乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回は『馬と人の歩み』についてです。
馬と人のパートナーシップの始まり
“破滅に導こうとする数々の困難に取り囲まれていた人類にとって、馬がもしそばにいなかったら地上に君臨するどころか、奴隷になりさがっていたことであろう”
(アルティメイトブック馬 ELWYN HARTLEY EDWARDS著 緑書房/より引用)
君臨とか、奴隷とか、現代の価値観からすると若干違和感のある言葉ではありますが、馬と人のパートナーシップは、何千年も前から続いていて、これからも続いていくでしょう。
現代において、馬は人にとってどんな存在でしょうか?
乗馬や競馬、使役馬、ペット、ホースセラピー、盲導馬、などなど。
日本で暮らす中、馬は、身近な動物ではないかもしれません。
でも、多くの人が「馬は人と働く動物」というイメージを持っているのではないでしょうか?
人と馬との関わりは、文明の発祥以前からあったと言われています。
旧石器時代、馬は、人間にとって狩猟の対象でした。
それから文明を生み出し、家畜を飼うようになった頃から、従順な馬は人間のパートナーとなっていきます。
紀元前500年頃、スキタイ人が馬に乗った時に足を引っかける鐙(あぶみ)を発明したと言われています。
鐙によって馬の背の上で安定した姿勢で走る事が出来るようになり、騎兵たちが勇名を馳せたそうです。
しかし、紀元前3世紀半ば、スキタイ人は鉄製の鐙とより高度な馬術を持ったサルマタイ人に滅ぼされてしまいます。
その後、サマルタイ人は、ブリテン島で馬術を伝え、これがヨーロッパ式馬術『ブリティッシュ馬術』に発展して行きました。
人は、馬を得る事で機動性を手に入れ「移動手段」「戦争時のパートナー」「農業」などに馬を活用してきました。
何千年の馬と人との歴史の中で、あるいは現在でも、時にパートナーであるはずの馬に過酷な生活を強いてきた事実もあります。
それにも関わらず、人は、他のどんな生き物よりも馬に敬意を持ち、感謝を捧げてきたという歴史もあります。
「そんな気持ちになるのは何故か?」
その答えは、馬と触れ合った事のある方であればお分かりの事と思います。