しつけ・ケア

馬の“冬じたく”ってなにをするの?

秋も深まる頃、犬や猫と暮らしていると「そろそろ寒さ対策かな?」と感じることがありますよね。
 ふわっとした冬毛に変わってきたり、ブランケットやペットヒーターを出したり。
 季節の変わり目は、動物たちの暮らし方も少しずつ変わっていきます。

では、馬はどうでしょうか?
 実は馬にも、“冬じたく”と呼びたくなるような準備があるんです。

■ 馬も冬毛に生え変わる

馬は、季節の変化に合わせて体の毛が生え変わる動物です。
 夏の間は短くてつやのある“夏毛”で過ごしますが、秋が深まるにつれて、もこもことした“冬毛”に生え変わっていきます。

この変化は、気温だけでなく「日照時間」でもコントロールされていて、日の短さを感じることで、体が自然と冬に備えるスイッチを入れているんですね。

冬毛は見た目も手触りも大きく変わるので、季節の移ろいを感じる小さなサインでもあります。

■ 犬や猫よりも“外で暮らす”馬たち

犬や猫の多くは、室内で過ごすことが多いですよね。けれど馬は、屋外の馬場や放牧場で過ごす時間が長い動物。そのぶん、気温や風、雨や雪といった天候の影響もダイレクトに受けます。

そんな馬たちを寒さから守るために、人が用意するのが「馬着(ばちゃく)」です。
 これは、いわば馬専用のコートのようなもので、背中から腰、肩や首までを覆ってくれる防寒アイテム。

種類もいろいろあって、

  • 軽めの“薄手タイプ”(昼間の寒さ対策)

  • 裏起毛つきの“厚手タイプ”(夜間や真冬用)

  • 雨や雪を弾く“防水馬着”
    など、季節や馬の体調によって使い分けられます。

■ でも、毛があるのに“着せる”の?

「冬毛があるなら、馬着なんていらないのでは?」と感じる方もいるかもしれません。
 確かに、馬は本来とても寒さに強い動物です。

でも実は、今の乗馬クラブなどで暮らす馬たちは、飼育環境の影響で冬毛があまり生えにくくなっていることもあるんです。
 夜間に厩舎でぬくぬく過ごし、日中もあまり雨風にさらされない生活が続くと、体は「冬モード」に入りにくくなります。

また、馬場で汗をかいたあとに急に冷えると体調を崩すことも。
 そういった理由から、馬着を使って温度調整をサポートしてあげるのは、今ではとても一般的なケアになっています。

■ 「寒そうにしてるサイン」ってあるの?

犬や猫が寒がって丸くなったり、震えたりするのを見たことがある方も多いと思います。
 では、馬は…?

実は馬は、寒さに対して「分かりやすいサイン」をあまり出さない生き物です。
 寒くても黙って耐えてしまうタイプで、じっと動かず立っていることが多いです。

でもよく見ると、

  • 体を小刻みにふるわせている

  • 耳の先や鼻がキンと冷えている

  • 体の筋肉がこわばっている

といった細かな変化で、「寒いよ」のサインを出していることもあります。だからこそ、人が“観察する力”を持っておくことが大事なんですね。

■ 馬にとっての“快適な冬”って?

馬にとって快適な冬とは、 ただあたたかくすることではなく、その馬に合ったちょうどよさを保ってあげること。

  • 汗をかいたらすぐに乾かす

  • 日中は日なたで過ごせるようにする

  • 体調に合わせて馬着を調整する

  • 暖かさより「冷えすぎない」を意識する

これはまさに、私たちが犬や猫に「着せすぎず、寒すぎず」を意識するのと同じような感覚です。

冬になると、ふわふわの毛に包まれた馬を見ることがあります。自然な冬毛で頑張っている子は特にふわふわもこもこになります。冬でもつるっとした短い毛の子は、馬着や毛刈りでサポートされながら暮らしている子かな?など注目してみると、その馬の背景が垣間見れるかもしれません

進 由紀

進 由紀

投稿者の記事一覧

(すすむ ゆき)
乗馬インストラクター
全国乗馬倶楽部振興協会認定指導者

2002年より乗馬クラブでインストラクターとして働く

「馬は自分を映す鏡」の様な存在です。
自分の行動に対しての答えを、いつも分かりやすく返してくれます。
だからこそ、いつでも正直に、真剣に、謙虚に、馬と向き合う事が出来ます。
それは時に苦しいけれど、そんな時にもポッと何か閃きをくれたりする。
馬はとても賢くて、優しくて、そしてどんな馬もみな、真面目で頑張り屋です。

出会った馬には、幸せを感じながら人間と仕事をしてもらえるように。
また馬の素晴らしさを一人でも多くの方に知って頂けるように。

馬と共に成長し、人々に貢献する事を目標に、日々奮闘しています。

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