乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話、今回は「馬の祈り」です。
イギリスウェールズのある厩舎の片隅に貼られていたという詩です。
馬に携わる全ての方へ・・・
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身の回りのお世話をして
一日の仕事が終わったら
雨と風をよけて眠れる広い馬房に
きれいな乾いたわらを敷いて下さい
いつも優しく話しかけて
あなたの言葉は手綱とおなじです
そっと撫でてくれたなら 心から喜んで仕えるし
愛することを学べるから
坂を上る時激しく手綱をしゃくって
鞭で打たないで下さい
あなたの思うように出来なくても
決して殴ったり蹴ったりしないで下さい
すこしだけ待ってチャンスをあたえて
どうか私を護って下さい
そしていいつけに従えないなら
馬具や蹄がおかしくないかを見て下さい
鞍や頭絡をつけるときはきつくしないで
もし目隠しが必要なら距離をきちんととって下さい
あまりに多い荷物はつらいし雨だれの下に繋がないで下さい
蹄鉄をきちんと付けて下さい
食べられないときは歯をみて下さい
虫歯があるかもしれません
知ってると思うけど歯の痛みは耐えられません
短く繋がないでください
尻尾を短く切ったりしないでください
蝿や蚊を追い払えなくなるから
喉がかわいても言葉で伝えられません
いつもきれいな冷たい水を下さい
病気になったら助けて下さい
言葉で伝えられないから
わたしが身ぶりで伝えるから
気をつけてみていて下さい
夏には厳しい光から逃げれる場所を
寒い冬には毛布を下さい
凍てついたハミは手のひらで暖めて
それから口に入れて下さい
荷物を文句も言わないで運び
朝から晩までの長い時間
あなたをじっと辛抱強く待っています
何処へ行くのかを選ぶことが出来ないから
とてもかたい道路を進むのなら
(それが木の舗道じゃなければいいけど)
滑らないよう注意して進んで下さい
あなたに仕えているどんな時でも
命を落とすかもしれないこと
それをどうか忘れないで下さい
そして最後に…
ああ 、どうかご主人さま
私がお役にたてなくなった時は
放り出して飢え死にや凍死
残酷な飼い主に売り飛ばして食べ物も与えられず
ゆっくり痛みつけられての死を与えず
ぜひご主人さまであるあなたのそばで
いちばん優しいやり方で
私の命を終わらせて下さい
そうすれば 神様に祝福されることでしょう
厩で生まれた彼の名において
私がこんなことをおねがいしても
間違ったこととは思われないでしょう
アーメン
意訳・エグアマドリーニャ
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私がこの詩に出会ったのは約20年前です。
それ以来、冬には必ず、ハミは手やお湯で温めて、どんなに寒い日でも素手で頭絡を付けています。
この詩の内容は決してオーバーではないと感じた20年前から、少しずつですが日本でも馬を取り巻く環境は変わりつつあると感じています。
大型動物である馬の1頭の命に責任を持つという事は、思いだけでなく、体力精神力、物理的にも経済的にも簡単な事ではありません。
この詩にもある様に、馬はいつでも命を懸けています。
プロとして携わる私たちも、同じです。
だからどうか、今日の1鞍を大切に、真剣に乗って下さい。
それが馬たちを救う事に繋がっているのです。