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犬と楽しく暮らすためのトレーニング 第2回 保護犬たちとの暮らし

犬と楽しく暮らすためのトレーニング
山本聖文

ドッグトレーナー・ドッグライフカウンセラー・ドッグアドバイザー

    第2回  保護犬たちとの暮らし


  イギリス留学をきっかけに、ガンドッグ(鳥猟犬)の魅力に目覚めた山本さん。現在は3頭の愛犬と暮らしていますが、そのうち2頭は元保護犬です。

  今回は、保護犬を家に迎えることとなった経緯や、保護犬についての思いをお聞きします。

◆3頭目のクワンは保護犬だったそうですが

  レッスン場所でもあるドッグスポーツ施設、LADF(エルエー・ドッグスポーツ・フィールド)で出会いました。LADFで飼っている犬だと思っていたのですが、実は飼い主が一緒に暮らすのが嫌になり、長期間、施設に預託されている最中の犬だったのです。
  ※お泊り/保護犬が里親候補との相性を見るため、一定の間一緒に暮らすこと。

  LADFで初めて会ったときから、クワンは上手に妻に甘えていて可愛くて。もともと妻がゴールデンレトリバーを飼いたがっていたので、譲っていただきました。

  先輩のフラウがフリスビーの練習をしているのを見て、クワンは非常に興味を示していました。激しい運動ができるまで身体が育ったところで試しにやらせてみたら、レトリバーとは思えないスピードで走り、3日後には空中キャッチもマスター。フリスビーの競技会では初出場でいきなり優勝し、現在は上から2番目のクラスで頑張っています。いまのクラスで優勝する日も近いんじゃないかな(笑)。

◆そして、また保護犬を迎えることに

投げたボールを拾い、くわえて戻るエステル。投げたボールを拾い、くわえて戻るエステル

  はい、イングリッシュポインターのエステルです。ある日、保護犬を飼っている方のブログを見ていたら、保健所に収容されている犬の情報が掲載されていました。その中にあったエステルの写真が、我が家の愛犬フラウが心細い時に見せる顔と、そっくりだったんです。

  それまでもガンドッグの保護活動に関わってきて、保護犬の写真も何百枚と見てきたはずなのに、どうしてもエステルのことが気にかかる。自分で飼おう! と決心しました。

◆保健所から引き取るまでの経緯は

  それが、地元ではなく他県で収容されていた犬だったこともあり、手続きが大変でした。

  電話で保健所に問い合わせたら、けんもほろろに断られて。どうやら純血種の保護犬を引き取って繁殖に利用する悪質な業者がいるらしく、自分も疑われたようなのです。その県の動物保護団体に話を通してもらおうと問い合わせたり、保護活動家に協力してもらったり、私が今まで書いてきたブログを読んでもらったりしながらメールのやり取りを重ね、ようやく信用してもらい譲渡にこぎつけました。

◆保護犬についての思いを聞かせてください

  保護犬、特に保護ガンドッグを譲り受けて暮らす人が少しずつ増えているようで、うれしく思います。

  ただ、ガンドッグに限らないことですが、良くも悪くも「この子は元保護犬だから…」という表現をする飼い主さんがいらっしゃいます。いままでつらい目にあってきたのだから、これからは楽しく暮らしてほしい。訓練なんかさせたらかわいそう! と思うようなのです。

山本さんの指示通り、「待て」の姿勢をとっているエステル。山本さんの指示通り、「待て」の姿勢をとっているエステル。

 犬種や飼育目的も考慮せずに行ってきた従来の訓練方法に、よくないイメージがあるのかもしれません。しかし、吠え癖などの問題行動を放置していると、保護犬のイメージが悪くなるのではと心配です。飼い主さんは「捨てられていたかわいそうな犬なんだから、大目に見てあげなくちゃ」と思っていても、周囲の人は「やっぱり捨てられていた犬なんて、あんなものよね」と悪く捉えるかもしれません。

  「あの子、いい子よね。保健所にいた捨て犬だったのにあんなにお利口さんなら、ペットショップで買わなくたって、保護団体から犬をもらってもいいじゃない」と思ってもらえたら、近所の人からお手本となるような犬として認めてもらえたら、保護犬と暮らそうと考える人がもっと増えるのではないでしょうか。

◆訓練は、かわいそう?

投げたボールを拾い、くわえて戻るエステル投げたボールを拾い、くわえて戻るエステル

  訓練とは「飼い主さんと愛犬が、共に楽しめる機会を増やすためのもの」だと私は思います。

  保護犬が引き取られた後、平穏無事にスローライフを送るという選択肢もあるでしょう。けれど、呼ばれたら戻る、誘惑があっても落ち着いて待てる、投げたボールをくわえて戻ってくる…。できることが増えると、海や山や野原に出かけて、飼い主さんと愛犬がさまざまなことを楽しみ、たくさんの思い出を作ることができるのです。

  元保護犬でもドッグスポーツを楽しんだり、競技会で活躍することができるという事実をアピールしていくことも、私の役割のひとつです。保護犬との暮らしには、「飼い主の相棒として、共に競技会の場に立つ」という選択肢もあることを、これからも伝えていきたいと思います。

犬と楽しく暮らすためのトレーニング 第1回 ガンドッグと出会ってから

犬と楽しく暮らすためのトレーニング 第3回 ほめて育てるトレーニング

山本聖文

山本聖文

投稿者の記事一覧

(やまもと きよふみ)

ガンドッグトレーナー
ドッグライフカウンセラー

会社員として不動産関係の仕事をこなす傍ら、学生時代から続けていた馬術の訓練のため、1987年、イギリスへ留学。
馬術の指導教官がガンドッグの訓練を手掛けていたことから、トレーニングの基礎を学ぶ。
2007年、指導教官が所属するガンドッグクラブでの研修を経てガンドッグトレーナー、ドッグアドバイザー(犬種アドバイザー)の認定を受ける。同年、社会動物環境整備協会の資格試験にトップの成績で合格し、ドッグライフカウンセラーとなる。
2007年12月 「DogSchool I’ll(アイル)」を設立し、現在に至る。
DogSchool I’ll Webサイト:http://gundogsch.exblog.jp/

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