「目の前の小さな命を救いたい」
そんな思いから保護した犬が、フィラリア検査で陽性と分かったら――。
「先住犬にうつらないかな?」
「高額な治療や手術が必要なの?」
「この子は助かるの?」
さまざまな不安が頭をよぎるかもしれません。
しかし、フィラリア陽性と分かったからといって、すぐに「助からない」と考える必要はありません。 フィラリア症は、犬の症状や感染の程度を確認したうえで、適切な治療と生活管理を行うことが大切です。
まずは慌てず動物病院を受診し、獣医師と一緒にその犬に合った治療計画を立てましょう。
フィラリア陽性の犬を保護したら、まず何をする?
保護した犬がフィラリア陽性だった場合、まず必要なのは動物病院で詳しく診察してもらうことです。
フィラリア症の診断では、血液検査による成虫抗原の確認などを行い、必要に応じて胸部レントゲン検査や心臓の超音波検査などを組み合わせます。
陽性反応が出たからといって、検査結果だけで重症度が決まるわけではありません。症状や心臓・肺の状態などを確認し、治療方針を決めていきます。
また、保護直後は環境の変化によるストレスもあります。体調が落ち着くまでは無理に運動させず、静かに過ごせる環境を用意してあげましょう。

犬のフィラリア症とは?
フィラリア症は、犬糸状虫(Dirofilaria immitis)という寄生虫によって起こる病気です。
感染した犬の血液中にいる幼虫を蚊が吸血し、その蚊が別の犬を吸血することで感染が成立します。
犬の体内に入った幼虫は成長し、最終的には心臓につながる肺動脈などに成虫が寄生します。成虫からさらに幼虫が生まれ、血液中を循環するようになります。
初期は症状が分かりにくいことも
フィラリア症は、初期にはほとんど症状が見られないことがあります。
進行すると、
- 咳
- 運動すると疲れやすい
- 息切れ
- 元気や食欲の低下
- 体重減少
などが見られることがあります。
さらに重症化すると、呼吸困難や腹水などが起こる場合もあります。
そのため、「元気そうだから大丈夫」とは限りません。
フィラリア陽性でも先住犬に感染する?
保護した犬がフィラリア陽性だと、先住犬への感染が心配になるでしょう。
ここで知っておきたいのが、フィラリアは犬から犬へ直接感染する病気ではないということです。
感染には蚊が関係しており、感染犬の血液を吸った蚊が、別の犬を吸血することで感染します。
そのため、先住犬については、フィラリア予防を適切に行っているかを確認し、必要に応じて動物病院で相談しましょう。
なお、フィラリア陽性犬への予防薬の使用についても、感染状態やミクロフィラリアの有無などによって注意が必要です。自己判断で薬を飲ませず、必ず獣医師の指示に従ってください。

