トラブル

「ペットと暮らす、これからの社会」シリーズ 第1回 ペット防災2026|犬・猫と災害から身を守るために今できる備えと避難

地震、台風、豪雨、土砂災害――。

今の日本は、いつ、どこで災害に遭遇するかは分かりません。
もし大きな災害が起きたら、あなたは愛犬・愛猫を連れて安全に避難できますか?

「もちろん一緒に逃げる」と思う方も多いでしょう。
しかし、実際には「どこへ避難すればいいの?」「避難所にペットを連れて行っていいの?」「キャリーに入らない」「他の人や動物が苦手……」など、さまざまな問題が待ち受けています。

2026年9月には、犬・猫の飼い主を対象にした防災意識調査が発表され、ペットフードや水を備蓄している人は犬の飼い主で25.0%、猫の飼い主で16.5%にとどまりました。また、避難所の受け入れ体制を確認している人や、迷子札・マイクロチップなどの迷子対策にも、犬と猫の飼い主の間で差が見られています。

さらに環境省では、2024年の能登半島地震などで得られた教訓を踏まえ、「人とペットの災害対策ガイドライン」の改訂が進められています。2026年6月には、その改訂案についてパブリックコメントも実施されました。

今、ペット防災は「飼い主がペットフードを用意しておく」という個人レベルの話から、人と動物が地域社会の中でどう一緒に災害を乗り越えるのかという社会的なテーマへと広がっています。

この記事では、改めて「ペット防災」について考えてみましょう。

「ペット防災」は、なぜ今注目されている?

災害が起きたとき、まず守らなければならないのは飼い主自身と家族の命です。
そのうえで、ペットの安全も考えておく必要があります。

環境省も、災害が起きる前からペットの安全確保について考え、食料や水、常備薬などを準備するとともに、避難場所や避難ルートを確認しておくことを呼びかけています。
しかし、ペットがいる家庭では、人間だけの防災とは違った準備が必要です。

例えば、

  • ペットを入れるキャリーやケージ

  • フードや飲み水

  • 常備薬

  • トイレ用品

  • リードやハーネス

  • 迷子札

  • マイクロチップ

  • ワクチン接種などの健康管理

  • ペットの一時預け先

  • 避難先や避難ルート

などです。

さらに重要なのが、「災害が起きてから考える」のでは遅いということ。

大きな地震が起きてから「この避難所はペットを受け入れてくれるのかな?」と調べるのは、現実的ではありません。

だからこそ、平常時から準備しておく「ペット防災」が重要なのです。


「同行避難」とは? ペットと避難所で一緒に暮らせるという意味ではありません

ペット防災について調べていると、「同行避難」という言葉を目にすることがあります。

ここで注意したいのが、
同行避難=避難所の同じスペースでペットと一緒に過ごせる
という意味ではないことです。

同行避難とは、災害時に飼い主がペットと一緒に避難することを指します。
環境省は、飼い主の責任によるペットとの「同行避難」を基本的な考え方として示しています。

一方、避難所でペットをどこで飼養するのか、どのような受け入れ方をするのかは、自治体や避難所によって異なります。

つまり、
「ペットと一緒に避難する」ことと「避難所の居住スペースでペットと一緒に過ごす」ことは別の問題
なのです。

だからこそ、自分の住んでいる地域では、

  • ペットを連れて避難できるのか

  • どの避難所が対応しているのか

  • ペットはどこで過ごすのか

  • ケージやキャリーが必要なのか

  • 犬と猫で対応が違うのか

  • 飼い主が用意すべきものは何か

などを、事前に自治体へ確認しておくことが大切です。


「うちの子は人が苦手……」も、立派な防災問題

防災というと、どうしても「何を備蓄するか」に目が向きます。
もちろん食料や水は大切です。

しかし、ペットの場合は日頃の生活そのものが防災につながります。

例えば犬なら、

  • 飼い主以外の人に慣れる

  • 他の犬がいても落ち着いていられる

  • ケージやクレートに入れる

  • リードをつけて歩く

  • 吠え続けない

  • 「待て」「おいで」などの基本的な指示に慣れる

といったこと。

猫なら、

  • キャリーケースに入ることに慣れる

  • キャリーを「病院に行くときだけ出てくる嫌なもの」にしない

  • 普段からキャリーを身近な場所に置いておく

  • 環境の変化に少しずつ慣らす

といった工夫ができます。

環境省も、キャリーバッグやケージに入ることに慣らすことや、基本的なしつけ・健康管理を災害への備えとして挙げています。

「しつけ」は、普段の暮らしを快適にするだけではありません。

災害時にペット自身の命を守り、周囲の人とのトラブルを減らすための備えでもあるのです。


「猫は室内だから大丈夫」は本当?

