乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回は馬からの「嫌のサイン」についてです。
馬に乗っているとき、あるいは日常の手入れの中で、
「ちょっと様子が変だな」
「なんだか機嫌が悪いのかな」
そう感じたことはありませんか?
でもそれが、ただの“気分”ではなく馬からの「いや」「やめてほしい」のサインだったとしたら?
馬は言葉を話しません。
でも、いつだって全身を使って、私たちに何かを伝えようとしています。
今回は、騎乗中によく見られる“いや”のサインを取り上げながら、その背景にある馬の気持ちを、少しだけ覗いてみたいと思います。

◯よくある“いや”のサイン5つ
まずは、よく見られるサインからご紹介します。
どれも一見「わがまま」や「反抗」に見えがちですが、実はSOSや困惑のサインかもしれません。
・耳を絞る
→ 怒りや不快感、強い警戒心。後方への注意を向けていることも。
・ 舌を出す・歯ぎしりする
→ ストレスや混乱。ハミや手綱の使い方に対する反応であることも多いです。
・脚扶助に対して歩様が乱れる
→ 指示がわかりにくい、不快、混乱している可能性があります。
・ 尻尾を強く振る
→ イライラ、過度な刺激への反応、あるいは拒否の意思表示。
・後肢で蹴ろうとする
→ 明確な拒否反応。これ以上やめて、という強い警告です。
これらの行動を、「言うことをきかない」「しつけがなっていない」と捉えるのではなく、
「なにを伝えたいのだろう?」と読み取ろうとする姿勢こそが、信頼関係の第一歩です。
◯馬の“癖”ではなく、“伝えようとする行動”
たとえば、脚を入れたときに尾を大きく振ったり、顔をしかめたりする馬がいたとします。
このとき、「ちゃんと動け!」と強く扶助を重ねてしまうと、馬はますます混乱します。
もしかすると、
・合図が強すぎる
・同時に複数の合図を出している
・体がこわばっていて動けない
・そもそも今日のコンディションがよくない
そんな背景があるのかもしれません。
馬はとても繊細です。そして、人の意図を一生懸命汲み取ろうとしています。でも、どうしても“いや”と感じる瞬間がある。そのときに出してくれる“サイン”は、信頼してくれているからこそ、見せてくれるものでもあるのです。
◯観察の目を育てる
大切なのは、観察することです。
サインが出ているとき、自分はどんな関わり方をしていたのか?
馬の変化を、「何があった?」の視点で見てみる。
・タイミングや強さはどうだった?
・馬の呼吸は浅くなっていない?
・道具の当たり方に問題はない?
・周囲の環境(風・他の馬・音)はどう?
こうした「ひとつ戻って見直す視点」は、ライダーの大切なスキルのひとつです。

◯関係性は、“理解しようとする姿勢”から
馬との信頼関係は、思い通りに動かすことから始まるわけではありません。
むしろ、“思い通りにならない瞬間”にどう向き合うかで決まります。
馬が困っているとき、伝えようとしているとき、それを“受け取ろうとする姿勢”を見せること。そして、自分自身の関わり方を柔らかく見直す余白を持つこと。
それこそが、信頼への出発点です。
馬は、ちゃんと伝えてくれています。
その声は小さく、ささやかだけど、全身で語りかけてくれています。
だから、まずは見ること。
気づこうとすること。
そして、ときには「自分のやり方」にも、問いを投げかけてみること。
その小さな一歩が、馬との関係を大きく変えるきっかけになるはずです。






























