。アメリカの動物に対する取り組みや考え方は州法や自治体、生活形態により違いがあるため、内容が全米に共通している訳ではありません。
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