乗馬インストラクターがお伝えする馬の話。
今回は好きな人にはたまらない、あの香りの話です。
犬好きの人に「犬のどんなところが好き?」と聞くと、「肉球のにおい!」「口のにおいも好き!」なんて答えが返ってくることがあります。
猫派の人なら、「お腹の毛のにおいが最高」「日なたの背中、ずっと嗅いでたい」っていう人も多いかもしれません。

じゃあ、馬のにおいって? 実はこれも、“知る人ぞ知る”世界があるんです。
■ 馬のにおいは、いわば“牧場の香り”
はじめて馬と近づいた人が驚くのが、想像以上に“動物らしくない”香り。
ちょっと甘くて、ほのかに干し草っぽくて、清潔感すらあるような独特のにおいがします。
汗のにおいも、犬のようなツンとした強さは少なくて、 馬房や馬体の毛並みから香るのは、「あ、この空気、牧場だ…」と思わせるような落ち着いた香り。
馬が好きな人の中には、 「好きなにおいランキング1位=馬の首の後ろ」って人もいるくらいなんですよ(笑)
■ 毛・皮膚・鼻…においの発生ポイントいろいろ
馬のにおいを感じる場所は、実は一箇所ではありません。
- 背中や首の毛:太陽の下でほんのりあたたまったとき、干し草のような優しい香りがすることも。
- 鼻のまわり:呼吸に混ざってほんのり湿った草の香りがすることも。
- 蹄(ひづめ)まわり:手入れの状態によっては少し土や菌のにおいを感じる場所でもあります。
- 馬房の中:木くずのベッド・干し草・わら・馬体臭が混ざった“ザ・馬空間”。
意外と“いい香り”がする場所は**「鼻の穴の外まわり」**だったりもします。 しっとりした皮膚に、草の香りとほんのり馬特有の香りが混ざってて、なんとも言えない「落ち着くにおい」がするんです。
■ においフェチが集う世界、それが馬界
じつは乗馬クラブや牧場の中には、
“推し馬のにおいにうっとりしてる人”が確実に存在します(笑)
- 「この子の鼻先、チョコレートみたいな香りするのよ」
- 「いつも首元のにおいで癒されてる」
- 「馬房のにおいがもう、好きすぎて帰れない」
…というような話が、普通に飛び交っています。
もちろん、体調や汗の出方、飼料の種類や清掃のタイミングでにおいは変化します。
でもそれも含めて「その馬のにおい」っていうのが、その子だけの個性として感じられるんですよね。
■ 犬猫とのにおい比較、どう違う?
犬の肉球=ポップコーンのにおい
猫のお腹=日なたの毛布のにおい
なんてよく言われますが、馬のにおいはもっと**「空気感を含んだ香り」**に近いかもしれません。
たとえば…
- 馬房に入ったときの「干し草+馬体温」の空気
- 背中に鼻を近づけたときの「野外+あったかさ」
- 手入れしたあとの「ツヤ+少し汗+ミネラル感」
これが、ハマると癖になるんです。
■ においで健康チェックもできる
実は、においは馬の健康チェックの重要な手がかりにもなります。
- 呼吸がすごく臭い=歯や消化器に異常があるかも?
- 汗が酸っぱすぎる=脱水やストレスの可能性
- 馬房がアンモニア臭い=尿が溜まりすぎている
においって、感情にも響くし、身体の変化も教えてくれるセンサーなんですよね。
だから「いつもと違うにおい」は、ちゃんと気づいてあげたいサインでもあるんです。
「馬のにおいが好き」なんて、ちょっとマニアックな話かもしれません。 でも、それを“たまらない”って感じてる人は、実はけっこういるんですよ。
あの、ちょっと甘くて、あたたかくて、どこか懐かしいようなにおい。
それはただの動物臭じゃなくて、 「生きてる」っていうあたたかさが詰まった、優しい香りなのかもしれません。
馬とすれ違ったとき、ふとそのにおいを感じたら… 少しだけ立ち止まって、深呼吸してみたくなるかもしれませんよ。






























