乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
12月なのでクリスマスのお話をさせていただきます。

昔のクリスマスは“馬がソリを引いていた”って知ってましたか?
「サンタクロースがやってくる」
…と聞くと、誰もが思い浮かべるのは、トナカイが引くソリですよね。
赤鼻のルドルフを先頭に、雪の夜空を駆けてくる、そんなイメージがすっかり定着しています。
でも実は、もともと“ソリ”を引いていたのは馬だった、って知っていましたか?
■ 馬そり文化は、北国の冬の定番だった
トナカイのソリが登場するのは、アメリカの詩「クリスマスの前の晩に」(1823年)が最初とされています。
でもそれ以前、ヨーロッパやロシア、北米の冬の移動手段として一般的だったのは、“馬そり”。
雪に覆われた道を馬車で走るのは難しいため、車輪の代わりにソリを装着した「スレイ(sleigh)」という馬車が使われていました。
寒冷地では、馬の蹄にも滑り止めの工夫を施して、馬が雪道を滑らず走れるようにする技術もありました。
つまり、「冬の乗り物=馬そり」は、実用としてはトナカイよりずっと身近だったんです。
■ 馬そりは“あこがれ”の存在でもあった
19世紀のヨーロッパでは、装飾の美しい馬そりがステータスの象徴でもありました。
毛皮の敷かれたシート、木彫りの装飾、銀色の鈴の音…
馬に豪華な馬具をつけ、ソリを着飾って街を走るのは、まさに“冬の社交場”。
今でもドイツやオーストリアなどでは、観光用の馬そりがクリスマスシーズンの風物詩として活躍しています。
雪の中を鈴の音を響かせて進む馬そりは、なんとも幻想的。
その光景は、まさに「絵本の中のクリスマス」がそのまま現実になったようです。
■ 馬×鈴の音=クリスマスの原風景
馬そりといえば、“鈴の音”。
この組み合わせは、今もなおクリスマス音楽の中に生きています。
あの有名な曲「ジングル・ベル(Jingle Bells)」の“ジングル”は、まさに馬そりの鈴の音のこと。
歌詞にも「ワンホース・オープンスレイ(1頭立てのソリ)」という言葉が出てきます。
つまり、「ジングルベル」はもともと“馬そりの歌”だったんです。
■ トナカイ以前に、馬がいた
子どもたちの夢を乗せて雪道を進むソリ。
そのソリを引いていたのは、ずっと昔から、私たちがよく知る“馬たち”だったのかもしれません。
もちろん今では、サンタといえばトナカイが主役。
でもその裏側には、実用として人々の暮らしを支え、冬をともに走ってきた馬たちの姿があります。
もしかしたらクリスマスの夜、ジングルベルが聴こえたら…
そこには、トナカイじゃなく、凛々しく立った一頭の馬が、銀の鈴を鳴らしているかもしれません。
サンタを乗せたその馬は、真っ白な雪道を静かに、優しく駆けていく、馬好きさんの夢の光景ですね。






























