アメリカの動物事情
第9回 TNR(地域猫)
ここで言う地域猫とは、野良猫にレスキューが避妊や去勢、予防接種を行なって地域にかえし、地域住民の管理の元で生活する猫のことです。
メリーランド州では地域猫は法律で認められていませんが、ここ数年でその活動が評価されており、法的に認められそうな動きが出てきています。
地域猫の活動は地元住民の方々の協力が不可欠です。
キャットレスキューは野良猫捕獲のためのトラップ(罠)を仕掛ける許可や地域猫に対する理解を得るために、何度も住人のもとへ足を運び、協力を仰ぎます。また、猫嫌いの住人と猫好きの住人とのトラブルの仲裁に入り、折衷案を提案し、和解に努める活動もしています。猫が好きな人もそうでない人も目的は「野良猫を減らしたい」と言う同じ目的にフォーカスしていることに気付いてもらうこと、糞尿やゴミ荒らし、鳴き声などのトラブルが解決されること、野良猫がTNRにより1代限りで増えないようになることを理解してもらうように努めます。
そして捕獲した猫の中に人懐こい性格の猫や仔猫がいた場合は、レスキューで譲渡へと回されます。
実際の現場を比べてみると、野良猫を地域猫にしていくプロセスは日本とそれほど違いはありません。しかし日本では、妊娠している猫を捕獲した場合、胎児は堕胎して親猫を避妊し、元の場所に戻すことがほとんどだと思います。アメリカでは、妊娠している猫は出産させ、仔猫が生後八週を過ぎたら親猫の避妊手術をして親を元の場所に戻します。仔猫は避妊・去勢手術をし、マイクロチップ挿入と各種の予防接種を済ませてから譲渡に回すのです。
これは日米の避妊手術の費用の違いも影響しているのではと思います。アメリカでは、地域猫が対象の場合、手術費用は無料~低価格がほとんどです。
そしてアメリカでも動物虐待は猟奇犯罪の入口になると言うケースが多く、野良猫を管理することにより、地域衛生や安全性を高める効果があるとして、飛躍的に活動が受け入れられています。また地域猫を介して子供たちの博愛精神の育成や地域住人同士のコミュニケーションにも一役かっているようです。
次回は、
「アメリカでの動物ボランティア」についてのご紹介と「アメリカの動物問題/終わり」をお伝えいたしていきます。
【Dear Paws】
「アメリカの動物事情」より 2013/4/19引用
【注意】このテキストは2010年9月の情報です。告知なく変更や訂正をする事があります。また、文中アメリカと表現していますが対象はメリーランド州に限定しています。アメリカの動物に対する取り組みや考え方は州法や自治体、生活形態により違いがあるため、内容が全米に共通している訳ではありません。
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