今回の調査でも、犬と猫の飼い主の防災意識には違いが見られました。

猫は室内で暮らしていることが多いため、「外に出ないから迷子になることはない」「家にいれば大丈夫」と考えてしまう方もいるかもしれません。

しかし、大きな地震などでは、

  • 家具の転倒

  • 窓やドアの破損

  • 建物の損傷

  • 停電

  • 断水

  • 飼い主が外出中に被災する

など、普段とはまったく違う状況が発生する可能性があります。
驚いた猫が家から飛び出してしまうことも考えられます。

だからこそ猫にも、
「逃げないための対策」+「逃げてしまった場合の対策」
の両方が必要です。

迷子札やマイクロチップなど、身元を確認できる情報を整えておくことも大切です。


ペット防災で、まず備えたいもの

では、実際に何を準備しておけばよいのでしょうか。

1.フードと水

普段食べ慣れているフードを備蓄しておきましょう。
災害時は、いつものフードが手に入らなくなる可能性があります。
急に違うフードへ変更すると、食欲低下やお腹の不調につながることもあるため、できるだけ普段から食べているものを備えておくと安心です。


2.トイレ用品

犬の場合はペットシーツ、猫の場合は猫砂など。
特に猫はトイレ環境が変わると排泄を我慢してしまうことがあります。
避難生活では、「食べる・飲む」だけでなく「排泄できる環境」を確保することも重要です。


3.リード・ハーネス・キャリー

犬はリードやハーネス。
猫はキャリーケース。
災害時には、普段よりも脱走リスクが高くなる可能性があります。
「いつでも持ち出せる場所」にまとめておくとよいでしょう。


4.常備薬・診療情報

持病があるペットの場合は、薬を忘れないようにしましょう。

また、

  • かかりつけ動物病院

  • 服用している薬

  • 持病

  • アレルギー

  • ワクチン接種歴

などを確認できる情報をまとめておくと、かかりつけの動物病院を受診できない場合にも役立ちます。


5.迷子対策

災害時には、ペットがパニックになって逃げてしまう可能性があります。

そのため、
「逃がさない」だけではなく「逃げても戻れる仕組み」
を準備しておくことが大切です。

迷子札やマイクロチップなどを活用し、登録情報が最新になっているかも確認しておきましょう。


「避難所に行く」だけがペット防災ではない

ここも、ぜひ覚えておきたいポイントです。

ペット防災というと、「ペットを連れて避難所へ行くこと」をイメージする方が多いかもしれません。
しかし、災害の状況によっては、自宅が安全であれば在宅避難という選択肢もあります。

もちろん、自宅が安全であることが大前提です。

例えば、

  • 建物に大きな被害がない

  • 周辺に浸水や土砂災害などの危険がない

  • ライフラインや備蓄をある程度確保できる

  • 飼い主とペットの安全を維持できる

といった条件を確認する必要があります。

一方で、自宅が危険な場合は、ペットを連れて安全な場所へ避難することが最優先です。

「避難所へ行くか、家に残るか」を災害発生後に初めて考えるのではなく、平常時から複数の選択肢を考えておく。

これもペット防災の大切な考え方です。


ペット防災は「飼い主だけの問題」ではない

ペットと暮らしていると、「うちの子のことだから、自分たちで何とかしなければ」と考えてしまうかもしれません。

もちろん飼い主が日頃から備えることは重要です。

一方で、災害時のペット対策は、飼い主だけで完結するものでもありません。
避難所には、動物が苦手な人やアレルギーのある人もいます。
ペットを飼っていない人にとっては、犬の鳴き声や猫の存在が大きなストレスになる場合もあります。

