しつけ・ケア

愛犬とのしつけエクササイズ 第7回.子犬のトイレトレーニング

「愛犬とのしつけエクササイズ」

7時間目 「子犬のトイレトレーニング」

里見 潤(ドッグコーチ)


  「トイレトレーニング」はハウストレーニング、行動欲求を満たす遊び方を教えることと並び、人と犬が快適に暮らすために大切なトレーニングです。しかし、犬には「決められた場所でトイレをする」という習慣はなく、「寝床以外ならどこでトイレしてもいい」ことが狼から人間の手によって作り替えられてきた犬に残っている常識(習性)なのです。
  部屋のあちこちでするからとイライラし、叱ってしまいたくなる、思わず止めたくなる気持ちはわかります。しかし、習性としてやっている犬には悪気はまったくありません。人間の都合で決められた場所でトイレして欲しいなら、失敗を叱るのではなく、成功しやすい環境作りと、犬に伝わる方法で手間と時間をかけ、教えてあげることが必要です。

用意する道具

○トイレトレーとシート
○ハウス、ケージ又はベッド(寝床)
○サークル
○水のみ容器
○(一人遊び用のオモチャ)


トイレトレーニング3つのコツ

  • 失敗を未然に防ぎ、成功をさせて褒めて教えることと、そのために必要な犬の習性に合った環境作り
  • 愛犬のトイレタイムスケジュールを知る
  • 飼い主さんの気持ちのゆとりや余裕が成功に繋がる

  1.   犬は「自分の寝床は汚したくない」「寝床から離れた場所にトイレをしたい」「他の犬のおしっこの上に自分のにおいをつけたい」という習性を持っています。これを活かさない手はありません。居心地のいい寝床(ハウス)とそれを囲むフリースペース(サークル)を設置、寝床から一番離れた場所にトイレトレーを置きます。
      ハウストレーニングが済んでいる場合、寝床の扉を閉め、居心地のいい場所で休ませる時間を作りましょう。犬は寝床を汚したくない習性があるのでハウスの中にいるときは「膀胱にオシッコをためよう」とします(膀胱が空の状態からオシッコを我慢できる時間の目安は「月齢+1時間」 例えば、生後3ヶ月の子犬は3+1で約4時間)です。ハウスで休ませながら膀胱にオシッコをためてもらいましょう。

  2.   愛犬がトイレをしたくなるタイミングが分かっていればシートへの的確な誘導ができます。子犬は一般的に、睡眠から起きたあと、食事をしたあと、水分を取ったあと、運動をしたあとにトイレをしたくなります(個体差はあります)。我慢できる時間と合わせて、トイレをしたくなるタイミングを見計らい、ハウスの扉を開け、シートへ誘導しましょう。
  3.   トイレが成功しやすいようトイレシートは広く広げておきます。愛犬がトイレを成功したらしっかりと褒め、そのあと好きなごほうびをあげましょう。
  4.   犬も生き物です、教える途中では成功も失敗もあります。なかなかトイレを覚えてくれず、失敗が続くと飼い主さんに気持ちのゆとりがなくなり、失敗を強く叱ってしまったり、飼い主さんの焦りや不安が愛犬に伝わり、落ち着いてトイレをする状況をなくしていることもあります。1回や2回の成功でトイレを覚えるわけではないように、数回の失敗でトイレを間違って覚えてしまうこともありません。「育児ノイローゼ」ならぬ「育犬ノイローゼ」とならないためにも家に子犬を迎える前に犬の習性を勉強しておくこと、しっかりとした準備、環境作りをしておくことが必要でしょう。それが飼い主さんのココロのゆとりに繋がり、トレーニングもよりうまくいくことでしょう。

■絶対にやってはいけないこと

トイレの失敗を叱るのは百害あって一利なし
  トイレの失敗を叱るとどういうことが起こるでしょうか。飼い主は、愛犬が間違った場所でトイレをしたことを叱っているつもりでも、寝床以外のどこでやってもいいのが常識の子犬にとっては「排泄行為そのものを叱られた」と認識する、もしくは「何で怒られたのかわからない」と感じる可能性が非常に高いのです。するとどうなるか。叱られる → 「排泄行為を叱られた」と認識した子犬は飼い主が見られないような隅で隠れてトイレをしたり、飼い主がいなくなったときにトイレをするようになってしまうこともあります。また、「トイレの失敗は直後に叱れ、失敗をした場所に子犬を連れて行って鼻を押し付けなさい」というしつけ法がありますが、それは間違っています。
※トイレの失敗には・・・
  子犬が目の前で失敗したとき、思わず声が出てしまう気持ちはわかりますが、そのときは「グッ」とこらえて何も言わず無言を通し、あとから何気なく片付けるようにしましょう。トイレの失敗は素知らぬ顔で犬の印象に残らせないようにし、成功した時はたくさん褒めて、ごほうびを一粒あげる(遊び好きな子ならオモチャ遊びをする)と子犬は「シートでしたらかまってくれて(褒められて)、美味しいごほうびまでくれた。シートでやった方が得かも」と考えるようになっていくでしょう。成功に導き、繰り返し褒めていくことで段々と確率を上げていきましょう。
※成功確率が上がってきたら・・・
  少しづつフリースペースを広くしていき、途中2、3回連続で失敗が続いたら1段階前に戻し、成功が続いたらまた広げるようにしていきましょう。

WAN!ポイント

ほかの犬のオシッコは優れた誘導手段
  犬には「他の犬のオシッコの上に自分のにおいをつけたい」という習性があります。ご近所で犬を飼っている方からオシッコの付いたトイレシートをもらってきて、やってもらいたいという場所にオシッコ付きシートを設置しておくと誘発因子として成功を導く助けになります。ご近所からオシッコ付きシートをもらうことで先輩飼い主さんから助言をもらったり、うまくいかないことを聞いてもらうだけでも飼い主さんのココロのゆとりに繋がるのでお勧めです。

  次回は、8時間目「散歩トレーニング(引っ張る犬)」」をお送りします。

愛犬とのしつけエクササイズ第6回
オモチャ遊びとちょうだい

愛犬とのしつけエクササイズ第8回
散歩トレーニング(引っ張る犬)

里見 潤

里見 潤

投稿者の記事一覧

(さとみ じゅん)

ドッグコーチ

1975年、横浜市生まれ。2004年、警察犬訓練校に入学、出張トレーニング会社を経て、保護活動団体「Dog shelter」の専属スタッフとして、保護犬のトレーニング、一時預かり家庭と里親家庭の間に入り、アフターフォローを担当する。
2012年7月より独立。出張、及び預託トレーニングを柱に活動する傍ら、保護犬の一時預かりを継続中。
 
日本警察犬協会公認訓練士
ジャパンケネルクラブ公認訓練士
東京都動物愛護推進員

 保護犬預かりを主に、トレーニングのことを書いている里見潤さんのブログ
 「イヌと歩けば。」http://setahachidog.blog.fc2.com

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