乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回は、馬同士の相性や友達関係についてご紹介します。
犬や猫と暮らしていると「この子は、あの子のことが好きなんだな」と感じる場面がありますよね。
いつも一緒に寝ていたり、片方がいなくなると探したり。反対に、どうしても相性が合わない相手がいることもあります。
では、馬にも「友達」はいるのでしょうか。
答えは、います。
もちろん人間のように「親友」という言葉を使うわけではありません。しかし馬たちを観察していると、一緒にいたがる相手や安心できる相手、逆に距離を取りたがる相手がいることがよく分かります。

馬は群れで生きる社会的な動物
馬は本来、群れで暮らす動物です。
野生の馬たちは、一頭で行動するよりも仲間と一緒にいることで身を守ってきました。誰かが周囲を警戒し、誰かが休み、危険を察知すれば群れ全体で行動する。そんな生活を長い歴史の中で続けてきたのです。
そのため馬にとって仲間の存在はとても重要です。
ただ一緒にいるだけではなく、
- 安心するため
- 安全を確保するため
- 群れの中での立場を知るため
といった意味があります。
馬は見た目以上に社会性の高い動物なのです。
馬同士にも仲良しの組み合わせがある
乗馬クラブや牧場で馬たちを見ていると、興味深い関係性が見えてきます。
放牧地に出るといつも同じ馬の近くにいる。
馬房が離れると鳴いて呼び合う。
一頭が移動すると、もう一頭も後をついていく。
そんな馬たちが実際にいます。
もちろん全ての馬がべったり仲良しというわけではありません。
しかし、「この2頭は一緒にいると落ち着くんだな」と感じる組み合わせは確かに存在します。
人から見ると、とても微笑ましい光景です。
片思いのように見える馬の関係性
馬同士の関係には、少し面白いものもあります。
片方はいつも相手のそばにいたがるのに、もう片方はそれほど気にしていない。いつも追いかけている馬と、少しそっけない馬。
まるで片思いのように見えることもあります。
もちろん馬の本当の気持ちは分かりません。しかし日々観察していると「この馬はあの馬が好きなんだろうな」と感じる場面は少なくありません。
一方で、相性があまり良くない組み合わせもあります。
- 近づくと耳を伏せる
- ごはんの時間に強く主張する
- 放牧地で距離を取る
こうした様子からも、馬同士にそれぞれの距離感があることが分かります。
仲良しでも上下関係は存在する
馬の群れには、ある程度の上下関係があります。
これは単純に強い・弱いという話ではありません。
ごはんを食べる順番や居場所の選び方、相手との距離感など、日常のさまざまな場面で関係性が表れます。
仲良しに見える馬同士でも、よく観察すると片方が少し主導権を持っていることがあります。
ただし、上下関係があるからといって怖い関係というわけではありません。
お互いの立場や距離感を理解しているからこそ、落ち着いて一緒に過ごせることも多いのです。
仲間がいることで安心できる馬たち
馬は仲間の存在によって安心します。
初めての場所へ行ったときも、顔なじみの馬が近くにいるだけで落ち着くことがあります。
逆に、仲間から離れると不安になって鳴いたり、落ち着きを失ったりする馬もいます。
以前、ダックとムックという馬がいました。
ダックは群れの中でも存在感のあるボス的な馬で、ムックは一頭で行動するのが少し苦手なタイプでした。
ムックはダックの後ろにいると安心するようで、放牧中も移動中もいつもダックについて歩いていました。
ダックが特別なことをしているわけではありません。ただそこにいて、前を歩いているだけです。
しかしムックにとっては、その存在そのものが安心材料だったのでしょう。
馬にとって頼れる仲間がいることは、安全に暮らすための大切な要素なのです。
人は馬の「友達」になれるの?
では、人間は馬にとって友達になれるのでしょうか。
馬同士の関係と全く同じではありません。人は馬ではないため、群れの仲間そのものになることはできません。
しかし、馬にとって「安心できる存在」になることはできます。
- いつも落ち着いて接してくれる人
- 無理やり嫌なことを押し付けない人
- 分かりやすく伝えてくれる人
- 馬のサインに気付こうとする人
そうした人に対して、馬は少しずつ心を開いていきます。
近づいてきたり、表情が穏やかになったり、そばでリラックスして立っていたり。
それは馬なりの信頼の表現なのかもしれません。

馬の友達関係を観察してみよう
馬にも好きな相手がいます。
安心できる相手がいます。
そして、少し苦手な相手もいます。
そんな関係性を見ていると、馬はただ大きくて力強いだけの動物ではなく、とても繊細で社会性の高い動物だということが分かります。
誰と一緒にいると落ち着くのか。
どの馬のそばで表情がやわらぐのか。
どんなときに仲間を呼ぶのか。
そんな視点で観察してみると、いつもの馬たちが少し違って見えてくるかもしれません。
馬にも、ちゃんと関係があります。
そして、その関係を見守ることもまた、馬を知る楽しさのひとつなのです。






























