飼い主だから分かってあげたい!
ペットのSOS
Part(4) 腹部ぼうまん
前回に続き、飼い主が注意しなければならないSOSのパート4、腹部ぼうまんについてです。
「あらあ、お宅の○〇ちゃん、おデブちゃんね~」
「そうなのよ、スゴイでしょう、このオ・ナ・カ!」。
最近街中でも太り気味のペットをよく見かけます。ですが、飼い主さんたちはペットの太り過ぎを嘆いているというよりも、むしろ、「しょうがないな」と口では言いながらも、そのコロコロとした愛らしい容姿がたまらないといった方が良さそうな様子。確かに丸まると太っている子は、愛嬌があって可愛さもひとしおでしょう。ですが、ペットの命を守らなければならない飼い主さんとしては、果たしてそれでいいのでしょうか?
肥満は、人もペットも食べ過ぎと運動不足が主な原因です。ついカワイイからといって、求められるままに食べ物を与えていてはカロリーの過剰摂取になるのは当然です。それどころか塩分・糖分・脂分の取り過ぎで、糖尿病になってしまうケースは、Part2でご紹介した通りですね。肥満予防のためにも、栄養バランスのとれたペットフードを適量与え、きちんと運動をさせるように管理していくことは飼い主の責務なのです。
「太っている=かわいいという飼い主さんの甘さが、肥満に潜む病気の発見を遅らせている」
というのは、「みずほ台動物病院」の兼島孝院長。
「最近太ってきたからといって、すぐ病院に相談に見える飼い主さんは、ほとんどいません。うちの子、ちょっと太ったかも…と思ってはいても、大概はそのままにしてしまう。特に腹部ぼうまん。おなかがぽっちゃりしてくるのには注意が必要です」。
試しに、ペットの肋骨のあたりを触ってみてください。正常であれば、皮膚の下にすぐ肋骨に触れることができます。肋骨の上にも脂肪がついているようなら肥満。肋骨になかなか触れられないようなら重度の肥満といえます。背骨でも分かります。背中を触ると背骨のゴツゴツした感じが分かりますが、肥満の子は背骨の両脇に脂肪が付いているので、ゴツゴツ感がありません。
避妊や去勢手術後に太り出す以外で、おなかだけが膨れてきて、逆に背中は背骨がゴツゴツと触れるように痩せてくるとなると、事態は深刻です。心臓の病気や肝臓、腎臓、すい臓などのガンかもしれません。
ご存知の方も多いかもしれませんが、犬の死亡原因のトップはガンです。イヌが最もかかりやすい乳腺腫瘍では、胸から下腹部にかけて広がっていく多発性のタイプが多く見られます。ガンの場合、一般的には切除手術を行いますが、手術ができない場合には放射線療法や抗がん剤の投与を行ない、いずれにしても高額な治療費がかかる事態に。
またネコでは、「猫リピドーシス」(脂肪肝)も要注意。太りすぎのネコちゃんが、食欲が落ちてだるそうにしていたら、脂肪肝になっているかもしれません。体重も徐々に落ちてくるので、「ダイエットの成果!」と勘違いして、ますます発見が遅れ重症化することもあります。
このように、飼い主さんが大したことはないと見過ごしているうちに、ペットの体内では恐ろしい病気がひたひたと進行しているのです。ペットたちが、「ここが痛いワン」「最近どうも調子が悪いニャ~」と、ひと言でも言ってくれれば、どんなに救われるかしれません。しかし、言葉では意思疎通ができないすき間を、ペットと飼い主は心を通わせながら互いに思いやっていくしかないのではないでしょうか。
「飼い主さんに愛情があれば、ペットたちのSOSは必ずキャッチできる。飼い主さんの“カン”がペットの命を救う」と兼島院長は言います。「あれっ?」「何かおかしいな」とカンが働くというのです。でも、つい忙しさに紛れて、いつの間にか忘れてしまうのだとも。
「ですから、私は飼い主さんに、よく“ほかに不安なことはありませんか?”と聞くんです。ペットを診察する以外に、いかに多くの情報を集めるかが、その後の治療に大きく影響してきますからね」。
みなさんも、ペットと暮らす中で、気づいたこと、ふと頭にひっかかったことなどを日時とともにメモに書き残すよう習慣づけてみてはいかがですか? 後で読み返してみて、役に立つことが必ず出てくるはずです。それらの中に、医師にとって大切な情報が含まれているかもしれません。大切なペットだからこそ、あなたの中にはたらいたカン。それこそが、ペットたちからのSOSのシグナルなのかもしれませんね。
Copyright © GORON by ペット共生アドバンスネット All rights reserved.