乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回は『馬の予防接種』についてです。
人の予防接種については、ここ数年話題になる事が多いですね。犬や猫も毎年決まったワクチンを打っている子たちが多いと思います。
実は、馬にも予防接種がある事をご存知でしょうか?
馬の感染症には、馬インフルエンザのように馬から馬へ急速に広がる伝染病もあれば、日本脳炎や破傷風のように個体レベルの発症で終わるものもあります。
馬は、一般的に集団で飼養されている事が多く、伝染病が流行しやすい環境にあるため、その発生を未然に防ぐことがとても重要です。
そのために掃除、洗浄、消毒など日頃の衛生管理に加えて、ワクチン接種を行います。
ワクチン接種の目的は
・その馬が感染症にかかりにくくするため
・もしかかっても症状が軽くて済むように
・なるべく周囲の馬にうつさないため
この数年のコロナワクチンの話と一緒ですね・・・
ワクチンで予防する馬の感染症
①馬インフルエンザ
馬インフルエンザに感染すると、発熱や急性の呼吸器症状が出ます。流行には季節性がなく、一年中警戒が必要です。
ワクチンは初回は2回、以降半年に一度追加接種を続けます。
日本では1971年に大流行したのち出ていなかったですが、2007年に再び流行しました。
競馬も馬術も馬の移動が71年よりも比べ物にならないほど活発に行われていたため、流行は全国に広がり、競馬や馬術競技が開催中止になりました。牧場や乗馬クラブの施設も、立ち入りに消毒が必須になり、見学の自粛要請などが行われました。
②日本脳炎
吸血昆虫(コガタアカイエカ)を介してウイルスが伝播し、感染すると脳炎を引き起こします。蚊の活動時期に先かげて接種し、ほぼ完全に発症を防ぐことができます。5〜6月に2回接種します。
③破傷風
破傷風菌による細菌感染症で、創傷部から侵入した菌が毒素をうみ、筋肉の硬直や痙攣などの神経症状を引き起こします。
ワクチン接種の目的は、伝搬を阻止することではなく、接種を受けた馬の発症を防ぐことになります。
2週間間隔で2回基礎接種後、1年に1度補強接種します。
基礎接種完了後は、毎年5月に3種混合ワクチン(馬インフルエンザ、日本脳炎、破傷風)を接種し、6月に日本脳炎、11月に馬インフルエンザワクチンを接種します。
競技会によっては接種時期が詳細に定められた要件があり、参加する馬はそれを満たしている必要があります。
これら以外にも、
ゲタウイルス感染症、馬鼻肺炎ウイルス感染症、馬ロタウイルス感染症の予防接種があります。
いかがでしたか?
2007年に馬インフルエンザが流行した時は業界全体がとてもザワザワして、人馬の移動にすごく注意を払っていたのを思い出します。
インフルエンザワクチンに関しては、競技等で出入りをする馬だけ接種すれば良いという訳ではなく、なるべく多くの馬がワクチン接種によって抗体を保有して、集団で免疫を獲得しておくという考え方がとても大切だそうです。
ヒト界でもなかなか感染症が落ち着かないですが、手洗いうがい消毒など衛生管理をしっかりして元気に冬を乗り切りたいですね。