ペットが感じるストレス
前編
犬猫の性質から分かること
ペットの犬猫たちも人間と同様に生活の中でストレスを受けます。人間には見極めづらいかもしれませんが、現代のペットは人間社会の中で暮らしていることで、ストレスも多様化していると思われます。今回は犬猫それぞれの性質を踏まえて、彼らが受けやすいストレスについて挙げてみましょう。
「ペットのストレスについては、病気、けがなど体の不調などから来る内部からのものと、人間や動物を含めた周辺環境から来る外部からのストレスがあります」と、オリーブ動物病院(東京都国分寺市)の有薗浩見院長は大きく分類しています。
動物病院にやってくるペットたちの場合は、大抵が病気やけがなど体調が原因で思うように動けないストレスを抱えている場合が多いようです。吠えたり、いつもと違う場所でトイレをしたり、利尿剤を服用中でトイレが間に合わず粗相をしたりと、いつもと違うそのような行動の中には、病気や病気の治療、ケガ由来のストレスの場合があります。こういったストレスは完治すれば回復するものです。
吠えたり鳴いたりするのは、飼い主さんに何かを伝えたいときや、して欲しいことがあるときのサインです。体のどこかが痛いとか具合が悪いせいで鳴いたり手足をばたつかせたりしていたら、対処してほしいという欲求の場合があります。また、ご飯が食べたい、犬であれば散歩に行きたいなど日常生活上の欲求の場合もあります。
「一見何もなさそうなのに鳴いている場合は、体調不良や病気など、大抵なんらか悪いことであるほうが多いです。放っておくとよくありません。すでに鳴きもせず、うずくまってじっとしているようなら、かなりの重体や末期状態である可能性が高いので、サインのあるうちに飼い主さんが異変に気付いてあげられるかどうかが非常に重要です。」(有薗先生)
2016年度の統計(一般社団法人ペットフード協会)で、犬猫のおもな飼育場所を見ると、犬は「散歩・外出時以外は室内」が約45%で最多、続いて「室内のみ」が約39%で、室内飼いベースを合わせると84%にもなります。
猫も「室内のみ」が約71%で最多となっており、ペットたちはほとんど1日中、家の中で生活している状況にあります。そのため、飼い主さん家族や、家にいる同種・異種動物と接している時間も長くなっているということが分かります。
ただし、近年では1人世帯や少人数世帯が多数派ですので、日中は誰もいないという家庭も少なくなく、家でペットだけがお留守番ということが多くなっています。人との絆が非常に強く、基本的に「飼い主さん大好き!」な犬にとっては、一人ぼっちのさみしさや不安からストレスを感じやすいことでしょう。逆に飼い主さんへの依存度が低く、元々マイペースで単独行動をする猫であれば、そういった類のストレスを受けることは少ないでしょう。
今のペットの飼育環境を前提にして、犬にとっての外部から来るおもなストレスはどのようなものでしょうか。
「ペットの犬にとって、最も大きいストレス源は飼い主以外の人間だと思います。飼い主さんの家族を含めたさまざまな訪問者、宅配業者など外部の人も含まれます。また、周囲の騒音もストレスになります。車の音、工事の音、雷の音など、人間よりはるかに聴覚が優れているぶん、犬には非常に不快で辛いものになり得るでしょう。それから、多頭飼いをされている家では、ほかの犬や異種動物がストレスになります。家の外を通りがかるよその犬や異種動物に対しても同様です。」(有薗先生)
特に犬は、人間やほかの犬、異種動物など他者からのストレスを受けやすいというのがポイントのようです。
一方の猫はどうでしょうか。犬との大きな違いは環境変化によるストレスで、その中でも縄張りに関することのようです。
「猫は、自分があとから来た場合でも、先住の場合でもほかの猫からのストレスを受ける可能性が高いです。なぜなら、群れ動物ではなく自分の縄張りがあるため、自分が新しい環境に移った場合も、多頭飼いでほかの猫が自分の縄張りに入ってきた場合も大きなストレスを受けます。基本的に猫は、非常に警戒心が強く神経質なのが特徴です。」(有薗先生)
もちろん複数飼いで上手くいく例も多いですが、猫にとっては単独で室内飼いのみという環境が最も安心できて無難なのかもしれません。
全般的に、ストレスについては犬猫ともに個体差が大きいようです。年齢によっても変わってきます。次回は、犬猫の性質を踏まえつつ、心因性のストレスや飼育環境とその変化によるストレスについて考えてみましょう。
取材協力:オリーブ動物病院(東京都国分寺市)http://www.olive-ah.com/index.htm
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