犬を飼えば誰でも1回は抱く、「しつけ」に関する悩み。散歩中に犬に振りまわされる飼い主さんもよく見かけます。かわいい愛犬を自由に育てたいと思うあまり、ついつい甘やかしてしまう方も多いはず。しかし、しつけは決して犬を苦しめるものではありません。むしろ、しつけることで飼い主との関係が良くなり、周囲への配慮ある生活を送ることができます。
ここでは、ドッグトレーナーで、警察犬訓練士の資格もお持ちの里見潤さんの監修のもと、すぐに実践できるしつけの方法をご紹介していきます。これから犬を飼う人も、しつけに苦戦してきた人も、快適なペットライフを送るための第一歩を踏み出してみませんか。
第1時間目は、「スワレ」のしつけエクササイズです。
「スワレ」は、しつけ本でも最初に載っているベーシックなコマンドです。日常生活の中で使用頻度が高いだけではなく、犬の心拍数を下げ、落ち着かせる効果もあり、吠えやすい犬や、興奮しやすい犬のコントロールにも応用できるコマンドです。
- ドッグフード、おやつなど、愛犬の好きな食べ物を1粒手(誘導に使う利き手)に取り、手の中にあるおやつのにおいを愛犬にかがせます。
- おやつを持った手を犬の鼻先に位置し、鼻先 → 目 → 頭頂へとゆっくりと滑らすように手を動かし犬の目線を上げさせます。
- 立った姿勢でいる犬は目線が上がると重心が腰からお尻にかかってきます。テコの原理で片方(目線)が上がると片方(お尻)が下がり、自然と腰が落ちて「スワレ」の姿勢になります。「スワレ」の姿勢になったら、ほめ言葉をかけた後にごほうびをあげましょう。
ハンドシグナル(「誘導おやつあり」)が出る → 目線が上がる → 腰が落ちて「スワレ」。
これを何度も繰り返し反復練習することで、まず「スワレ」の形を覚えさせましょう。
- 「誘導のおやつあり」での「スワレ」ができるようになったら、誘導のおやつをなくしていきます。
誘導する手とは反対のもう片方の手にごほうびを持ち、ハンドシグナル(誘導おやつなし)だけで「スワレ」 → もう片方の手からごほうび。
手順3と同じく繰り返し練習します。
- それもできるようになったらどちらの手にもごほうびは持たずにできるように練習します。
誘導に使うごほうびをなくしていくときは、慎重に段階を踏んでステップアップするのが大切です。誘導おやつをなくしていくステップの途中で、うまくいかなくても慌てないでください。
1つ前のステップに戻って2、3回練習してから再度トライしましょう。しつけエクササイズは犬が楽しむためにも、飼い主さんが犬よりも楽しみながらやるのがもっとも大事なコツです。
- 家庭犬の「スワレ」の第1目標として、室内で誘導のおやつなしで「スワレ」ができるようにしましょう。
WAN!ポイント
- お腹を空かせた状態をつくりフードやおやつへの反応をよくしましょう。
- 誘導に使うフード、おやつは愛犬が好きなものを使いましょう。ドッグフードが好きな犬はドッグフードでもよし、フードでは犬の反応がいまいちのときは犬用チーズ、ジャーキーなど、愛犬がより「くぎ付け」になるごほうびを使いましょう。
- 初めて教えるときは、他の誘惑や刺激がなく愛犬が落ち着いた気持ちで練習に集中できるよう、愛犬が普段慣れている生活住居内で練習しましょう。
ケーススタディ
- 後ろに下がったり、立ち上がったりしてしまう場合
オスワリをさせたい気持ちが強いために、誘導の手を犬側に押し込みすぎると、犬が体ごと後ろに下がってしまいます。逆に目線を上げることを意識しすぎると、誘導の手をいつのまにか垂直に近い角度で上げてしまうことがあります。手を真上に上げてしまうと、愛犬はその手を追って後ろ足でチンチンしてしまうこともよくあります。誘導の手を鼻先から目を通って頭頂をなぞるようにゆっくりと動かし、重心を腰からお尻にかけ、腰を落とすことを意識して練習してみましょう。
- 腰がなかなか落ちない(スワレの形にならない)場合
犬によっては目線が上がり重心が後ろにかかると、腰を落とすのではなくそのままバックしてしまったり、なかなかごほうびがもらえないことで「なんだもらえないのか」と諦めてしまったりする犬もいます。
最初から「スワレ」の形を求めず、目線が上がった時点でごほうびをあげることを何度か繰り返しながら、誘導の手に少しづつ角度をつけていき腰を落とす姿勢(スワレ)へと導きましょう。
犬も1頭1頭性格やタイプが違い、同じ行動を教えるにも犬によって向いている方法、向いていない方法があります。お互い無理なく練習できるよう愛犬に合っている方法を見つけていきましょう。段飛ばしはせず、1段1段、階段をのぼっていくようにステップアップしていくことがうまくいくためのコツといえるでしょう。