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ハンドバッグ犬 ~歩き方を忘れた犬たち~

ハンドバッグ犬
~歩き方を忘れた犬たち~

    


 みなさんは、バッグからちょこんと顔だけ出して、飼い主さんとおでかけしている犬を見かけたことはありますか?

 また、パリス・ヒルトンなど、海外のいわゆる「セレブ」とよばれる女性たちが、ハンドバッグを抱えるかのように、小脇に小型犬を抱えている写真に見覚えはありますでしょうか。

 現在、イギリスではそのような「セレブ」たちの影響で、チワワやヨークシャテリアなどの小型犬をバッグに入れたり、抱っこしたりして連れ歩く光景が多く見受けられるようになりました。

 これは、「お散歩デビューへ向けた慣らし」などの目的ではなく、「そうすることがかわいい」という理由からきています。

 まるで赤ちゃんやアクセサリーのように扱われるこのような犬たちは「handbag dogs(ハンドバッグ犬)」と呼ばれ、動物愛護大国イギリスの社会問題の1つとなっています。

 「え? なんで問題なの? かわいいのに……」と思ってしまったあなた。かわいさゆえに甘やかしすぎたり、犬をマスコットやぬいぐるみと誤解してアクセサリーのように扱ったりすることは、様々な悪影響をもたらします。

多くの「ハンドバッグ犬」が捨てられている

 現在、イギリスでは多くの「ハンドバッグ犬」が、かつての飼い主によって捨てられています。

 イギリスの動物愛護団体「Battersea Dogs and Cats Home(バタシー・ドッグズ&キャッツ・ホーム)」によると、2012年にバタシーの保護センターに連れてこられたヨークシャテリアの数は、9月までで90匹以上。これは、前年の約1.7倍の数字だそうです。同様に、チワワの数も前年より36%増加しています。

 また、同国の別の団体「Dog Trust(ドッグ・トラスト)」でも、2010年には400匹以上の小型犬が収容され、これは前年比で44%もの増加となっています。

 これらの犬たちの多くが、「ハンドバッグ犬」です。

 「ハンドバッグ犬」の中には、犬にとって非常に大切な「社会化期」という時期を、バッグや人の腕の中で過ごしてしまったために、外で満足に歩くことができなくなってしまった犬もいるのです。

「社会化期」に甘やかされた犬は多くのストレスに曝される

 犬の「社会化期」とは、生後4~13週頃(個体差があります)で、外界への好奇心を強く持つようになる時期です。この時期の過ごし方が、その犬の性格や行動パターンに大きな影響を与えます。

 社会化期を過ぎると、好奇心を警戒心が上回り、その後は見慣れないものを怖がるようになってしまうため、社会化期の間にほかの犬や人に慣れ親しませ、犬社会や人間社会での社会化を促すことが必要だといわれています。

 「社会化期に形成された性格や行動パターンは、二度と修復できない」という意味で、「社会化期」のことを「臨界期」とよぶ研究者もいるほど、重要な社会化期。この時期を、ほかの犬やその他の動物、飼い主以外の人間とまともにふれあうことなく、飼い主のバッグや腕の中で過ごしてしまうと、

  • 外の世界を極端に怖がる
  • 外では「運ばれる」ことが当たり前となり、歩かなくなる
  • 感情のコントロールができず、人間やほかの犬に対して攻撃的になる

といった問題が起こりやすくなります。

 実際に、イギリスの動物愛護団体に保護された「ハンドバッグ犬」たちは、成長に伴ってこのような問題が顕在化

し、「アクセサリー」としづらくなったために捨てられた犬たちです。

 社会化するチャンスを逃してしまった犬にとって、外界は怖いものだらけ。そのストレスは、心霊話が苦手な人を廃病院の中で生活させるようなものです。人懐こく優しい性格になり得た犬を、怖がりで攻撃的な「ハンドバッグ犬」にしてしまった飼い主の責任を、なぜ犬だけが背負わなければならないのでしょうか?

日本でも今後「ハンドバッグ犬」が増える?

 一見かわいらしい「ハンドバッグ犬」が問題とされているのは、

  • ファッション感覚で飼われ、しつけなど十分な飼育がされない
  • 社会化されないことで、犬が日常の様々な刺激に強いストレスを感じるようになる
  • 神経質で攻撃性の強い性格になってしまい、飼い主が手に負えなくなり手放す

このようなトラブルがあるからなのです。

 現在日本では、町で見かける犬のほとんどが小型犬といえるほど、小型犬が主流化しています。動物愛護精神やしつけの徹底が、広く国民に浸透したイギリスでさえこのような問題が起きているということは、日本でも今後同様の問題が発生する可能性は無きにしも非ずではないでしょうか。

 もちろん、犬をバッグに入れたり抱っこしたりして連れ歩くことは必ずしも悪いことではなく、「ワクチン接種途中の子犬の、散歩への慣らし」や「ケガ・病気」など、必要があるときはその限りではありません。

 「犬は自分をかわいく見せるためのアクセサリーではない」ということを理解することが、当たり前のようなことですが、大事なことなのです。



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