しつけ・ケア
イヌに教え、教えられ 第20回 相手を知る
愛犬の行動に困っている飼い主さんと話をしていると、「悩みそのものに飼い主さんの目が向いてしまうのだな」と感じることがある。
例えば、
「バイクや宅配人が押す台車に吠える」
「家族の手足にジャレて、噛んでくる」
「電信柱や道の脇、どれも嗅ぐから散歩が進まない」
困った行動を愛犬がやらなくなればいいが、やめさせられないことが続くとイライラして感情的に叱ってしまう、、、ということが考えの中心にある飼い主。
愛犬がどうしてそのような行動をとるのか?
視点を変えてこれらの行動を犬の立場から見てみると、飼い主にとって困った行動も、犬には理由があって行っていることなのです。
犬は、人と全く違う本能や習性があり、行動基準を持っている。
― バイクや台車に吠えるのは、
「逃げるものを追いかけ、捕まえたい」本能。
― 手足にジャレて噛んでくるのは、
犬同士のコミュニケーション。
犬同士での触れ合う機会が無くて、近くにいる家族にやっているのかも。
― 電信柱や道の脇、どれも嗅ぐから散歩が進まないのは、
嗅覚が人の何万倍も優れた犬にとって、散歩は家にない匂いの刺激がいっぱい。その刺激が気にならないわけがない。
こうして犬の本能や習性を前提に犬の行動を見たとき、犬たちが単に飼い主を困らせようとしてしているわけではないことが分かる。
犬を知ると少し冷静になれる。対応が変わるきっかけになる。
逃げるものを追いたい本能には
ボール投げなど、他で満たし、バイクには興奮しない、吠えないように教えていく。
ジャレ噛みには
他犬と遊ぶ機会を持ったり、オモチャ遊びや噛んでいいもので噛みたい本能を十分に満たし、人の手足を噛むのは違うと教える。
匂いの探検心には
十二分に嗅いでいい場所を作っておいて、嗅ぐ場所と嗅がない場所の区別を教える。
相手(犬)を知ることができれば、自分(飼い主)の思いだけの一方通行ではなくないになり、意志が互いに伝わりやすくなる。
人間同士も同棲や結婚など一緒に暮らし始めれば、生活距離がより近くなり、お互いの生活習慣や考え方、ちょっとした自分とは違う行動が目に付いたり、気になったりすることもある。
愛犬が飼い主の思い通りにならないのは、むしろ当たり前なのかもしれない。言葉が通じる人間同士でも難しいことがあるんだから。