だからこそ、「ペットを連れて避難できる社会」と「ペットを飼っていない人も安心して避難できる社会」を、両方とも考えなければなりません。

環境省のガイドラインでも、避難所では動物が苦手な人やアレルギーのある人などへの配慮が必要とされています。

これは「ペットを飼っている人 VS 飼っていない人」という対立ではありません。
災害という非常時だからこそ、さまざまな立場の人が一緒に過ごせる仕組みを平常時から考えておくことが大切なのです。


これからの「ペット防災」に必要なもの

2026年、環境省は「人とペットの災害対策ガイドライン」の改訂を進めています。

背景には、能登半島地震など過去の災害で得られた経験や、現在の災害対策をめぐる状況の変化があります。

検討では、自治体だけでなく、獣医師会、民間団体、企業などとの連携や、避難訓練、人材育成など、平常時からの体制づくりも重要な要素として挙げられています。

つまり、これからのペット防災は、「飼い主がペットフードを用意する」だけではありません。

地域全体で、

  • ペットと避難できる場所を整える

  • 避難所のルールを作る

  • 飼い主が正しい知識を身につける

  • 動物が苦手な人にも配慮する

  • 動物病院や獣医師会と連携する

  • 一時預かりなどの仕組みを作る

  • 災害時の情報を分かりやすく届ける

といった取り組みが必要になります。

ペットと暮らす人が増え、ペットが「家族」として暮らす時代だからこそ、災害対策も変わっていく必要があるのかもしれません。


今日から始められる「ペット防災」チェックリスト

最後に、まず確認しておきたい項目をまとめます。

□ 自宅周辺の災害リスクを確認した

□ ペットと避難できる避難先を確認した

□ 自治体のペット受け入れルールを確認した

□ 避難ルートをペットと一緒に確認した

□ フードと水を備蓄している

□ トイレ用品を用意している

□ リード・ハーネス・キャリーを準備している

□ 常備薬を準備している

□ 迷子札・マイクロチップの情報を確認した

□ 写真など、ペットの身元が分かる情報を保存している

□ キャリーやケージに入る練習をしている

□ ペットの一時預け先を考えている

□ 家族で「災害時にどうするか」を話し合った

全部できていなくても大丈夫です。

まずは、「避難先を調べる」「キャリーを確認する」「フードを少し多めに用意する」など、一つから始めてみましょう。


「もし今日、災害が起きたら?」を考えることから

災害は、いつ起きるか分かりません。
だからこそ、ペット防災で大切なのは、完璧な準備を目指すことではなく、

「もし今日、災害が起きたら?」

と一度考えてみることです。

愛犬を抱えて逃げられるのか。
愛猫をキャリーに入れられるのか。
避難先は分かっているのか。
フードや水はあるのか。
飼い主が外出中だったらどうするのか。

一つずつ考えていくと、今の自分たちに足りないものが見えてきます。
そして、ペットを守ることは、飼い主自身の命を守ることにもつながります。
「うちは大丈夫」と思える今日こそ、備えを始めるタイミングなのかもしれません。

ペットと一緒に生き延びるための防災を、今日から少しずつ始めてみませんか?

※災害時の避難方法やペットの受け入れ条件は自治体・避難所によって異なります。実際に避難する際は、地域の最新情報や自治体の指示を確認してください。

吉川 奈美紀

吉川 奈美紀

投稿者の記事一覧

(きっかわ なみき)

ヨガ・ピラティス・空中ヨガ インストラクター
メディカルアロマアドバイザー

関連記事

  1. 飼い主さんができる犬のケア ~耳そうじ編~
  2. ブリーダー崩壊・多頭飼育崩壊現場ボランティア 第2回 準備する「…
  3. 動物たちの長生きと悪性腫瘍(がん)の関係 〜腫瘍(がん)とは〜
  4. 災害と動物「ペットのための災害対策」
  5. 子供と犬を守るために 乳児とゴールデンレトリバーの事故を考え 桜…
  6. ペットのトラブル対処法 第5回 アウトドア編 〈 ヘビに咬まれた…
  7. 子供と犬を守るために 乳児とゴールデンレトリバーの事故を考える …
  8. クリスマスチャリティー特集「鳥猟犬の保護活動を支援しながらクリス…
PAGE TOP