散歩は体力発散のためだけではなく、いろいろなにおいを嗅ぎ、広い場所では駆け回る、家族以外の人や犬とあいさつの機会をもち、適切な社会性を継続して育むためにも大切な行事です。ですが、どんなに散歩が大切なことであってもずっと引っ張られっぱなしで飼い主さんがついていくのがやっと・・・これでは飼い主さんも疲れてしまい、散歩自体がつまらないものになってしまいます。
かといって、家庭犬の散歩トレーニングは愛犬にピッタリ真横、もしくは後ろを歩かせることは必要ありません。一緒に行く飼い主さんも散歩を楽しめるよう、過剰な引っ張りはさせず、だいたい飼い主さんの近くを歩いてくれ、飼い主さんが止まれば一緒に止まり、歩き出せば一緒に歩き出してくれる。その程度でいいのです。飼い主さんが楽しんで散歩をしていれば、愛犬も自然と楽しくなる。ここではそんなお気楽散歩スタイルを目標にトレーニングに取り組んでいきます。
- リードを一定の長さ(短すぎず長すぎず、決めた長さを変えないことが大事)に持ち、犬と歩き出します。愛犬がグイグイと前にでて、リードが張るか張らないかのタイミングで即座に「ピタッ!」と止まります。
- 急に止まることで犬の首には刺激が伝わり、犬は止まります。ゆっくりだらだら止まるのはよくありません。「リードが張っているから、じゃあ止まるか」ではすでに遅く、「リードが張るか張らないか」のタイミングで「ピタッ!」と止まることが大切です。メリハリのあるはっきりとした行動が犬にとってわかりやすい伝え方です。
- 愛犬が飼い主さんに合わせて止まっていたらリードの張りを少し緩めます。張りを緩めても愛犬が勝手に歩き出さずに止まって待っていたら再スタート、飼い主さんから歩き出しましょう。
- 歩き出す → リードが張る → 「ピタッ!」と止まる → リードの張りを緩め止まっているか確認 → 歩き出す →・・・を反復練習し、リードが張ったらそれ以上歩けないこと、「歩き出す」のを決めるのは飼い主であることを愛犬に繰り返し伝えていきます。
- 引っ張ることが癖になっている犬の場合、トレーニング開始直後は数歩歩いてはリードが張る → 止まる ことを繰り返すことになります。大変ですがここが教えどきでもあるので根気よく、行動にメリハリを持って練習をすることが大事です。
- 練習を繰り返すうちに、愛犬があなたの足の動き(歩くのか、止まるのか)を気にし始めたらとてもいい兆候です。この段階にきたら「リードが張りそうだから止まる」のではなく、リードが張っていなくても急に「ピタッ!」と止まり、あなたの動きを愛犬が意識し、合わせて止まるどうかを確認してみましょう。
- あなたの動きに合わせ、リードが張ることなく愛犬が止まってくれたらしっかりと褒めましょう。褒め方は犬のタイプによって変えます。興奮しやすい子には落ちついたトーンで褒め、食べることが好きな子ならばオヤツを携帯し、ごほうびをあげてもいいでしょう。
- 再スタートで歩き出します。あなたが歩き出した動きに合わせて愛犬が歩き始めてくれたら同じくしっかり褒めましょう。
- 止まる。歩き出す。歩いている最中。愛犬があなたのペースを意識してあわせながら歩いてくれているときはしっかり褒めてあげましょう。
- ピッタリと人の横や後ろを歩かせる事が大事なのではなく、「散歩行動の決定」を積極的に取り入れることで「散歩を楽しみながらも、飼い主の行動も気にして歩ける」よう愛犬に意識させることが大切です。
WAN!ポイント- 散歩中の行動の決定権を飼い主が持つ
- 「歩き出す」「止まる」「右に曲がる」「左に曲がる」。飼い主が止まったら愛犬も止まらせ、飼い主が歩き出したら愛犬も歩き出す。飼い主が右に曲がると決めたから右に行き、左に曲がると決めれば左に行く。犬が行きたいから、犬が止まりたいからに合わせるのはよくありません。「行動の決定権」は飼い主が持っていることを教えてあげることが家庭犬の散歩を楽しむコツです。
- ランダム大作戦
- 「 リードが張るから止まる」を抜け出したあとは、「歩き出す」、「止まる」、この2つをランダムに行います。決まった場所で決まった回数だけやると犬は先読みするので、犬が先読みできないようランダムであることがとても大切です。
日常の散歩中ずっと、止まったり歩いたりを繰り返すのは、実際にはとても大変で、現実的な練習法ではなく、楽しくもありません。今日は1時間の散歩の間に20回ランダムに「歩き出す」「止まる」をやろう程度の自由なアレンジで十分です。 - 完璧は退屈
- 散歩の間中、愛犬がずーっと飼い主を気にし、横をあるくことは散歩ではなくただの行進です。脚側行進(きゃくそくこうしん)という言葉が訓練用語にありますが、それが必要なのは警察犬や訓練競技会に出るためのものであり、家庭犬の散歩には必要ありません。「散歩」は「散って歩く」と書きます。行進では散歩にはなりません。ときにはにおいをかがせ、人や車の通りが少ない場所ではリードを長くし好きに歩かせてみる、広い公園や広場ではリードを張らせて一緒に走ったりするのもいいでしょう。
- 女性や子供でもやりやすい方法で
- 引っ張りがとても強い犬に対しては、前に引っ張ろうとする瞬間に一瞬リードを「ビシッ!」と強く引いて首筋に強い刺激をあたえ、引っ張ることはいけないことであると伝える方法があり、多くの犬にとっては確かに有効です。しかし、引っ張るタイミングや力加減が難しく、トレーナーや家族内の男性はできるケースが多いのですが、女性や小さい子供には心情的、技術体力的にも日常で継続するには難しい点があります。家族間で散歩のルールに差があると犬は混乱するか、一緒に散歩に行く人によって態度を変え始める可能性が強くあります。男性でも女性でも子供でもやりやすく安全な方法、誰がやっても差がでない方法を選択することが大事です。
引っ張りがかなり強い犬には、引っ張り防止用ハーネスの使用をお勧めします。ハーネスをつけた上で引っ張りを未然に防ぎ、道具を使うことだけに頼らず、ハーネスを付け、上手に歩けているときは声をかけて、ごほうびをあげることを反復練習し、引っ張らないで近くを歩いていたらいいことがあると愛犬に思わせることが大切です。 - 一歩進んだ散歩スタイルへ
- 犬が好きな人もいれば、苦手な人、怖いと感じる人もいます。人とすれ違うときはリードを短く持つなどの周りへの気遣いこそが家庭犬の散歩には必要なことでしょう。周りの人への配慮とマナーこそが、犬も飼い主も楽しく周りにも気持ちのいい安全な散歩に繋がります。愛犬が周りの人からどう思われるかは飼い主さん次第です。常に周囲を気遣いできる一歩進んだ飼い主さんを目指しましょう。
次回は、9時間目「宝探しゲーム(探せ)」をお送りします。