進由紀

馬の骨格と人間の骨格の違い「馬は爪先立ち?」

乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回は、馬の骨格と人間の骨格の違いについてお話です。

四足歩行の馬と、二足歩行の人間と、大きさや姿形、立ち方も走り方も違いますが、骨格にはそれ程の違いがありません。
馬も人も直立を保つための骨、動きを可能にする関節、関節を動かすための筋肉、そしてプロセス全体をコントロールする複雑な神経系を持っています。

完全に成長し、全ての成長板が融合すると、
・馬には平均205個の骨があります
・人間には平均206個の骨があります

馬は、人間よりも多くの椎骨(脊柱の骨)がありますが、機能は人間と同じ脊髄を保護する事です。
体幹の安定性を高めて、付着する筋肉によって動く事ができます。

*馬の胸郭(胸の骨)と背骨

馬の胸郭は、人間と同じように、胸椎につながっています。
これは多くの生理学的機能にとって重要です。
おそらく最も重要なことは、大切な器官の保護と、呼吸のための肺の拡張のサポートです。

乗馬では、この部分に人間が乗ります。
胸郭と周囲の筋肉組織も、脊椎の安定性をつくっています。

馬の背骨は、下に引っ張られるほど巨大な腹部の内臓を支えるだけでなく、上からの人間(乗り手)からの余分な下向きの力も支えることができます。

馬も人間も4本の手足がありますが、人間は進化の過程で上肢(腕)を起用い使えるように適応してきました。
一方馬の前肢(腕にあたる)が実際に体重の大部分を支えます。
自由にしている放牧時で体重の役60%を支えていると言われています。

*馬には鎖骨がない!

馬の肩の構造は人間とよく似ていますが、馬には鎖骨がありません。
これは、馬の前肢が骨格の残りの部分に骨による付着を持たず、純粋に筋肉と軟組織によって所定の位置に保持されている事を意味しています。
したがって、馬は肩はとても大きな可動域を持っています。
ギャロップで走る競走馬や、馬場馬術の伸長速歩を見るとわかるように、鎖骨がないからこそ出来る動きです。
馬に鎖骨がないのは、馬が捕食動物であり、肉食獣から素早く逃げる必要があるための進化によるものです。
一方人間は、鎖骨によって肩の可動域を制限し近くで使うことにより、器用に動かす事ができます。

*馬の四肢(足・手)

人間の足と馬の後肢もとても良く似ています。
馬も人間も股関節、膝関節、足首関節を持っています。
これは馬の股関節、後膝、飛節として知られています。
前肢にある馬の膝と考えられる腕節は人間の手首に相当します。

馬と人間の大きな違いは手足の構造です。
腕節や飛節より下の部分は人間で言うと中指にあたります。
手首足首より先端の骨が長く伸びることにより足は長くなり、歩幅も大きくなりました。

また、人の前腕(肘から手首まで)は2本の骨があり、クロスする様に動かすと手首が回転します。
一方馬の前肢はその2本の骨は融合して1本の骨になっていて、手首(腕節)を回すことはできません。地面を力強く蹴って走る馬にとってはより安定感のある構造になったと考えられます。

馬の膝関節には人間と同じように膝蓋骨があり、非常に強力な大腿四頭筋群(だいたいしとうきんぐん)がついています。
この筋肉群の弱さは様々な問題を引き起こす可能性があります。

馬の後肢は、パワーの源です。馬を前進させる原動力です。
この力とエネルギーは骨盤によって支えられます。馬の骨盤は人間と同じように、腸骨、坐骨、恥骨があり、仙腸関節で仙骨と繋がっています。
人間も馬も仙腸関節(せんちょうかんせつ)には可動域はありません。
これは、人間は胴体の重量に耐える必要があり、馬の場合は後肢からの力を伝えるために十分な強度と安定性が必要なためです。

また馬には様々な品種があり、大きさも様々です。
基本はどの馬でも骨格の構造は同じであるにもかかわらず、サイズや体型によって機能や能力が大きく異なります。
早く走るのが得意なサラブレッドと重いものを運ぶのが得意な重種の馬では見た目もだいぶ違いますよね。

似ているようでやはり違う馬と人間。
馬のことをより理解して接したりケアをしてあげましょう!

 

進 由紀

進 由紀

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(すすむ ゆき)
乗馬インストラクター
全国乗馬倶楽部振興協会認定指導者

2002年より乗馬クラブでインストラクターとして働く

「馬は自分を映す鏡」の様な存在です。
自分の行動に対しての答えを、いつも分かりやすく返してくれます。
だからこそ、いつでも正直に、真剣に、謙虚に、馬と向き合う事が出来ます。
それは時に苦しいけれど、そんな時にもポッと何か閃きをくれたりする。
馬はとても賢くて、優しくて、そしてどんな馬もみな、真面目で頑張り屋です。

出会った馬には、幸せを感じながら人間と仕事をしてもらえるように。
また馬の素晴らしさを一人でも多くの方に知って頂けるように。

馬と共に成長し、人々に貢献する事を目標に、日々奮闘しています。

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