進由紀

馬のライフスパン

乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回は馬のライフスパンについてです。

馬の年齢は人でいうと何歳ですか?と聞かれる事がよくあります。
犬と人の寿命が違うように、馬もまた違います。
馬の一生の年齢による変遷を見ていきましょう。

馬の妊娠期間は約11ヶ月

出産時期が餌の豊富な暖かい季節、春先になるよう、暖かい4月〜9月ごろが繁殖期となります。
1年の中でも日の長い季節に繁殖期がくるため、「長日性季節繁殖動物」と言われます。
馬の他にオオカミやキツネもこの長日性季節繁殖動物です。
同じ草食動物でも妊娠期間が5ヶ月と短いひつじやヤギは短日性季節繁殖動物です。

馬の思春期/青春期(0~18歳)

生まれたばかりの仔馬の大きさは品種によって様々ですが、サラブレッドの平均は体高約102㎝体重約54kgです。
生後1ヶ月は月間の増加量が一番大きく、1週間で10kgも増加すると言われています。
1歳になる頃には300kgを超えます。
身体の成長は1歳半頃までに95%に達します。

3歳頃には大きさや筋肉の成長が大人の馬と同じサイズになり、4〜5歳で身体能力の成長のピークを迎えます。

馬の成人期(6~18歳)

6歳から18歳までは馬の成人期にあたります。

競走馬は2歳頃デビューし、多くの馬が5歳頃までに引退しますが、乗馬では馬の育成は長く時間をかけて行います。

トレーニングスケールという調教における過程を示す明確な基準があるのですが、馬の心身の成長に合わせて無理させることなく行える様に年齢の推奨基準もあります。オリンピックの馬術では出場できる馬の年齢は8、9歳以上と定められています。

10歳になると、大抵の馬は若者っぽい雰囲気がなくなって落ち着いてくるように感じます。ちょうど色々なことを落ち着いてできるようになってくるので、競技会などで一番能力を発揮しやすい時期とも言えます。

馬のシニア期(18歳~)

18歳からはシニア期に入ります。
ヒトでいう65歳からの時期です。

馬の世界ではおじいちゃんおばあちゃんですが、18歳以上で様々な環境で活躍している馬はたくさんいます。乗馬クラブのスクールホースとしてはベテランとなり、安心して人を乗せ、ライダーに色々教えてくれる良い先生です。

20歳を越えると、馬の身体に老化を垣間見る事が増えてきます。基本的にはヒトと同じく、規則正しい生活、食生活、十分な休養と適切な運動で健康を維持する事が出来ます。
その中でも大切だと感じるのは適切な運動です。
高齢だからといって急に運動量を減らしてしまったりすると、馬の筋肉や身体の状態は急激に老化してしまいます。馬の体調を見ながら、適切に運動し続けることが健康の秘訣です。

そして、馬は25歳から30歳ぐらいに寿命を迎えます。

私の体感では、馬は3歳位までは体が大きくてめちゃくちゃ元気な赤ちゃん!可愛いけれど、元気が良いので人間にとっては脅威になることもしばしば。
ですがこの時期にどう接するかで、人を好きになるか、人を恐れるのか、人が嫌いになるか、人を信頼するのか、その礎が築かれると思います。

次に出会った馬の年齢を知る事ができたら、その馬がどんな時期を過ごしているのかに思いを馳せてみてくださいね。

 

進 由紀

進 由紀

投稿者の記事一覧

(すすむ ゆき)
乗馬インストラクター
全国乗馬倶楽部振興協会認定指導者

2002年より乗馬クラブでインストラクターとして働く

「馬は自分を映す鏡」の様な存在です。
自分の行動に対しての答えを、いつも分かりやすく返してくれます。
だからこそ、いつでも正直に、真剣に、謙虚に、馬と向き合う事が出来ます。
それは時に苦しいけれど、そんな時にもポッと何か閃きをくれたりする。
馬はとても賢くて、優しくて、そしてどんな馬もみな、真面目で頑張り屋です。

出会った馬には、幸せを感じながら人間と仕事をしてもらえるように。
また馬の素晴らしさを一人でも多くの方に知って頂けるように。

馬と共に成長し、人々に貢献する事を目標に、日々奮闘しています。

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