乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話、今回は「馬は怠けるか?」というお話です。
人との関わりの中で良くも悪くも、馬は勤勉であったり怠けがちになったり、やる気に満ち溢れたり、または気力を失ったりしてしまいます。
馬にもある!右脳タイプと左脳タイプ・外向的と内向的
ナチュラルホースマンシップの概念で馬の資質を分類すると、右脳タイプ左脳タイプ、外向的内向的の軸があるのをご存知でしょうか。
《 右脳タイプは、右脳を優先して働かせるタイプ 》
本能で反射的に動きます。
《 左脳タイプは左脳を優先して働かせるタイプ 》
思考的で考えを元に動きます。
《 外向的な馬 》
他者との関わりに関心が向き、活発で精力的なタイプです。
《 内向的な馬 》
自分自身に関心が向き、控えめで内省的なタイプです。
左脳タイプで内向的な馬にLazyな(怠けもの)な馬が多いと言われたりします。
しかし、右脳タイプの馬にも左脳を使うようにトレーニングしたり、その馬の資質に合わせて必要な苦手は克服したりなど、様々な経験からこの軸は変わっていく可能性のあるものです。
その観点からのお話はまた別の機会にしたいと思いますが、今回は普段活発な馬が怠けている様に見える時の原因や対処法をお話してみたいと思います。
時々、私たちと同じように馬も怠惰に陥っているように見えることがあります。
あるいは、まったく元気のない馬がいるかもしれません。
無気力に見えて、人間が要求することを実行するエネルギーがありません。この行動にはどんな理由があるのでしょうか?
健康的な問題の有無をチェック
〈 健康上問題がある可能性のある馬 〉
普段は活動的で怠惰ではない馬が、何らかの活動に対する熱意を突然低下させる場合は、根本的な健康状態が原因である可能性があります。
馬の行動が急速に変化する場合は、まず健康的な問題がないかをチェックします。
- 軽度の疝痛
- 跛行
- 病気
- PSSM (多糖類蓄積性ミオパチー)
- クッシング病の初期兆候
- 胃の不調
- 栄養素のアンバランス
体重の確認をしてみましょう
〈 推奨される体重よりも重い可能性のある馬 〉
他には、常に怠けているように見える馬や、熱心ではあるが活動中にしばしばエネルギーを失う馬もいます。
いつも怠けているように見える馬は、推奨される体重よりも重い体の状態にあることがよくあります。人間の管理下の馬の約 51% が過体重で、推奨される体調スコアを超えている事が多いです。
この余分な体重を背負うことにより、より多くのエネルギーを消費する必要があるため、人間が要求する活動を実行することがより難しくなります。
そうするとパフォーマンスが悪く、「怠惰」に振る舞っているように見えます。
こういう馬の場合は体重を適正体重にまで落とす事が必要です。
食事の内容を見直す
〈 食事内容の影響を受けている可能性のある馬 〉
次に、パフォーマンスは良いが、調教中や本番中に突然エネルギーが低下してしまう馬もいます。
これは、食事の内容の影響を受けている事があるそうです。
一般に、食事中のエネルギーは糖類/でんぷん(炭水化物)、脂肪、タンパク質、繊維から得られます。馬はエネルギーのほとんどを炭水化物と脂肪から摂取します。
これらの馬がこのエネルギーをどのように活用するかは、馬のパフォーマンスに直接影響します。
- 炭水化物は「速く燃焼する」エネルギー源と考えられています。それらはすぐに馬に取り込まれ、細胞にエネルギーを供給します。レースのような激しく素早い活動をする馬の場合、炭水化物を多く含む食事が馬のニーズに応えるのに適しています。
- 脂肪は「ゆっくり燃焼する」エネルギー源と考えられており、実際には炭水化物よりもエネルギー密度が高くなります (約 2.5 倍)。しかし、それらは馬によって代謝され利用されるため、より長く持続するエネルギー源となります。
したがって、運動やパフォーマンスで体力を失うパフォーマンス馬には、脂肪分が多く炭水化物の少ない食事がより適切という事です。
運動前の食事の時間帯を見直す
〈 運動前に食事をした時間帯に原因がある可能性 〉
運動中に怠けそうになる馬についての最後の考慮事項は、仕事前に最後に飼付をした時間帯が原因である可能性があります。
食後、馬の血中のインスリンと糖分(グルコース)レベルは、食後2時間あたりで急上昇します。
この時間帯に運動をすると、馬は血液中のブドウ糖をすぐに利用してしまい、よく「シュガークラッシュ」(低血糖)と呼ばれる状態に陥ります。
その結果、活動を維持するために必要なエネルギーが失われます。したがって、一般的には、運動の少なくとも 4 時間前に、馬に適切な食事を与えることが推奨されています。
なかなか午後の運動時に4時間前に飼付をしておくというのも、乗馬クラブなどでは難しいかもしれまんが、どうしてもエネルギー切れで怠惰になりがちな馬がいたら、食事の内容や、時間帯などで工夫してみるのも良いかもしれませんね。