すまい

犬と暮らす家づくり 第5回 ともに暮らすために

犬と暮らす家づくり

第5回 ともに暮らすために

遠山 信夫(建築家)


 本連載では、これまで、遠山さんのペットのお話や、設計のお話などについてお伺いしてきました。今回は、しめくくりとして、ペットと人との共生や、今後のお仕事などについてのお話をお伝えします。

 ともに暮らすために

居間のトイレスペースとドッグラン

ペット共生住宅の例:トイレスペース付きの居間(写真上)とドッグラン(写真下)

- ペット共生住宅の最近の設計ではどのようなことを考えていますか。

 トイレを居間に置いても大丈夫なように、換気設備をつけています。居間の空気の流れを考えて、ペットのトイレに換気扇をつけてにおいが外部に出て行くようにしています。

 公共のドッグランが少ないので、共生住宅にはドッグランも備えています。散歩がわりに遊ばせておくことができます。

 壁の見切材を床から1mくらいのところに設けて、壁紙を下だけ交換できるようにもしています。修理代を安くするための配慮だったんです。以前のものは見切材が太めでしたが、最近はそれを細めにして、目立たないようにしています。

 床材は新技術ではないのですが、尿が染み込まないようなシートになっています。


- ガーデニングなどはどうなのでしょうか。

 特別にペットのため、というものはないのですが、芝生にすると犬が走りやすく、泥を家に持ち込まないので、よく使われます。木のチップを敷いたりもします。足の裏にもやさしいですね。

 

- 犬や猫、動物にまつわる社会的な課題についてはどう考えていらっしゃいますか。犬を捨てたり、それにともなう殺処分、しつけの問題などがよく話に上がりますが。

 動物を捨てることが罪であるように、法律を変えないとだめだと思います。処分する、ということは犬を捨てる人がいる、ということですから。根本のところをやめさせないと、解決しないのではないでしょうか。

 しつけはまずショップで、買ったときに講習を受けられるようにするのがよいと思います。簡単なものでよいので、初歩的な知識だけは飼い主に伝えていくべきでしょうね。

 実際に犬を飼っている方は、犬をとても大事にしています。一部の捨てている人たちが問題なのだと思います。

 

 ペットにも人にもストレスのない設計

- 最後にぜひ、お仕事のPRや今後の目標などをお聞かせください。

 ペットにも人間にもストレスのない住宅の設計をすることはできます。

 住宅の設計に力を入れていますので、これからも手がけていきたいと考えています。建築家に設計を頼むと「高くつきそう」という印象をもたれるかもしれませんが、建築費の入札見積もりを取りますので、建設会社間の競争が働くので結果的には安くなります。

 また、工務店や建売では扱いたがらない斜面地に家を建てたりすることもできます。この家もエントランスから庭まで3m以上下がっています。でも、気づかないような作りになっています。このような斜面地に家を建てると、基礎にコンクリートを入れて平らにしたりと考えてしまうところですが、斜面をそのままうまく活かすことによってコストも抑えることができます。地価も安いので、全体的にも安く仕上げることができます。

 お客様の要望を細かく聞いて、いちばんよい答えを出すことができます。

 この家を建ててから、斜面地のご依頼が増えました。K邸もH邸もそうなんです。一戸建ては大きな家のご依頼が多いですね。

 マンションでは敷地の限られたものも扱っています。目黒のマンションでは、北面に目黒公園があり、北向きに窓を取っています。北向きですと暗くなる印象があると思いますが、水周りなどもガラスを使って、景色がよく見えるようにし、明るく見せるようにしています。

目黒のマンション

目黒のマンションでは、北面の目黒公園に向けて窓を大きく取っている。部屋を明るく見せるくふうも。

 また別の物件では、都会のマンションで住宅地のなかにありますので、吹き抜けや中庭を設けています。お風呂を中庭に向けて設置して、都心のマンションにもかかわらず、窓を開けっぱなしにしながらお風呂に入れるような設計をしています。中庭に光が入り、視界が抜けるように工夫しています。

住宅地のなかにあるマンション

吹き抜けや中庭のあるマンション。窓を開けたまま風呂に入れる。

犬と暮らす家づくり
第4回 人間が快適なら犬も快適

アバター

遠山信夫

投稿者の記事一覧

(とおやま のぶお)

建築家/一級建築士

ADD都市建築事務所を経て、2007年、神奈川県相模原市に遠山信夫アトリエ設立。
 1989年新建築社主催「都市の自然を呼吸する住まい」優秀賞受賞。
 作品掲載歴・テレビ取材歴に、『建築家の自邸2』(えい出版社)、『Esquire 2003年11月号
』(エスクァイアマガジンジャパン)、『犬と住む家 Vol2』(学研)、『シンプルスタイルのインテリア』(成美堂出版)、『いつかは住みたい憧れのインテリア』(成美堂出版)、『デザインリフォーム』(芸文社)、『建物探訪』(テレビ朝日、2003年)、『イブニングファイブ』(TBS、2007年)などがある。

関連記事

  1. 犬の「ハウス」をインテリアに
  2. 犬と暮らす家づくり 第2回 ペットとの日々
  3. 犬と暮らしてきた建築家がつくったハウス『Chulo Dog Ho…
  4. 犬と暮らす家づくり 第3回 斜面地を活かす家づくり
  5. ワンコと赤ちゃんのいる暮らし 第2回 初めてのご対面と共に成長す…
  6. 猫と楽しく暮らす~快適住まいづくり 第2回 ”立体的な工夫”で空…
  7. ペットと暮らす「部屋探し」と「家づくり」 ~間取りを考えるポイン…
  8. 仔犬との暮らし手帖 第2回 室内での過ごし方 ハウスは?サークル…

今月の人気ランキング

PAGE TOP