「動物の愛護及び管理に関する法律」通称「動物愛護法」は、1999年に制定され、2005年と2013年に改正法が施行されてきました。
そして、2019年6月12日通常国会で改正が成立した動物愛護法。
今回、どんなことが検討され、現行法から何が変わったのか?
そのポイントを知っておきましょう。
まずは、おさらい!2013年施行の改正動物愛護法の変更ポイント
【 終生飼養の徹底 】
動物の所有者の責務として、動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(終生飼養)が明記。
動物取扱業者の責務に、販売が困難になった動物の終生飼養を確保することも明記されました。
また、都道府県等(動物愛護センター等)は、終生飼養に反する理由による引取り(動物取扱業者からの引取り・繰り返しての引取り・老齢や病気を理由とした引取り等)を拒否できるようになりました。
【 動物取引業者による適正な取扱いの推進 】
これまでの「動物取扱業」は「第一種動物取扱業」という名称に変更。
飼養施設を有し、一定数以上の動物を非営利で取扱う場合(譲渡・展示等)には、第二種動物取扱業として届出が義務付けられました。
NPOや愛護団体などの非営利団体を対象にした「第二種動物取扱業者」
キャパシティをオーバーして保護動物を抱え込みトラブルになる愛護団体などへの対応。
犬及び猫を販売する第一種動物取扱業者(犬猫等販売業者)は、犬猫等健康安全計画の策定、個体ごとの帳簿の作成・管理、毎年1回の所有状況報告が義務付けられました。
第一種動物取扱業者(哺乳類、鳥類、爬虫類の販売を業として営む者)は、販売に際してあらかじめ、購入者に対して現物確認・対面説明をすることが義務付けられました。
→インターネット・空輸販売に対する対応。
幼齢の犬猫の販売制限が設けられました。
生後56日(平成28年8月31日までは45日、それ以降別に法律に定めるまでの間は49日)を経過しない犬及び猫の販売又は販売のための引渡し・展示は禁止されます。
【 罰則の強化 】
愛護動物の殺傷
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金→2年以下の懲役又は200万円以下の罰金
愛護動物の虐待・遺棄
50万円以下の罰金→100万円以下の罰金
無登録で第一種動物取扱業を営んだ者
30万円以下の罰金→100万円以下の罰金
2019年動物愛護法改正にむけて検討されたこと
2013年に施行された改正法に規定された、法施行後5年を経過した場合の見直し条項。
・幼齢の犬猫の販売等の規制(販売日齢の規制)
・マイクロチップの装着の義務づけ
そして、近年多発している動物虐待・多頭飼育崩壊・悪質な繁殖業者問題を背景に、
・動物の不適正な取り扱いへの対応強化
・動物取扱業のさらなる適正化
具体的には、悪質な繁殖業者による不適切飼育や動物虐待に対する罰則、生後56日以下の販売禁止、業者の「許可制」、飼育施設の数値規制の導入などが検討されてきました。
2019年動物愛護法改正の4つのポイント
改正前 | 改正後 |
犬と猫「生後49日(7週)」で販売可能 | 犬と猫「生後56日(8週)以下」の販売禁止 |
動物取扱業者「登録制」 | 動物取扱業者「許可制」 |
飼育施設などの基準の明示なし | 飼育施設など基準を具体的に明示 |
マイクロチップの装着義務なし | マイクロチップの装着義務付け |
動物虐待に対する罰則 殺傷:懲役2年・罰金200万円 虐待・遺棄:懲役1年 |
動物虐待に対する罰則の引き上げ 殺傷:懲役5年・罰金500万円 虐待・遺棄:罰金100万円 |
1.「生後56日(8週)以下」の販売禁止
2013年の改正時に制定された販売に関する週齢の制限が一歩進みました。
犬や猫は、親や兄弟姉妹たちと成長する過程で「社会性」を身に付けていきます。
その期間が短くなることで、その後の問題行動は発病リスクが高くなることが懸念されることに配慮した改正。
2.「登録制」から「許可制」へ
ペットショップやブリーダーなど、営利目的で動物を販売・展示する「第一種動物取扱業」の登録制が許可制に変わります。
許可制になることにより、悪質な業者に対して都道府県知事より立ち入り検査なども含めた規制・管理の強化が期待されています。
3. 飼育施設の「遵守基準の具体化」
飼養施設の構造・規模、従業員の数、環境の管理、疾病措置、繁殖の方法や回数など、環境省令で定める遵守基準が付帯的に明示されました。
基準が明示されることによって、劣悪な飼養施設に対する行政指導が有効なものになることが期待できます。
4.「マイクロチップ」の装着義務付け
ブリーダーなど繁殖業者は、装着を義務付け。
一般の飼い主は、努力義務とされています。
飼い主が遺棄するのを防いだり、災害などで飼い主とはぐれた際に、捜索の役立にたつことが期待されています。
マイクロチップの義務化は公布から3年以内に施行されます。
日本は、ヨーロッパ諸国やアメリカに比べて、法律の整備が整っていないことなどから、動物愛護(福祉)「後進国」といわれています。
今回の改正、そして5年後に更なる改正を続け、多くの人たちの動物たちに対する意識と行動が変わることで、動物福祉の国と言えるような日本になることを願っています。