フィラリア陽性の犬にはどんな治療をする?
治療方法は、感染の程度や症状、年齢、持病などによって異なります。
現在のAHS(American Heartworm Society)のガイドラインでは、成虫を駆除する治療を中心に、ドキシサイクリンやフィラリア予防薬などを組み合わせる治療が示されています。重症の場合には、まず犬の状態を安定させてから駆虫治療を行うこともあります。
スローキル法が選択されるケースも
犬の状態や使用できる薬剤、治療環境などによっては、フィラリア予防薬などを用いて成虫を時間をかけて減らしていく、いわゆる「スローキル法(緩徐駆虫療法)」が選択される場合もあります。
ただし、AHSはスローキルを標準的な第一選択治療として推奨しておらず、成虫が長く体内に残ることで心臓や肺の血管への障害が進行する可能性を指摘しています。
そのため、「費用が安いから」「手術を避けたいから」といった理由だけで治療法を決めるのではなく、その犬の状態にとってどの方法が適切なのかを獣医師と相談することが大切です。
フィラリア治療中に「安静」が必要な理由
フィラリア症の治療では、運動制限が非常に重要です。
フィラリアの成虫が死ぬと、その死骸が肺の血管に流れ、炎症や血栓塞栓症を引き起こすことがあります。
運動によって心拍数や血流が増えると、こうした合併症のリスクが高くなるため、治療中はできるだけ興奮や激しい運動を避ける必要があります。
散歩や遊びの程度についても、自己判断ではなく、犬の状態と治療内容に合わせて獣医師の指示を受けましょう。
「元気になってきたから、たくさん遊ばせてあげよう」と思ってしまうところですが、フィラリア治療では“元気だからこそ安静”が必要になることがあります。
緊急性の高いフィラリア症とは?
フィラリア症のなかには、緊急対応が必要となる重症例もあります。
代表的なのが「大静脈症候群(キャバル症候群)」です。
大量の成虫が心臓付近の血流を妨げることで、突然の元気消失や虚脱、血色素尿などが起こることがあります。
このような状態では、外科的に成虫を取り除く処置が必要になる場合があります。
こんな症状があれば早急に受診を
- 呼吸が明らかに苦しそう
- 急にぐったりした
- 倒れる、立てない
- お腹が大きく張ってきた
- 尿の色が赤褐色・コーラ色のようになった
- 強い咳や呼吸困難がある
このような症状がある場合は、様子を見続けず、早急に動物病院へ相談しましょう。
フィラリア陽性の犬の治療費はどのくらい?
治療費は、犬の体重や症状、検査内容、治療方法、入院の有無などによって大きく異なります。
そのため、「フィラリア陽性なら○万円」と一律に考えることはできません。
初診時には、血液検査のほか、必要に応じてレントゲン検査や心臓の超音波検査などが行われることがあります。
治療についても、薬剤だけで済むケースと、注射・入院・追加検査などが必要になるケースでは費用が大きく変わります。
保護犬の場合は、保護団体や自治体の支援制度、動物病院の保護動物向け料金などが利用できる場合もあるため、確認してみるとよいでしょう。
※費用は動物病院や犬の状態によって大きく異なるため、記事内では具体的な金額を断定せず、「事前に見積もりを確認する」という表現がおすすめです。
フィラリア検査で知っておきたいこと
フィラリアは、感染してすぐに検査で陽性になるわけではありません。
犬の体内に入った幼虫が成長して成虫となり、さらに抗原が検出できるようになるまでには時間がかかります。厚生労働省の資料でも、感染から約7か月未満では成虫抗原検査で正しく検出できない場合があるとされています。
そのため、「今回の検査が陰性だったから絶対に感染していない」とは限らないケースがあります。
保護犬の場合は、これまでの飼育歴や予防歴が分からないこともあります。検査結果だけで判断せず、獣医師に経過を伝え、必要に応じて再検査などを検討してもらいましょう。
フィラリア陽性の犬を守るために大切なこと
フィラリア陽性と分かったとき、最も大切なのは、飼い主や保護した方が一人で抱え込まないことです。
必要な検査を受け、診断 → 重症度の確認 → 治療方針の決定 → 安静・生活管理 → 定期的な経過観察という流れで、少しずつ治療を進めていきます。
治療期間が長くなるケースもありますが、フィラリア陽性でも適切な治療によって回復が期待できる犬はいます。AHSも、無症状~軽症の犬では治療成功率が高いと説明しています。

まとめ|フィラリア陽性でも、焦らず治療を
フィラリア陽性の犬を保護したときは、不安になるのが当然です。
しかし、
- フィラリアは犬から犬へ直接感染する病気ではない
- まず動物病院で詳しい検査を受ける
- 治療方法は犬の状態によって異なる
- 治療中は運動を制限することが重要
- 重症例では緊急治療が必要になることもある
- 治療費や期間は犬の状態によって大きく異なる
という基本を知っておけば、落ち着いて対応しやすくなります。
「正しく知ること」は、犬の命を守るための大切な一歩です。
保護した犬がフィラリア陽性だったとしても、焦らず、獣医師と相談しながら、その子に合った治療を進めていきましょう。
参考情報






























