猫のしつけとケア
第5回 猫にアロマは危険!
アロマとは「芳香」、テラピーとは「療法」を意味し、アロマテラピーとは「芳香療法」と訳し、花や植物の芳香成分を用いた心身の健康管理法及び療法で、動物向けのアニマルアロマテラピーもあります。
しかし、猫への使用は、注意が必要なことはあまり知られていません。
精油を舐めた、または皮膚に滴下した猫が死亡した例や、毎日アロマを焚いている部屋に一緒に暮らしていた猫が血液検査で肝臓の値が高かった例などが報告されています。
なぜアロマテラピーが猫の体にとってよくないのでしょうか?
今回は、現段階でわかっていることをお話ししていきます。
芳香植物の香りの成分を芳香分子といい、この芳香分子の集合体が精油です。
成分の添加や除去は一切行っていないもので、特定の植物から抽出して製造されます。
100%天然植物由来の精油は、製造するのにその100から1,000倍の質量の植物が必要になり、特殊な製造行程により極度に濃縮されているため人間でも過剰な使用は危険となる場合もあり、用法容量や禁忌を守って使用する必要があります。
肝臓の重要な働きのひとつに、体にとって有害な物質を無害に変化させる「解毒」があります。
猫の肝臓の代謝機能は、犬や人間と少し異なり、重要な解毒作用のひとつである「グルクロン酸抱合」がないことがわかっています。
そのため、精油に限らずグルクロン酸抱合で分解される薬(アスピリンなど)は、少量でも中毒に陥りやすいのです。
※フェレットも同様
人間や犬が雑食であるのに対し、猫は完全肉食動物です。
犬も肉を好みますが肉を摂食しなくても生きていけるため人間と同様に雑食動物に分類されます。
進化の過程で完全肉食動物は肉食に合った肝機能が残り、不必要なグルクロン酸抱合は退化したのだと考えられます。ちなみにフェレットも完全肉食動物です。
猫によっては猫草、キャベツやレタスが好きな仔もいます。安全な植物であれば食べても問題ありません。
しかし、精油には植物の有機化合物が何倍にも濃縮されているため、少量でも中毒を起こしやすいのです。
そして、精油の毒性の注意する点は、一部の精油には蓄積性があるということです。
猫が1日の代謝能力を超えた精油を摂取し続けると体に溜まり、ある日突然症状が出ることもあります。
フェノール類、・ケトン類・モノテルピン炭化水素類(特にリモネン、ピネン)を多く含む精油が、猫に毒性が出やすいとされています。
アロマに使われる代表的な精油の種類です。
【 フェノール類を多く含む精油 】
クローブ
オレガノ
タイム など
【 ケトン類を多く含む精油 】
ローズマリー
ペパーミント など
【 モノテルペン炭化水素類を多く含む精油 】
レモン
マンダリンオレンジ
サイプレス
スイートオレンジ
グレープフルーツ
ライム
ベルガモット
オレガノ
ジュニパー
ティートゥリー
ネロリ
フランキンセンス
マジョラム など
※精油はたくさんの種類があり、ここに挙がっているもの以外にも猫に危険な成分を多く含む精油はあります
猫に対して精油を長期的に使用した研究やデータがなく、現在理論的に問題がないと言われている精油でも、今後猫に対する毒性が出てくる可能性があります。
猫と植物毒性に関して科学的に解明されていないことがまだ多いのです。
例えば
ユリ科植物が猫にだけ致死的な腎不全を起こす原因は未だに不明です。
現段階では猫がいる環境でアロマを使用することは避けたほうが良いということになります。
【 どうしてもアロマが欠かせない場合は 】
○猫が精油を誤って触れないに厳重に管理する
○アロマを使用する頻度を減らす
○猫がいる部屋では使用しない
○よく換気をする など
できるだけ精油が猫に触れる機会を減らしてください。
猫はお風呂に溜まった水をなめることもあるので、アロマバスなどをしている場合は浴槽に猫が入らないように注意しましょう。
また、精油の中にも特に毒性が強いもの(上記リスト)の使用は避けましょう。
また、定期的に健康診断を受け、家でアロマを使用することがあることを獣医師に相談し、肝臓に負担がかかっていないかチェックするとより安心です。
愛猫のストレス軽減や皮膚病などにアロマテラピーを試してみたいと考える飼い主さんもいらっしゃると思います。
しかし、独学で猫のアロマテラピーを実践するのは、とてもリスクが高く、興味がある場合は、アニマルアロマテラピーに詳しい獣医師や専門家に必ず相談して下さい。
猫のアロマテラピーのメリット、そして起こりうる副作用について正しく認識することが大事です。
若くて健康だった猫が突然のぐったりしてしまった、検査をしても原因不明の昏睡になってしまった猫の中にはこうした中毒が原因のであった可能性も考えられます。
愛猫のためにと思ってやったことが、猫の健康を害してしまうような悲しいことにならないように、飼い主さんだけで判断せず必ず獣医師に相談しましょう。
*にゃんポイント*
猫は、基本的に強い香りを好まず、特に柑橘系の香りを嫌います。
アロマを使うと自ら部屋から出て行く猫もいます。これは本能的に自分にとって毒性があることを知っているのでしょう。
庭などにまく「猫除けスプレー」のレシピには、ラベンダー、シナモン、ローズマリーなどが含まれています。
猫の食器やトイレまたフローリングに使う洗剤は、柑橘系の匂いがするものは避けてあげると良いでしょう。
参考:Holistic Aromatherapy for Animals. Kristen Leigh Bell
NARD JAPAN ケモタイプ精油事典
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